世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

世界経済評論IMPACT PLUS

PLUS No19
プライベート・スタンダード研究の動向:国際標準の多様化
梶浦雅己(愛知学院大学商学部商学科・大学院商学研究科教授)
2021.04.12
ref. コラム No.2112

要 旨

 近年,国際標準は公的法規制と区別され(private standard:以下PS と表記)として国や企業の国際ビジネス戦略上の特徴をもつ。国際開発の分野では,多様化に伴う相互作用が指摘される。グローバルサプライチェーンがバリューチェーンとして確立している昨今では,各バリュー間の円滑な取引を維持するために,PS が活用される。原材料の生産拠点となるアジアの発展途上国は,輸出先の製造拠点である先進国から要求される品質保証をするPS 対応が必須となる。GAP は農作物や家畜および水産養殖について,生産に関わる事柄についての内容のPS である。GLOBALG.A.P. は認証標準として普及している。グローバルリテーラーすなわち大手小売流通業者は,GLOBALG.A.P. やHACCP はもとより水産資源の販売に際して,MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)やASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)の流通・加工認証の100%獲得を目指す動向がある。前者は漁業,後者は養殖による水産資源のサプライチェーンの適正性を認証する制度団体である。適正性とはサプライチェーンのトレーサビリティー確保によって違法,無報告,無規制を排除することを目的としている。先進国リテーラーはこうしたPS 認証制度を活用している。生産国であるアジアの発展途上国企業はこうした認証を獲得して成功している事例がみられる。こうして農水産業分野ではグローバルリテール市場力の強化がPS を促進している。

(本文PDFはこちら:impact_plus_019.pdf)
PLUS No18
ジョブ型雇用と大学教育
熊倉正修(明治学院大学国際学部)
2021.03.01
ref. コラム No.1949

要 旨

 財界団体や一部のマスメディアはメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への移行を提唱し,大学に対してそれにふさわしい人材を育てる実践的な専門教育やキャリア教育を求めている。しかし民間企業の採用現場においてジョブ型雇用が広がっている形跡は乏しく,潜在能力重視の日本的採用慣行には社会的に望ましい面もある。大学は教育プログラムの肥大化によって財界の要望に応えようとするのではなく,学生が自らの判断で卒業単位の一部を実務研修に代替できるしくみを工夫するなどして,学問に関心を持たない若者を早期に社会に送り出すことを考えるべきである。

(本文PDFはこちら:impact_plus_018.pdf)
PLUS No17
大国間競争の復活
石川幸一(亜細亜大学アジア研究所特別研究員)
2020.08.03
ref. コラム No.1829

要 旨

 1991 年の東西冷戦終結後は米国が軍事力で圧倒的な力を持つ一極体制が続いた。米国一極というポスト冷戦時代から大国間競争に移行したのは,2007 年から2014 年である。この時期に中国の経済的台頭および中国の海洋進出やロシアのクリミア併合などのルールに基づく国際秩序に挑戦する行動が顕著になった。大国間競争が復活したという認識を明確に示した米国の戦略文書は2017 年の国家安全保障戦略(NSS)である。NSS は,中国とロシアが米国の力,影響,国益に挑戦し,米国の安全保障と繁栄を弱体化しようとしており,米国が世界中で政治,経済,軍事の激化する競争に直面していると分析し,米国は道義的リアリズムにより4つの国益を守ると述べている。大国間競争の復活という認識は,2019 年の国防総省のインド太平洋戦略報告で引き継がれ,対中戦略アプローチで競争アプローチとして提示された。対中競争アプローチが展開される主要な舞台はインド太平洋である。

(本文PDFはこちら:impact_plus_017.pdf)
PLUS No16
アジア再保証推進法,国防総省および国務省のインド太平洋戦略報告書にみる米国のインド太平洋戦略
石川幸一(亜細亜大学アジア研究所特別研究員)
2020.06.08
ref. コラム No.1771

要 旨

 米国のインド太平洋戦略の詳細かつ具体的内容は,2018 年12 月のアジア再保証推進法(ARIA),2019年6月の国防総省のインド太平洋戦略報告,同じく11 月の国務省のインド太平洋戦略報告で提示された。ARIA は①外交,②安全保障,③経済,④米国の価値の4分野を対象とし,予算歳出を認めるなどトランプ政権のインド太平洋戦略実施を支援するとともに分野別戦略策定,議会への報告などの注文を付けている。ARIA は民主党を含め超党派が支持しており,政権が交代をしても米国のアジア政策のベースとなる。国防総省と国務省の報告はARIA を発展させたものである。国防総省報告は安全保障に焦点をあて,国務省の報告は米国が実施しているインド太平洋戦略におけるイニシアティブを包括的に説明している。同盟国およびパートナー,中国など脅威となっている国についての戦略も提示されている。ARIA と2つの報告は米国のインド太平洋戦略の基本的文書と位置付けられる。

