世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.4003
世界経済評論IMPACT No.4003

エボラウイルス機能獲得研究:その危険性とメディア操作

藪内正樹

(IPU環太平洋大学国際経済経営学部 教授・敬愛大学 名誉教授)

2025.09.29

 「パンデミックに備える」として,日本政府は,緊急事態条項を憲法に盛り込む改正案を準備し,インターネット上の「偽・誤情報」統制を始めるとともに,エボラウイルスの機能獲得実験を都内と長崎大学で開始または準備している。エボラウイルスは,エボラ出血熱として知られた「最も危険な一類感染症の一つの病原体」である。アフリカで流行したウイルスを,なぜ日本で研究するのか。インターネット上の「偽・誤情報」と言うが,マスメディアは国民にとって重要な事項を報道していないといった問題は無いのか。国民の意識を高め,政治を監視する必要がある。

エボラウイルスの機能獲得研究とは何か

 エボラウイルス感染症は,1976年にザイール(現コンゴ民主共和国)とスーダン(現南スーダン)で初めて確認された。そして2014〜2016年に西アフリカで過去最大の流行が起きたことから,2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催が決まっていた日本は,2015年に国立感染症研究所村山庁舎(東京都武蔵村山市)に,一類感染症の病原体を実験するバイオセーフティレベル4(以下,BSL-4)施設の設置を決め,2019年にはエボラウイルスを購入して実験を開始した。BSL-4施設は,1類感染症の診断(病原体の特定),治療法やワクチンの開発,それらに携わる人材育成を目的としている。そこまでは良いとして,問題なのは機能獲得研究である。

 機能獲得研究とは,遺伝子操作によって,ウイルスがヒトへ感染し易くしたり,毒性を強めたりすることである。そんなことをする目的は,自然界の突然変異で危険なウイルスが発生しパンデミックに至ることに対処するためである。自然に先回りして新種のウイルスを開発し,同時にワクチンを開発するのである。また,敵性国家が遺伝子操作によって新種のウイルスを生物兵器として開発する可能性があるとすれば,これに対する唯一の防衛策は,敵に先回りして,より多くの新種ウイルスとワクチンを開発することである。いずれも善意または必要から行うのが,機能獲得研究ということになる。

 ところが,善意であれ必要であれ,あるいはBSL-4施設をどんなに上手く管理したとしても,漏えい事故のリスクはゼロにはならない。その点について,AI開発の事業家ムスタファ・スレイマンは『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ』の中で,「世界最高レベルの安全基準を持つ生物学研究所から,病原体の漏出は何度も起きている。ヒューマンエラーは避けられないが,漏出が必ず報告されているわけではない。この状態でウイルスを意図的に操作して改変するのは,核のボタンで遊ぶのと同じだ」と述べている。日経ビジネスが「ウイルスの感染力・致死性を高める研究は,核のボタンで遊ぶのと同じ」(2024年11月20日)という記事でその内容を紹介している。

 機能獲得研究による公益を認めるにしても,「リスクと利得を比較」することになるが,その際に情報公開や合意形成に手抜きすることは許されない。新型コロナウイルスは,実はウイルスよりワクチンが大問題である。ファイザー社とモデルナ社の新型コロナワクチンは,mRNA遺伝子の一部を直接体内に入れる遺伝子ワクチンである。

過去の全ワクチンより桁違いに多いmRNAワクチンの健康被害認定

 人類に初めて使用されたmRNAワクチンは,WHOがパンデミック宣言してから,僅か7ヶ月の「ワープスピード」で開発され,緊急事態を理由に治験抜きの「特例承認」で使用された。言い換えれば「治験を兼ねて」使用された。そして,副反応による障害や死亡事例は,過去のあらゆるワクチンより桁違いに多い。日本の予防接種健康被害救済制度による累計認定数は,新型コロナ以外(1977年2月〜2021年12月)が3,522件(うち死亡認定151件)に対し,新型コロナワクチン(2021年8月〜2025年9月11日公表分)は9,290件(うち死亡認定1.035件)である。この事実を,大阪サンテレビは2023年まで数回,NHKが昨年一回だけ報道したが,他のメディアは一切触れない。

