世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.2213
世界経済評論IMPACT No.2213

グローバル化によるアメリカ経済の衰退

三輪晴治

(エアノス・ジャパン 代表取締役)

2021.07.05

 1971年に弁護士のルイス・パウエル(グローバリスト・グループの一員)がその当時のアメリカの福祉資本主義を破壊しようと言って,「パウエル・メモランダム」をばらまいた。1981年レーガン大統領がパウエルの考えに基づき,グローバル化に走り,アメリカ経済をずたずたにしてしまった。アメリカの製造業は多国籍企業になり海外に出ていき,価格切り下げ競争に走り,イノベーションを停滞させ,賃金を下げ,国民大衆を貧困化させ,所得格差を拡大し,アメリカ経済をおかしくしてしまった。そしてクリントン,ブッシュ,オバマ達は中国共産党にアメリカを侵略させる手引きをした。

 このためにアメリカでは,トップ1%の富裕層の資産は34兆億ドルとなり4年で6兆億ドル増え,中間層以下の全資産は2兆億ドル以下になった。これはグリーンスパンが言ったような「自然力学としての所得格差」ではなく人為的なものである。情報産業はこの20年で雇用を2割近くも減らした。アメリカはそのために景気を良くしようと金融緩和を続け,借金経済に陥ってしまった。新型コロナのパンデミックで政府の借金は膨らみ続けている。2020年末の世界の債務残高は過去最高の2京9千兆円で,GDP比で365%となった。

中国共産主義勢力を招き入れる

 もともとキッシンジャーが中国の鄧小平の改革開放を助けて,世界の工場を造り,中国共産主義経済を拡大させた。これにより世界をグローバル化させ,アメリカのグローバリスト達が中国共産党を手引きし,アメリカを侵略させたのである。バイデンは「中国共産党のトロイの木馬」とも言われている。グローバル化で金が儲かると考えている人々が中国共産党にすり寄り,左翼化してきている。中国共産党が美味しい餌を出したのでアメリカの多くのものがグローバリストの手先になって行った。しかし中国共産党は餌として金を先ず与えるが,この金を後でいろいろの形で吸い上げ,倍返しで取り戻す。これが中国共産党の流儀である。「一帯一路」でもこれが起っている。

日本が支えているアメリカの借金経済

 アメリカの「対外負債」はこの30年間拡大し続けているが,その「アメリカの対外負債」と「日本の対外資産」は綺麗に相関している。つまり日本は食うものを食わないでアメリカにお金を貸して,アメリカの借金経済を助けているのである。もしアメリカが借金を返せなくなると日本は潰れてしまう。アメリカは過去対外負債を減らすために,為替レートを突然変更して借金を帳消しにしてきたが,相手国はたまったものではない。日本がアメリカ経済を支えているというこの構造をもとに,日本はアメリカに対して強い外交交渉をしなければならない。日本はその金で自分の経済を強固なものにしなければならない。

中国共産党の日本侵略と日本経済への警鐘

 アメリカのシンクタンクCSISのリポートは,日本が中国共産党に浸食されていることを日本人の実名を挙げて指摘している。しかしそのレポートの結論は,中国共産党の日本への浸食はあるが,まだそんなに危機的なものではないとしている。実際は,中国の「サイレント・インベージョン」で,日本人が認識していないが,日本は中国に深く侵略されている。日本は,「スパイ防止法」がないので,未だに日本には多くの中国共産党の工作員が自由に動きまわっている。日本にはまだ中國共産党のスパイ工作員のアジトである「孔子学院」やいろいろの中国の「協会・団体」が多く存在している。日本の産業界はまだ中国での生産を辞めないし,日本の大手企業はますます中国への生産設備投資をし,中国市場の近くで研究開発するための投資を増やしている。バイデンが大統領になってもアメリカ議会は中国への締め付けを強めるであろうから,いずれ日本はアメリカにも追いつめられることになる。

 そしてこれからは日本でも,今アメリカでやられているように,中国共産党・グローバリストにより公職選挙の乗っ取りが起こるであろう。

アメリカ・中国・日本のみつどもえの構造

 前述のように,アメリカの借金経済を日本が支えているが,中国がアメリカに商品を輸出できるのは,アメリカが中国の商品を買うことができるように日本が金をアメリカに貸しているからである。そういう意味では日本は中国の経済をも支えているのである。特に中国経済は米ドルが無ければ回って行かないので,中国はアメリカに輸出し続けざるを得ない。またアメリカは中国の安い商品が無ければ食べてゆけない。この構造をトランプは変えようとしている。

