世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.855
世界経済評論IMPACT No.855

21世紀資本主義経済社会の知恵と戒律:日本の再生の道(その3)

三輪晴治

(ベイサイト・ジャパン 代表取締役)

2017.06.05

(4)21世紀の資本主義経済の道

 アメリカ人には,こうした先人の知恵は理解し難いかもしれないが,日本人にはわかる筈である。日本の役割はこれを世界に広め,根付かせることである。

 1980年からのハイパーグローバリゼーションで世界の資本主義経済が暴走したために,現在あらゆるものが破綻してきている。今日の日本経済を見れば明らかである。イノベーションの停滞と,実物経済以上の金は経済を停滞させ,錯乱させる。だが今やその行き過ぎに対する揺り戻し,是正の波が満ちてきている。分裂状態がしばらく続くが,これから21世紀の新しい世界経済が開けてくる。しかしそれは何もしないで出来るわけではない。

 マスプロで価格切り下げ競争をチキンレースのように暴走してきた企業は苦境に陥っている。ドイツ企業はマスプロに走らないという信条を持っているが,VWで,どこかで狂ってしまい,おかしくなった。アップルも,マイクロソフトも,IBMも,そしてユニクロも,トヨタも,セブンイレブンも,自身では認識していないようだが,この拡大暴走の不毛の道を走っている。これではいずれ崖から落ちることになる。クロネコヤマトもアマゾンにそそのかされて大混乱している。電通の働き方の問題,東芝の捏造も,ここからきており,多くの企業が「ブラック企業」の道に追いやられている。これに非正規労働者,国民大衆が巻き込まれ,喘いでいる。多くの産業,企業が成熟期,衰退期に入っているのに,それに気づいていない。既存のもののこだわりを捨てて,新しいイノベーションに挑戦する時である。そう考えると必ず新しい道が見えてくる。日本も自分独自のイノベーションによる新しい産業を起こさなければならない。

 日本はこれまで自分の意志で新しい方向に走ったことはあまりなかった。黒船という言葉に象徴されるように,外部の力,流れに,それを利用してどう対応するかを常に考えていた。そろそろ自分の肩の上に載っている頭でものを考えるときに来ている。力のありそうなものに跪き,節操なく媚びる。アメリカから言われたからというのではなく,中国がどう思っているからというのではなく,ロシアは何が欲しいのかではなく,日本として世界に何をすべきかを考えるときに来ている。日本経済の再生は,この先人の知恵をもとにこれまでの歴史の流れを見て,日本人としてこれから世界の経済社会のために何をやるべきかを考えることである。

 世界の大衆は戦争を辞めたいと思っている。とくに本当の戦争を見てきた人は100%そう思っている。一部の邪心をもった人間が「ロボット」ならぬ「核兵器」で他の人間を殲滅しようとすると,やがて核兵器が人間のコントロールを振り切り,人間全体を逆襲することになることに気づいていない。今日本だけができることは何か。70年戦争をしなかった日本だけが「戦争を辞めよう」と言えるのだ。世界経済の再生は,戦争経済ではなく,先人の尊い知恵で,「実物経済」を基にしたイノベーションを通じてでなければならない。過去20年日本の経済力の国際的な地盤は劣化してきているが,国民を豊かにするような経済力の強化に日本はフォーカスしなければならない。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article855.html)

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