世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.4221
世界経済評論IMPACT No.4221

ようやく実現した柏崎刈羽6号機の再稼働

橘川武郎

(国際大学 学長)

2026.02.23

 東京電力・柏崎刈羽原子力発電所の6号機が,ようやく再稼働をはたした。ここで「ようやく」という言葉を使ったのは,再稼働にいたるまでに東京電力は,審査申請から12年5ヵ月,合格からも8年2ヵ月という異例の長期歳月を経て,2026年2月にようやく柏崎刈羽原発6号機の再稼働にこぎつけたからである。

 このように長い時間を要したのは,再稼働に関する地元了解の取り付けが困難をきわめたからである。その背景には,地元(新潟県)を供給エリアとしない電力会社による再稼働であった,という特殊な事情が存在した。

 新潟県は,柏崎刈羽原発を運営する東京電力の供給エリアではなく,東北電力の供給エリアである。このような原発運営会社と電力供給会社との「ねじれ」は,かつては福島県でも生じていたが,東京電力福島第一および第二原子力発電所の廃炉後は,新潟県でだけ見られる現象となった。この「ねじれ」は,二つの問題をもたらす。ひとつは「原発事故時の避難計画への不安」,いまひとつは「再稼働による地元メリットの不在」である。

 原発事故時の避難計画は地元自治体が作成するが,当該原発を運転する電力会社はその避難を全力をあげて支援しなければならない。電力会社が十分な避難支援を行うためには,当該地域の電力の供給体制や需要状況を熟知していることが,必要となる。それらを熟知しているのは,その地域を供給エリアとする電力会社である。柏崎刈羽原発電の場合,地元の電力供給体制,需要状況を熟知しているのは東京電力ではなく,東北電力なのである。柏崎刈羽原発事故時の避難計画の支援を東電が行うことに対して,新潟県民の不安が高まるのは,当然のことであった。

 もう一つの問題は,柏崎刈羽原発が再稼働したとしても,地元の新潟県には直接的なメリットがないことである。再稼働をはたした6号機で作られる電力は,すべて,新潟県とは別の東電供給エリアに送られている。すでに再稼働を果たした九州電力や関西電力,あるいは再稼働を予定している北海道電力の事例をみればわかるように,原発再稼働は電気料金の値下げに結びつくケースが多い。しかし,柏崎刈羽原発6号機が再稼働しても,新潟県民は,電気料金値下げの恩恵を受けることはないのである。

 これらの二つの問題が存在するにもかかわらず,今回,最終的には柏崎刈羽原発6号機の再稼働が実現したのは,国と東京電力が,それぞれカードを切ったからである。

 国が切ったカードは,第1の問題,つまり避難計画にかかわるものであった。避難計画遂行の際にきわめて大きな役割を果たす柏崎刈羽発電所周辺の避難道路の整備資金について,全額を国が負担すると表明したのである。

 一方,東京電力が切ったカードは,第2の問題,つまり地元メリットにかかわるものであった。この点で大きな意味を持ったのは,東京電力が,地元振興のため新潟県向けに10年間で1000億円の資金を拠出する方針を明らかにしたことである。

 これら2枚のカードは,他の事業者による原発再稼働の際には見られなかった事象であり,「東電スペシャル」だったと言える。スペシャルな措置が,再稼働を可能にしたのである。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article4221.html)

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