 1人当りの家計消費支出は他の国は年々増大しているが,日本だけがどんどん減少している。つまり日本は,デフレの中で,食うものも食わず節約してアメリカに金を貸し続けているのである。世界的な金利の安さで,アメリカに金を貸しても大して利益にはならない。もしアメリカが何らかのやり方で日本からの借金を踏み倒すようなことにでもなれば日本経済は大変なことになる。大国の借金の踏み倒しはこれまで何度も起こっている。こうした「三竦みの構造」で,日本が一番悪い役割を押し付けられており,危険に晒されている。これから日本は抜け出し,独立しなければならない。

RCEPは中国のトロイの馬

 日本はRCEP(地域的包括的経済連携)に署名した。RCEPを梃に中国はアメリカに対抗して,経済を拡大しようとしている。RCEPは緩い経済連携で,中国は自分のルールを変えないで,外に向かって貿易を拡大しようとしている。習近平はTPPに加入しようとしており,グローバル化で他国への侵略を更に加速する。中国のルールや価値観は資本主義国では受け入れることはできない。だからアメリカは中国共産党のルールを壊そうとして,戦争しているのである。

二足のわらじは旨く行かない

 日本の政治家,財界は,常にどこかの大国に頼らなければ生きていけないと思っている。そのために常に大国を探して頼ろうとし,二股外交をする。日本人は漁夫の利という言葉が好きのようであるが,しかし日本は二股外交をして,漁夫の利を得るような能力はない。日本は自立し,自分で生きていかなければならない。そのためには何をしなければならないかを日本は今考えなければならない。

 CSISリポートのように,日本の中に,アメリカ国際金融資本グループの手先と中国共産党の手先がいる。今日の米中戦争の中で,ある者はアメリカと中国を天秤にかけて旨くやろうと言っているが,それは不可能である。このままではバイデンになっても日本はアメリカに叩かれるし,もしトランプが大統領になったら菅政権はトランプに潰される。

 世界中で,「グローバリスト・グループ」と「民主主義グル―プ」との攻防が起こっている。今「ダボス会議グループ」は「グレート・リセット」というスローガンを掲げている。しかしこのダボス会議の方策はグローバリストの考えであり,プロパガンダである。彼らは世界的な経済の停滞と新型コロナ禍による「ディストピア」を大げさに強調して,それから抜け出すためと称して,「グレート・リセットによる新しい社会」というコンセプトで,世界の諸国を共産主義社会の枠の中に入れようとしているのである。

日本のグローバル化を止めること

 新型コロナで世界の経済が衰退し,安いものしか売れなくなった。現在のところアメリカ,日本が安物商品は中国に任せてきたので,中國でしか作れないサプライチェーン構造になってしまった。このままいくと,アメリカ経済,日本経済はますます衰退してくる。これを変えなければならない。つまりグローバル化を辞めなければならない。

 トランプはアンチ・グローバル化を進め,グローバリスト勢力を叩こうとして戦っている。グローバル化により海外でモノを造るのではなく,まず自国の産業を拡大し,内需を拡大し,価格切り下げ競争に陥った商品ではなく,その国の特徴ある付加価値の高い商品を造り,自国経済を活性化しなければならない。日本はそうすることにより長年続いてきたデフレから脱却しなければならない。

 しかし日本は未だにグローバル化に走っている。未だに移民を続けて賃金を下げ,デフレを加速している。日本産業界は中国市場に益々投資をしている。新型コロナで日本市場は委縮しているので,産業界はますます中国にのめり込んでいる。政府は消費税増をしてデフレを更に加速したが,菅首相は携帯電話料料金を強制的に下げさせて,得意になっているが,これは日本のデフレを更に悪化させることになる。

 つまり日本政府は日本経済をますますデフレにし,国と国民をますます貧困化させているのである。これは「国家反逆罪」になる。政府も菅首相も自分達が何をやっているのかが分かっていないようだ。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article2213.html)

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