(本文PDFはこちら:impact_plus_016.pdf)
PLUS No15
吉利傘下で経営再建に成功したプロトン
  :中国自動車メーカーのASEAN 進出
石川幸一(亜細亜大学アジア研究所特別研究員)
2020.04.13
ref. コラム No.1687

要 旨

 経営危機に陥り,中国自動車メーカーの出資を受け入れ経営再建に取り組んでいたマレーシアの国民車メーカープロトンは,2019年の生産,販売が増加に転じ,ホンダとトヨタを抜いて国内販売シェア2位に復帰した。2019年のマレーシアの自動車販売は前年比0.9%の伸びだったが,プロトンは54.7%の大幅増だった。吉利のSUVであるX70の投入,4つの新モデル発売,販売拠点の大幅拡充など吉利傘下で進めた積極的な経営改革が奏功した。約1000台と極めて少ない輸出の拡大が大きな課題であり,タイ,インドネシアなど日系自動車メーカーの牙城であるASEAN市場をターゲットにASEANで第3位の自動車メーカーを目指している。

(本文PDFはこちら:impact_plus_015.pdf)
PLUS No14
霧晴れぬBrexitの行方
  :2020年に予想される3つのシナリオ
平石隆司(欧州三井物産戦略情報課 GM)
2019.12.23
ref. コラム No.1585

要 旨

 Brexit を巡る行き詰まりの打開を目指し 2019 年 12 月 12 日に投開票が行われた英下院選は(総議席数650),保守党が 365 議席と 1987 年以来の地滑り的大勝を収め,2020 年1月 31 日に英国が 1973 年の加盟以来 47 年を経て EU を離脱することが確実である。  今後の焦点は EU との FTA を中心とする将来関係の交渉及び,2020 年 12 月末が期限である移行期間の延長の有無に移る。  1年の時間軸では,⑴「移行期間は 2 年延長され包括的 FTA 交渉が継続」,⑵「移行期間は延長されず,財を中心とするベーシックな FTA を締結」,⑶「移行期間は延長されず,“No Trade Deal”の秩序無き離脱」の3つのシナリオが想定される。  蓋然性は,⑴が最も高く,⑵が僅差で続き,⑶は低く抑制されている。背景には,①英 EU 共,景気が前年比 1%強で低迷しており,追加的な経済的ショックは回避すると思われること,②「新しい保守党支持者」のイングランド北部・中部は製造業に依存しており,Brexit によるショックに非常に脆弱であること,③企業の生産拠点の移転等は不可逆的性質を持っており,公共投資の拡大等一時的措置では相殺不可能なこと,④ジョンソン首相が長期政権の可能性が出てくる中で,わざわざ経済的混乱を引き起こす可能性のある政策をとるとは思われないこと,等がある。  以上の3つのシナリオのどれが実現するにしても,2020 年後半まで非常に不確実性が高い状況が続きそうであり,企業はコンティンジェンシープランに資源を浪費せざるをえない。Brexit 劇は国民投票から3年半を経てようやく序章が終わったところであり,始まりの終わりに過ぎないことを認識,シナリオの蓋然性の変化に応じた柔軟な対応を心掛ける必要があろう。

(本文PDFはこちら:impact_plus_014.pdf)
PLUS No13
第9回欧州議会選挙の結果検証
  :国別・会派別分析とEU首脳人事の展望
金子寿太郎(公益財団法人 国際金融情報センター ブラッセル事務所)
2019.6.12
ref. コラム No.1383

要 旨

 5月23-26 日に実施された欧州議会選挙において,左右の中道系二大会派が合計で過半数を割り込んだ一方,リベラル系,環境系,EU 懐疑派勢力はそれぞれ伸長した。この結果を踏まえ,EU の枢要ポストの人選に関する議論が始まったものの,交渉は難航が予想される。議会勢力の細分化により,決められない政治がEU のリスクとして意識されつつある。本稿では,今回の選挙結果を国別・会派別に分析した上,今後5年間のEU の舵を取る首脳人事を展望する。

(本文PDFはこちら:impact_plus_013.pdf)
PLUS No12
不確実性が高まるユーロ金利指標改革の行方
  :中長期的なEURIBOR廃止リスクにも備える必要
金子寿太郎(公益財団法人 国際金融情報センター ブラッセル事務所)
2018.12.13
ref. コラム No.1216

