世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.665

高圧直流送電の可能性 :スウェーデンで学んだこと

橘川武郎

(東京理科大学大学院イノベーション研究科 教授)

2016.07.04

 今年の5月,スウェーデンとフィンランドを結ぶ国際連系送電線のスウェーデン側の起点となっている交流・直流変換施設,Finnböle HVDC Station (Fenno-Skan 2)を見学させていただく機会があった。この国際連系線(80万kW,50万V)の基本部分は海底を通っているが,Fenno-Skan 2自体は海岸から70kmほど離れた内陸部にあり,海底送電線の入口となる海際のFenno-Skan 1とのあいだを直流架空送電線が結んでいる。

 現地を見て,一番驚いたことは,Fenno-Skan 2が無人で遠隔運転されていたことだ。日本国内でも,静岡県の佐久間周波数変換所や徳島県の阿南変換所(紀伊水道直流連系設備の四国側起点)などの交流・直流変換施設を見学させていただいたことがあるが,セキュリティ上の理由もあって,無人運転など想像だにしなかった。北欧特有の治安の良さも背景にあるのだろうが,交流・直流変換施設を起点とする高圧直流送電(HVDC)方式が電力系統のなかで当たり前の存在として位置づけられている,その「日常性」にむしろ感心した。

 Fenno-Skan 2の主要な設備は,スウェーデンとスイスに本拠をおく国際的な重電機メーカー,ABBによって供給されている。Fenno-Skan 2のサイトを訪れた翌日,ABBの幹部数人からお話をうかがうことができた。

 そのお話のなかで印象的だったことは,高圧直流送電方式が,世界的には,国際海底連系線だけでなく,内陸部の広域連系線でも幅広く活用されていることだ。北米・南米の大陸内連系線,中国の国内広域連系線などに,高圧直流送電方式はすでに導入されている。

 直流送電は,交流送電に比べて,送電ロスが小さい。日本のようにほとんど交流送電方式からなる電力系統の場合に生じる,迂回潮流を減らすというメリットもある。この迂回潮流は,太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる発電が普及するといっそう増大するが,直流送電は,それを抑制する機能をはたす。つまり,高圧直流送電方式は,再生可能エネルギー電源の普及を促進する意味合いをもつのだ。

 そもそも今回,スウェーデンを訪れた理由は,日本と韓国を結ぶ国際連系送電線の可能性をさぐることにあった。日韓連系送電線が実現すれば,日本の電力卸市場の取引規模が拡大する。そうなれば,電力小売全面自由化の成果は,さらに大きくなる。日韓連系送電線には,当然のことながら高圧直流送電方式が採用される。

 ただし,高圧直流送電方式が日本にもたらすメリットは,日韓連系送電線の建設だけにとどまるわけではない。再生可能エネルギー電源の普及を促進し,国内電力系統の改善・強化にも貢献しうるのだ。高圧直流送電方式は,大きな可能性をもっている。そのことを学習した今回のスウェーデン行であった。

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