世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1442

共同体の破壊

原 勲

(北星学園大学 名誉教授)

2019.08.12

 昨年9月,所属する大学紀要に,小論文「地域再生論と共同体資本主義」を発表した。御興味を戴ける方は,現在,ヤフーの検索サイトで同名のタイトルで全文の記載があるので,御高覧戴ければ幸いである。この小論での筆者の主張点は(1)市場資本主義のもとでは地域再生もしくは創生は不可能。(2)真のグローバリズムは貨幣を単位とした成功ファーストを意味しない。評価基準最大となっているGDPを変える必要がある。(3)貨幣愛の基礎になっている利子率は,実は貨幣が資産の現在価値を引き下げている。基本的には利子は廃止すべきである。(4)市場経済主義の人間観は合理的な愚か者,単純な人間像で成り立っており,人間の本質を理解していない。このような誤った人間像の上に成り立っている経済学は変革されなくてはならない。(5)ITやAI等高度な技術は今後も産業や個人の生活にまで浸透して行くものと思われる。これらの技術は限界費用ゼロを可能とする効用があるので,大量の失業者を招く可能性がある。しかし他方では働かなくても良い社会になるかもしれない。働かなくても良い無駄働き,働き蜂的社会の施策とはどのようなものであるか,あるべきかを,共同体で検討する必要がある。

 このような思考を巡っている最中,世界は極めて危機的な様相を深めてきていることに深い憂慮をせざるをえない。共同体化をどのように進めるかどうかどころか,真逆の共同体破壊に向かっているのではないかと思えるのが一般的な見方だろう。米国のトランプ大統領の言動はどう贔屓眼にみてもアメリカファースト,というより自分ファースト(ミーファーストか)である。これらの破壊的行動をとめるに国連,WTO,IMF,司法裁判所等をはじめとする国際的な諸機関は,あまりにも非力である。今や連盟(union)ではなく,厳格な国際法規を持った連合(federation)設立の精神に立ち返るべきではないか。勿論,民主主義の手続きももっと良い方法がないか知恵を絞らねばならない。

 筆者は宇宙までも現在の大国と言われる国家が間もなく全支配するのではないかと懸念する。

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