要 旨

 12年に露見したLIBOR操作問題を契機に金利指標改革が世界的に進行する中,ユーロ圏の対応の遅れが顕著になっている。足許,EURIBORは,データの頑健性に不安が残る中で未だ見直し方針も固まっていない。一方,EONIAについては,ECBが見直しを担うこととなり当局認可にかかる懸念が払拭されたとはいえ,新指標のデータ公表は改革期限間近まで開始されない見通しである。こうした情勢を踏まえ,市場では改革期限の延期を求める声が強まっているものの,当局はこれに応じる素振りを見せていない。EURIBORが中・長期的に廃止される可能性も含め,予断を許さない状況が続いている。

(本文PDFはこちら:impact_plus_012.pdf)
PLUS No11
臨界的経済システムとしての中国資本主義
  :経済分析の方法的収斂とその選択
末永 茂(前・いわき明星大学非常勤講師)
2018.7.16
ref. コラム No.1114

要 旨

 中国経済の実態を社会主義体制下の資本主義的発展過程として捉え,その動向を統計的・計量的に分析するために何が問われているのか。本稿は統計的分析を援用して,中国経済の動向を俯瞰的に観測する。中国経済は「一人っ子政策」による歪みから,戸籍を持たないインフォーマルな人口が多数存在している。その数は正確には把握されておらず,数千万人から数億人程度と推計されている。「国勢調査」は統計数字の基盤中の基盤であり,数量的座標軸が揺らいでいるのであるから,この上にカウントされる経済データは一層,吟味して活用しなければならない。また,中国の国是はマルクス・レーニン主義,毛沢東思想を今なお看板に据えており,市場経済化がかなりの程度進んではいるが,中国共産党による政治的経済的介入は大きな影響を与えてい る。時として市場の政治的変形の際たる問題を呈するのも,中国経済であることを忘れてはならない。
 「歴史は繰り返す。だが,それは同じパターンではない。」との名言は,経済分析には欠かせない。一回限りの現象を,繰り返しの理論で解明しようとするのが,社会科学の科学たる存立構造だが,そこが中々手強い課題になる。また,永遠の論争の種である。

(本文PDFはこちら:impact_plus_011.pdf)
PLUS No10
Brexit後の英金融街シティの姿
  :EU は着々と域内単一市場から切り離す準備を進める
金子 寿太郎((公益財団法人)国際金融情報センター ブラッセル事務所長)
2018.7.9
ref. コラム No.1105

要 旨

 Brexit を巡る英国とEU の交渉が不透明感を増す中,EU 側は着々と英国の金融サービスを域内から締め出すための立法対応を進めている。なかでも,ユーロ建て清算ビジネスの引き抜き等を企図した第三国CCPへの監督強化法案は,既に最終化に向けた大詰めの段階に達している。欧州金融市場の分断は,流動性の減少,新たな現地法人の設立等を通じて,日系金融機関等にとっても取引コストの大幅な増加要因となる。加えて,英金融街シティの地盤沈下というグローバルな市場環境の変化にも注意が必要である。

(本文PDFはこちら:impact_plus_010.pdf)
PLUS No.9
日本の基礎研究の東アジア化
  :なぜ日本の基礎研究は下方に向かうのか?
新井 聖子(東京大学政策ビジョン研究センター・国際貿易投資研究所客員研究員)
2018.4.30
ref. コラム No.1065

要 旨

 近年日本の基礎研究力の国際的地位の低下が大きな問題となっている。この現象は特に日本の企業や大学の国際競争力が高い研究分野で顕著である。一方,逆にこれらの分野で中国,韓国の基礎研究力が向上している。その理由は,特に1990年代以降の日本政府の政策をきっかけとして,バランスを失する形で中国や韓国からの留学生等の受け入れが急増し,日本から知識のスピルオーバーが起こったためである。
 今後の日本の方策としては,日本の研究者が基礎研究の中心である欧米の国々と協力を増やせるようにし,量より質の向上,生産性の向上を図ることである。日本は先細りの援助ではなく,援助しつつも自国の力を一層高めるべきであり,そうしてこそ,他の東アジア諸国とも,互いに尊敬できる真の友好関係は築けるようになる。今後日本の政府や関係機関の早急な対応が求められる。

(本文PDFはこちら:impact_plus_009.pdf)
PLUS No.8
欧州における決済ビジネスの新潮流
  :Brexitを背景に英国からEUへ清算ポジションの移行が進む
金子 寿太郎((公益財団法人)国際金融情報センター ブラッセル事務所長)
2018.1.26
ref. コラム No.992

