世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.4210
世界経済評論IMPACT No.4210

泊3号機再稼働実現へ鍵握る防潮堤建設

橘川武郎

(国際大学 学長)

2026.02.16

 2025年11月,北海道電力の原子力発電所である泊発電所を見学する機会があった。同発電所を前回訪れたのは,23年8月のことである。それから2年3ヵ月が経っていたが,その間に大きな変化があった。25年7月30日に原子力規制委員会が,泊発電所3号機(出力91万2000kW)について,北海道電力の申請内容が新規制基準に適合しているとして,原子炉等規制法にもとづく原子炉設置変更許可を交付したのである。

 泊3号機は2009年12月に運転を開始したが,11年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で,12年5月に稼働を停止した。それから,今回の設置変更許可交付まで,じつに13年余の歳月が流れたことになる。

 泊発電所に続く道道1178号泊・共和線は,24年3月に完工していた。この道路は,シビアアクシデントの際の避難道にもなる。

 泊発電所に到着してまず感じたことは,現場の士気の高まりである。原子力規制委のゴーサインが出て27年中に再稼働という具体的な目標が定まり,前回と比べて,働いている方々の動きが明らかに活性化していた。表情も明るくなり,笑顔も多く見られた。

 PR館である「とまりん館」で概要説明を受けたのち,まず,仮設の展望台建屋から,泊発電所の全容を鳥瞰した。荒波の日本海を背景にして,たくさんのクレーンやトラックがひしめき合っていた。

 次に,安全対策面で重要な役割をはたす代替非常用発電機,可搬型代替電源車,可搬型大型送水ポンプ車,可搬型大容量海水送水ポンプ車を,間近で観察した。3号機の中央制御室では,6名の当直メンバーが,最新式の監視操作パネルに,真剣な表情で向き合っていた。

 その後,見学のハイライトである防潮堤の建設現場に向かった。再稼働の実現にとって防潮堤の完成は,目下最大の課題なのである。

 この防潮堤は,海抜10mの敷地に建設され,その高さは海抜19mに達する。最大で海抜15.68mになると見込まれる津波にも,十分に耐えうるわけである。

 完成後にこの防潮堤を見れば,地上から9mだけ頭を出していることになる。しかし,今回は,建設工事の真っ最中に現場を訪れたので,驚くべき実相を目の当たりにすることができた。

 防潮堤は,地下の岩盤の上に直接設置される合計34個のブロックから構成される。そのため,敷地を最大で約30mも掘り返し,そこにコンクリートとセメント改良土を注入して,ブロックを形成する。つまり,ブロックの高さは,最大で40m近く(地上9m+地下約30m)になる。これだけの高さを有する構造物を安定的に機能させるためには,約30mの厚み(奥行き)をもたせる必要がある。要するに一つ一つのブロックは,大きな塊となるのだ。

 見学前は,長い壁状の防潮堤を想像していた。しかし,実際は違った。大きな塊がずらりと並ぶ泊3号機の防潮堤は,完成後にはさながら水力発電所のダムのような様相を呈するのである。

 建設に必要なセメント改良土等の量は,55万㎥に達する。現場には,それを製造するための諸装置が林立し,まるでセメント工場が移設されてきたかのようだった。

 防潮堤の建設工事は,突貫体制で進む。北海道日本海側の過酷な天候にさらされる冬場にも,工事は続けられると聞いた。泊3号機の現場は,再稼働の実現に向けて,フルスロットルの状況にある。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article4210.html)

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