世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.4257
世界経済評論IMPACT No.4257

タイのアヌティン首相の「ハネムーン期間」:選挙結果の確定と連立政権構想

鈴木亨尚

(元亜細亜大学アジア研究所 特別研究員)

2026.03.09

 2月25日,選挙管理委員会(以下,選管)は小選挙区選挙(定数400)のうち,396選挙区の非公式結果を認証した。その結果,アヌティン首相が党首を務めるタイ誇り党(以下,誇り党)の第1党が確定した。他方,これに先立つ13日,アヌティンは3度目の結婚をした。タイの占星術では,今年の2月13日は縁起の良い日とされる(注1)。アヌティンは,公私にわたって,幸せな「ハネムーン期間」を過すことになるのだろうか。なお,政治領域において,ハネムーン期間とは「選挙勝利後100日間の国民・メディアとの蜜月期間」をさす。

396選挙区で認証された選挙結果

 今般の選管の認証は選挙日から17日後で,2019年と2023年の総選挙の認証よりも早い。選管の関係者は「他の4議席の再投票と再集計を待ち,3月1日からの週に,これらと比例代表選挙の認証をする」としている。結果が確定していない4選挙区は,パヤオ県の第1選挙区,スパンブリ県の第2選挙区,チャンタブリー県の第1選挙区と第2選挙区である。選管は24日に5県の9投票所での再集計を命じたが,結果に大きな影響を与えるとは見込まれていない。26日,選管は,25日時点のデータとして,有権者52,933,610人,小選挙区の投票率71.42%(37,807,778人),有効投票率92.21%(34,862,178人),比例代表の投票率71.42%(37,807,781人),有効投票率92.65%(35,030,601人)と発表した。投票率は2023年の75.7%から4%強減少した。新議会は定数の95%にあたる475議席の認証から15日以内に招集されなければならず,その後,下院は首相を選出する(注2)。

 一方,中央汚職・不正行為刑事裁判所は,選管のナロン・クランワリン委員長及び他の7人の幹部に対する投票に関する訴訟を正式に受理するかどうか3月17日に決定する予定である(注3)。

連立政権構想

 「連立政権形成は結婚のようなものだ」ということがしばしばいわれる。本稿を執筆中の3月5日時点で,誇り党はタイ貢献党といくつかの小政党との連立を形成しそうである。一方,クラ・タム党の政権入りはなさそうである。同党の連立入りには,タマナット同党主席顧問(農業大臣)の「グレー」ないし「ブラック」に対する懸念が伴う(注4)。より長期の政権維持のためには,クラ・タム党の参加しない政権構想は賢明な選択だと思われる。

 「ハネムーン期間」は,野党やメディアに対して,政権批判の抑制を求めている。しかし,選挙に関する不正が強く疑われるなか,野党やメディアは政権批判を止めないだろうし,それは妥当だろう。そのため,アヌティンは,少なくとも,公的領域においては,愉しい「ハネムーン期間」を過ごすのは難しいと思われる。

[注]
(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article4257.html)

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