要 旨

 Brexit 後の EU と英国の経済関係が見通せない中,欧米金融機関は,英国が EU 共通市場へのアクセスを失う事態も視野に入れつつ,金融取引をロンドンからフランクフルト,パリなどに移し始めている。このうち金利スワップについては,EU 側 CCP による引き抜きが熱を帯びている。無秩序なポジション移行が生じた場合,市場のボラティリティ上昇といった金融システムへのリスクが顕現化する惧れもある。加えて,CCP同士の綱引きが更に過熱した場合,大口の参加先が優遇される反面,中小規模のポジションの先が相対的に不利に扱われ,そうした先にとって清算サービスへのアクセスが実質的に困難になる一種の金融排除が生じる展開も想起し得る。ポジションの移行が進むに伴い,CCP 間の利用コストが一気に逆転する可能性もあるため,今後の Brexit 交渉のほか,欧州の CCP および先行する欧米金融機関の動向,ならびに各種マーケット指標を注視していく必要がある。

(本文PDFはこちら:impact_plus_008.pdf)
PLUS No.7
トマ・ピケティ『21世紀の資本』 基本法則に関する研究
原 勲(北星学園大学名誉教授)
2017.10.23
ref. コラム No.935

要 旨

 トマ・ピケティの『21世紀の資本』が世界的ベストセラーになっている。それは現代の先進資本主義国が,富の不平等,すなわち富の所有者トップ10%が富の70%を支配しており(アメリカ,2010年),またその格差が21世紀の後半にかけて益々拡大していくという分析と主張が,多くの反響を呼んでいる要因である。本稿では主として本書の骨組みともいうべきピケティの「基本法則」に傾注して著者の理論的見解を分析し,その上で筆者のピケティ論評価を行っている。トマ・ピケティの基本法則は二つの公式すなわちα(資本分配率)=r(資本収益率)×β(資本所得比率),β=s(貯蓄率)/g(経済成長率)と結論式r>gである。 21世紀はαが拡大し資本支配が大きくなるが,それは少子高齢化によってgがゼロに近づくほど低下し,他方sは小さくなっても資本蓄積は大きいのでβが増大するためである。最後の公式rは歴史的にみて変わらないので資本の優位性を拡大させていく。この公式は用語に多少の違いはあるが,今日主流の新古典派経済学を踏襲している。問題なのは公式どおりにα,βが増大しているかどうかである。とくにαは規模に関して収穫一定の経済学の論理からはその拡大はないし,実証的にもその例はない。これは形式論理的なαの数値だけでは所得分配を論じえないことを示しており,ピケティはこの公式だけではなく膨大な税務データによって格差論を検証しようとしている。これは本稿の対象を超えた後段部分に書かれている。

(本文PDFはこちら:impact_plus_007.pdf)
PLUS No.6
アメリカ・トランプ政権下における日本の対外援助のビジョンの再構築に向けて
飯野光浩(静岡県立大学国際関係学部講師)
2017.8.1
ref. コラム No.892

要 旨

 2017 年 1 月に発足したトランプ政権は「米国第一主義」を掲げて,経済や外交などあらゆる分野で米国の利益を最優先する姿勢を示している。このことはもちろん,アジア地域にも大きな影響を及ぼしている。アジアでは,中国の著しい経済的・政治的台頭と米国の影響力減少という現状で,日本は難しい立場に置かれている。現在,日本政府は米国と連携して,中国とは競合的な関係にあるが,このような姿勢のままでと良いのかを,本稿では対外援助を例にして考察する。援助を取り上げるのは,この分野が一番,中国との競合関係が明確になっているからである。
 本稿では,日本の援助のビジョンを政治経済学的アプローチと経済学的アプローチの両方から考察する。その理由は援助とは優れて政治的なものであり,重要な外交手段であるからである。 最初に,日本の戦後の援助の歴史をふり返ることで,当時の国際政治経済の状況が如何に日本の援助ビジョンを規定してきたかを明らかにし,その枠内で現在の援助の原型が形作られて,その基本構造がそのまま現在まで続いていることを明らかにする。次に,現在の国際政治経済の状況を踏まえて,教育への支援が途上国の持続的な経済開発に死活的に重要であることを明らかにする。最後に,日本が目指す援助のビジョンとして,人的投資としての教育支援重視を掲げるべきであることを示す。