 副反応が多く重篤な場合も多いため,2022年2月,英国衛生庁が「mRNAワクチンは生来の免疫力を低下させる可能性があるので,3回目以降の接種は慎重に検討すべき」と声明した。そして2022年夏以降,世界中で新型コロナワクチンの3回目以降の接種が控えられる中,日本だけが繰り返し摂取を続けた。リンクしたNHKの記事の最後のグラフがそれを示している。

 新型コロナワクチン(mRNA製剤)の副反応は,「薬害」と呼ぶべき規模である。厚生労働省は,過去の趨勢に高齢化などを加味して統計的に算出した「予定死亡数」を週単位で算出し,これを上回れば「超過死亡」,下回れば「過少死亡」と呼んで差分を公表している。2020年はインフルエンザが流行しなかったために「過少死亡」だったが,ワクチンを接種し始めた2021年から年間数万人の超過死亡が続いた。2〜3年目からは「薬害」を前提とした予測値を基準とすることを加味すると,4年間の累計で40〜60万人が命を縮めて亡くなった可能性がある。ワクチン接種後に死亡した人の遺族など13人が,2024年4月,国に対し「副反応などのマイナス情報を広報せずに被害を広げた」として,合わせて9,100万円余りの賠償を求める訴えを起こしている。

日本政府が先鋒となって推進するWHO「保健全体主義」

 日本も世界も,インターネット上の情報統制が進行中である。日本政府はインターネット上の「偽・誤情報」を監視し,対応することを昨年6月に閣議決定している。自民党の平井卓也元デジタル担当大臣は,2025年の参院選の最中,堀江貴文(ホリエモン)氏とのネット番組で「我々,相当“消し込み”にいっています」と発言した。メディアを統制しながら,ここまでmRNAワクチンを推進するのはなぜか。それは,紛争や戦争を利用して人命をカネと権力に換える“軍産複合体”と似た“医産複合体”が推進しているのではないか。「陰謀論」とされて来たが,事実だと考える人も増えている(拙稿「WHOが進める“保健全体主義”」参照)。

 しかし,パンデミックに備えてワクチンの研究・生産・接種の体制を作り,WHO本部に従って実行する義務を負う国際保健規則(IHR)改正案は,アメリカがWHO脱退,イタリア,オーストリア,イスラエルが拒否する中,日本では報道もされないまま施行された。

 第2次トランプ政権はWHOを脱退し,ワクチン薬害に長年取り組んできたロバート・ケネディ・ジュニア保健福祉長官は,mRNAワクチンの研究開発への政府助成金5億ドルを停止した。

 WHOによる保健全体主義を推進しているのは,ゲイツ財団からWHOに巨額の出捐をしていると同時に,ワクチンメーカーにも投資していることが知られているビル・ゲイツ氏ら医療と産業が結合した医産複合体である。

 ゲイツ氏は「地球人口は多すぎる。アフリカの人口爆発を抑えるにはワクチンの普及が必要。ワクチンで乳幼児死亡率を下げれば,今ほどの多産である必要がなくなる」と発言しているが,多産の原因は貧困である。ゲイツ氏はまた,低所得国の児童へのワクチン普及を行うGAVIワクチンアライアンスへも多額の寄付を行なっている。そのGAVIの大口スポンサーだったUSAIDを,第2次トランプ政権が巨大な利権機関と判断して廃止したため,ゲイツ氏は今年8月中旬に石破首相を訪問し,30分の会談でGAVIへ812億円拠出することを約束させている。

エボラウイルス機能獲得研究とWHOと医産複合体に反対する国民運動

 医学者の井上正康氏,近現代史研究家の林千勝氏らは,WHOや医産複合体に反対する国民運動を展開してきた。また,武蔵村山市の国立感染症研究所BSL-4施設は,建物の老朽化によって移転が決定されたが,移転先は専門家会議の意見に従って「厚生労働省本省と近距離であることが必要」とされていることから,早稲田大学の南側,戸山1丁目の国立感染症研究所など厚労省施設がある国有地内と考えられる。2025年9月23日,第5次国民運動として,新宿区の戸山公園での集会と,周辺3.2kmのパレードデモを行った。メディアが一切報道しない中,18.6ha(東京ドーム4個分)の戸山公園は参加者で埋め尽くされた。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article4003.html)

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