世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.2016
世界経済評論IMPACT No.2016

「北京」デジタル集積におけるセグメント構築

朽木昭文

(国際貿易投資研究所 客員研究員・放送大学 客員教授)

2021.01.18

1.「八大」戦略的新興産業,自由貿易試験区,一帯一路「共同」建設の三位一体

 中国の産業「集積」政策が,「八大」戦略的新興産業,自由貿易試験区,一帯一路「共同」建設の三位一体で進行している。2020年9月に「北京」自由貿易試験区の設置が発表され,21カ所の自由貿易試験区が全国をカバーし,「集積」が構築される。一帯一路「共同」建設は新型コロナ禍で2035年に向けて前進している(朽木(2020) とKuchiki (2021)参照)。

 主要なポイント5点を述べる。第1に,2020年10月に,第14次5カ年計画(2021~25年)と「2035年」までの長期目標を審議した。そこで,「中国製造2025」ではなく「八大戦略的新興産業」が議論された。八大産業は,「新型インフラ建設」により振興される。新型インフラとは,情報インフラ,統合インフラ,革新インフラからなる。戦略的新興産業の重点は,製造業中心から環境配慮型の次世代情報通信のデジタル経済へシフトした。

 第2に,中国共産党の2035年までの指針は,「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」である。短期的なものではなく,明確な理念のもとで首尾一貫した産業集積政策が実施される。

 第3に,中国は,Fortune世界500大企業数で2020年にアメリカ121社を超え124社となった。また,日経リサーチによる予測2020年では,中国は2028年にGDP規模でアメリカを上回る。このように中国がアメリカとの経済覇権争いで上回る点が出てくる。

 第4に,北京は,世界500大企業が2017年に中国全体70社中で北京の国有企業が52社あり,産業政策の核の都市である。北京自由貿易試験区は,2020年に設置され,北京,天津,河北省一体開発,そして一帯一路「共同」建設へつながる。自由貿易試験区は,2013年の上海から始まり2020年の「北京」までほぼ中国全土をカバーした。ここに,中国国内の「集積」拠点が出揃った。

 第5に,一帯一路共同建設は新型コロナ禍の第1波の2020年4~6月でも止まることはなかった。特に,EUとの連携が「中欧班列」の鉄道輸送により深まりつつあり,輸送コンテナの運行数が2020年に過去6年分を更新した。2020年12月30日に「中EU投資協定」を結ぶことで大筋合意した。中国EUの一帯一路共同建設の横軸の完成を目指す。

2.北京自由貿易試験区の設置

 北京自由貿易試験区は,国家サービス業開放拡大総合モデル区を目指す。試験区は,「デジタル経済」集積を主要な特徴とし,京津冀協同発展の拠点となる(北京9月4日発新華社)。その試験区は,「ハイエンド産業エリア」,「科学技術イノベーションエリア」,「国際ビジネスサービスエリア」の3つのエリアからなる。

 「ハイエンド産業エリア」は,2019年開港の北京大興国際空港西側に位置し,北京経済技術開発区が設立された。そこに,「三城一区」の中関村科学城,華海科学城,未来科学城,北京義荘経済技術開発区が設立された。ここは,主要イノベーション・プラットフォームとなる(北京9月28日発新華社)。

3.北京での集積の形成

 インターネットに接続するものには住所=IPアドレスが必要だが,今よりも格段に多くのIPアドレスが必要になる。IPv6では,340兆の1兆倍の1兆倍個のIPアドレスが使用できるようになり,ほぼ無限である。IPv6産業集積は,「中関村科学城」の重点プロジェクトであり,国のIPv6のハイエンド人材,戦略的新興産業の集積形成を目指す。北京市海淀区園では,清華大学と賽爾網絡有限公司が共同で建設する。これは,「次世代インターネット・大型応用技術イノベーションパーク」である。

 中国光大ホ―ルディング下の特斯聯科技集団有限公司は,「AIシティー」プロジェクトを実施し,都市レベルのインテリジェントIoTプラットフォームの構築を目指す。従来のスマートシティからAIシティーに移行する(同公司の艾渝・創業者兼最高経営責任者(CEO))。このシティーは,産業エコロジーを整備する。モノのインターネット(IoT)の構築,人工知能(AI)など「キー&コアテクノロジー」を開発し,「新型インフラ」建設を行う(北京8月28日発新華社)。中国の第4次産業革命は,各都市で実験集積都市を建設することにより実施される。

4.日本への教訓

 2035年までの目標に向け習近平氏の理念のもとに具体的に次世代情報通信産業などの「集積」が形成され,イノベーションを目指す。デジタル経済の構築に向けて「集積」の形成を目指す。集積のセグメントを効率的な順序に従って構築する。

 中国のデジタル経済集積政策の日本への教訓は,第1に「新型インフラ建設」と「イノベーション人材」の外国からの招致という集積セグメントの構築である(Kuchiki(2021)による)。

[参考文献]
  • 朽木昭文(2020)「中国の「一帯一路建設」,「環境配慮」の産業クラスター網によるサプライチェーン形成」,『日中経協ジャーナル』9月号,日中経済協会。
  • Kuchiki, A. (2021) “‘Sequencing Economics’ on the ICT Industry Agglomeration for Economic Integration,” Economies-MDPI 9(2). https://doi.org/10.3390/ economies9010002.
(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article2016.html)

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