(本文PDFはこちら:impact_plus_006.pdf)
PLUS No.5
[鼎談]アジアの経済統合の行方とトランプ・ショック
馬田啓一(杏林大学名誉教授)+清水一史(九州大学大学院教授)+石川幸一(亜細亜大学教授)
2017.1.13
ref. コラム No.770 No.778 No.779

要 旨

 ASEAN 経済共同体(AEC),環太平洋パートナーシップ(TPP),ASEAN+6 の枠組みで進む東アジア地域包括的経済連携(RCEP),さらに,その先にあるアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想―これら4つのメガFTA をめぐる現状と課題について,馬田啓一,清水一史,石川幸一の3氏が鼎談。AEC の成立プロセスから今後に向けて,トランプ氏の米国大統領当選によるTPP の頓挫がもらたす影響,RCEP に向けての課題,FTAAP への道筋とその見通し,そして日本の果たすべき役割について等,アジアの経済統合の行方をみすえ論議した。

(本文PDFはこちら:impact_plus_005.pdf)
PLUS No.4
日本の財政危機と民主主義
熊倉正修
(駒澤大学経営学部教授)
2016.8.15
ref. コラム No.692 2016.8.15

要 旨

 今日の日本では公的債務の累増にも関わらず与野党とも財政改革に消極的であり,事実上の財政破綻と言ってよい状況にある。高齢化が進む民主主義国では財政再建の先送りが不可避だという意見もあるが,日本の財政危機はむしろ真の民主主義が確立していないためである可能性が高い。近い将来に財政破綻が現実のものになったとしても,その後に同じことをくり返さないためには,当局の政策運営を多角的に監視するしくみを構築し,そこに国民が積極的に関与する必要がある。

(本文PDFはこちら:impact_plus_004_kumakura.pdf)
PLUS No.3
開発論のパラダイムを考える
宮川典之
(岐阜聖徳学園大学教育学部教授)
2016.6.27
ref. コラム No.655 2016.6.13

要 旨

 開発論は,第二次世界大戦後,独立した学問分野として確立した。当初のパラダイムは,構造主義に軸足を置いていた。それは既存の経済学と一線を画すものであり,いわゆるパイオニアたちの存在に注目が集まった。かれらは,当時流行していたケインズ経済学に大きく影響を受けていた。1970 年代から主要国で新古典派経済学の復権がなり,開発論もその影響を受ける。1980 年代から新自由主義が優勢となり,1990 年代にはワシントン・コンセンサスが提唱され,それがパラダイム化する。しかし20 世紀末に勃発したアジア経済危機により,新自由主義も弱体化する。21 世紀に入ると,新諸学派(新制度学派,開発のミクロ経済学,内生成長論,新構造主義,ネオケインジアンなど)が興隆し,カオス的状況となる。本稿では,これらの一連の流れを跡づけし,現在はビッグアイディアではなくて,各国地域に適合する理論政策が求められようとしていると結論づける。

(本文PDFはこちら:impact_plus_003_miyagawa.pdf)
PLUS No.2
政府と日銀は円安依存の経済政策からの脱却を
熊倉正修
(駒澤大学経営学部教授)
2016.5.25
ref. コラム No.611 2016.3.14

要 旨

 第二次安倍政権の発足以来,政府と日本銀行は円安誘導を意識した経済政策によって景気浮揚を図ってきた。しかし為替レートを均衡水準に比べて円安の状態を維持しようする政策は近隣窮乏化策であるだけでなく,景気の振幅を必要以上に大きくする,長期的な産業構造の調整を阻害する,政府の財政再建への意欲を後退させるといった点できわめて好ましくない。政府と日銀は持続性のない政策に頼ることを止め,責任ある態度で金融財政政策を運営すべきである。

(本文PDFはこちら:impact_plus_002_kumakura.pdf)
PLUS No.1
「GDP600兆円」目標と日本経済の将来
熊倉正修
(駒澤大学経営学部教授)
2016.4.11
ref. コラム No.585 2016.2.1

要 旨

 昨年秋に発表されたアベノミクスの新方針において2020年ごろまでに名目GDPを600兆円に引き上げるという目標が掲げられたが,この目標にはいくつかの望ましくない点がある。本稿ではこれらの問題点のうち,その実現可能性,短期間にGDPを大幅に引き上げようとすることの弊害,そして財政再建との関係を論じる。政府が過度に野心的な目標を設定して投資主導の成長を追求すると,長期的な経済の安定と効率性が損なわれるだけでなく,構造的な財政赤字の問題への取り組みが蔑ろにされる可能性が高い。

(本文PDFはこちら:impact_plus_001_kumakura.pdf)

企画・製作・運営