世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.4271
世界経済評論IMPACT No.4271

イーレックスと沖縄ガスの挑戦:中城バイオマス発電所見学記

橘川武郎

(国際大学 学長)

2026.03.23

 2025年12月,沖縄県うるま市に立地する中城(なかぐすく)バイオマス発電所を見学する機会があった。同発電所を運営するのは,沖縄うるまニューエナジー(OUNE)株式会社。イーレックスが44.8%,九電みらいエナジーが20%,トーヨーカネツが10%,沖縄ガスが6.8%,九電工が4.5%,東京ガスエンジニアリングソリューションズが2.7%,地元企業等5社が11.2%を出資する合弁会社である。

 2021年7月に運転開始した中城バイオマス発電所の定格出力は4万9000kW,年間発電量は約35万MWh。燃料はパーム椰子殻(PKS)と木質ペレットの両方を使用できるが,見学当時はコストおよび取り扱いやすさの点から,PKSのみを使っていた。年間の二酸化炭素(CO₂)排出削減量は,沖縄電力の2022年度電力排出係数(0.684kg-CO₂/kWh)を用いて計算すると,約23万9400トンに及ぶという。

 見学時には,水深13mの埠頭で,インドネシアから運んできた1万トンのPKSを船から荷下ろししていた。そのPKSは,ダンプで構外燃料置き場に運ばれ,そこにいったん貯蔵される。燃料置き場では,外部にPKSが飛散することがないよう,さまざまな工夫が施されていた。

 構外燃料置き場から別のダンプで中城バイオマス発電所へ運ばれたPKSは,発電所内の構内貯蔵棟建屋に移される。ダンプは4台が稼働しており,日に延べ83回運行する。すべて,独自開発した飛散防止用の可動式カバーを備えている。

 今回の見学では,ダンプが燃料のPKSを投入する様子を目の当たりにした。また,循環流動層ボイラーの覗き窓からは,PKSが流動媒体の硅砂とともに燃焼する様子を見ることができた。

 沖縄の美しい自然に囲まれた中城バイオマス発電所は,環境保全にとくに力を入れている。一般的な施策に加えて,大型のバグフィルタによる排気からの粉塵の除去,ボイラーの低温燃焼による窒素酸化物の低減,排水の下水処理場への送水による海域への影響の防止,沖縄県内の協力企業による灰の処理(路盤材,土壌改良材,コンクリート混和材として活用)などの特徴的な施策も,実施しているのである。

 OUNEが中城バイオマス発電所で生産した電力は,再生可能エネルギー電気特定卸供給制度を使って,株式会社沖縄ガスニューパワー(OGNP)社が小売販売する。OGNPは,イーレックスが80%,沖縄ガスが20%出資する合弁会社である。

 現状では,円安と認証費用上昇によって原料のコスト高が進み,バイオマス発電事業は,単体では課題が残る。しかし,OUNEの発電とOGNPの電力小売とがタッグを組むこのビジネスモデルによれば,収益をあげることができるのである。

 沖縄の電気事業には,高い料金と高い二酸化炭素排出係数という,二つの弱点がある。後者の点に関して言えば,沖縄には,原子力発電所だけでなく水力発電所も,存在しないのである。

 イーレックスと沖縄ガスは,大規模な再生可能エネルギー電源を創出し,電力小売市場に競争原理を持ち込むことによって,沖縄電気事業が有する二つの弱点の克服に乗り出したと,みなすことができる。OUNEとOGNPのタッグによる挑戦が,今後どのような発展をみせるか,注目したい。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article4271.html)

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