世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.4246
世界経済評論IMPACT No.4246

進化する北海道ガスの挑戦

橘川武郎

(国際大学 学長)

2026.03.09

 2025年12月,1泊2日の行程で,北海道ガスの関連諸施設を訪れる機会を得た。

 まず,訪れたのは,日本ハムファイターズの本拠地である北広島市のエスコンフィールドHOKKAIDO。通常は立ち入ることができないコジェネ設備を見学した。同施設のコジェネシステムの運営主体は北海道電力であるが,発電源となる天然ガスを供給しているのは北海道ガスである。熱の取り扱いを得意としない北海道電力がコジェネシステムの直接的なオペレーターとなることは難しいようで,他の事業者にその業務を委託していた。

 エスコンフィールドをあとにして,新さっぽろ駅周辺で北海道ガスがスマートエネルギーネットワークの構築を進める,I街区開発プロジェクトの現場に向かった。I街区プロジェクトとは,大和ハウス工業が代表事業者となり2019年にスタートしたもので,札幌市が掲げる「札幌市まちづくり戦略ビジョン」,「同エネルギービジョン」のリーディングプロジェクトとなっている。病院4棟(うち1棟はメディカルテナントビル),分譲マンション,商業施設,ホテルの7物件で構成され,街区内のエネルギーの需要・供給双方を「新札幌エネルギーセンター」がCEMS(地域エネルギーマネジメントシステム)で一括管理し,街区全体の省エネを推進している。

 北海道ガスは,この新さっぽろエネルギーセンターで中心的な役割を果たす。I街区では,1250kWの出力をもつ天然ガスコジェネレーションシステム(CGS)が,2台稼働している。CGSとCEMSを中心に,先進的な分散型エネルギーシステムを構築している。

 なぜ先進的かと言えば,その理由は,①エネルギーセンターの最適自動運転やデマンドレスポンスなどにより,街区全体で二酸化炭素排出の削減を進める,②災害時の対応力に優れ,都市のレジリアンスを強化する,③グリッドへの送電(逆潮流)が可能で蓄熱システムも有し,再生可能エネルギーの活用につながる街区内外でのエネルギー連携を実現する,などの諸点に求めることができる。特徴的なのは①の点であり,AIを使って熱源機器の自動効率運転を行うオートチューニング,各施設の室温や貯湯槽をエネルギーセンター主導でコントロールする自動デマンドレスポンス,その対極に位置づけられるポイント付与等を組み込んだ電力需要予測や節電依頼に関する利用者参加型マネジメントシステムなどの,ユニークな工夫が織り込まれている。そして,2024年には,二酸化炭素排出量を30%も削減したと言う。

 次に向かったのは,札幌市内に北海道ガスが建設した札幌東ビルだ。2013年に竣工した同ビルには,技術開発研究所と人材開発センターが同居する。

 技術開発研究所が力を入れるのは,寒冷地や熱にかかわるエネルギー技術の開発。雪冷熱の活用,ソーラー温水パネル等の太陽熱の利用,などの研究テーマが,目を引いた。

 人材開発センターが力を注ぐのは,防災への取り組み。事故時の迅速な対応を身につけるための模擬ルーム(さまざまなガス器具が配備されており,歴史上の有名人たちの表札が掲げられている)や模擬店舗(ラーメン屋とスナック)が,印象的であった。

 最後に訪れたのは,札幌駅近くの北海道ガス本社に隣接する北ガス札幌発電所だ。川崎重工業製で出力7800kWのガスエンジン発電機を,2台擁する。同発電所はCHP(熱電併給)方式をとっており,電気と熱の両方を生み出す。電気は,自営線を通じて付近の需要家へ直接供給するとともに,逆潮流でグリッドを使って全道の需要家へ送り届けている。熱は,まず温水ボイラーで製造する高温水については,隣接する北海道熱供給公社を通じ,札幌都心部の地域熱供給用に充当する。またジャケット冷却水の排熱とインタークーラーの冷却水については,北海道ガスの本社ビルで活用している。

 CHP方式をとっているため,エネルギー利用の総合効率は,きわめて高い。発電だけでは40%台であるが,熱利用も加わるため80%台後半に達するのである。

 大通公園ではホワイトイルミネーションも始まり,札幌の街は,寒々としていた。しかし,北海道ガスのさまざまな挑戦を学ぶことができた,熱い2日間であった。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article4246.html)

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橘川武郎

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