世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.3041
世界経済評論IMPACT No.3041

日本経済に24兆円の効果をもたらす新理論:「ゼロ・プロモーション・マーケティング」とは

宮本文幸

(桜美林大学 准教授)

2023.07.24

 コロナやウクライナ戦争によって市況は悪化しています。しかし,それ以前に日本は30年以上も経済が伸び悩み,モノづくり大国としてのかつての輝きを失いつつあります。

 このような中,筆者は約20年の化粧品のマーケター経験と10数年のマーケティングの実証研究から,「商品を店頭に置くだけでヒットする」究極のモノづくりの理論と手法の研究成果を公表しました。これによって期待される日本の経済効果は最大24兆円です。

店頭に置くだけでヒットする事例

 この発端は,筆者自身が商品企画に携わった殺菌デオドラント・エージープラス(2001年発売)が,宣伝などの販促策が間に合わない中,商品を店頭に陳列しただけで売上No.1になった経験です。それから今日まで,そのメカニズムの研究に17年間取り組んできました。世界を見渡すと類似する劇的なヒット商品があります。それらに共通する現象は次のとおりです。

  • 消費者は店頭で,「商品をひと目見ただけで釘付けになる」
  •  →「気になってしかたなくなり思わず商品を手に取る」
  •  →「商品説明を熟読し納得する」
  •  →「どうしても実際にその商品を試してみたくなる」
  •  →「思わず試用または購買する」
  •  →「誰かにその商品のことを話したくなる」
  •  →「口コミが拡大する」
  •  →「評判が瞬く間に広がり,ヒットする」

その共通要因とは?

 消費者をこのような衝動に導く共通要因は「イメージ・モチーフ」という,商品のコンセプトをビジュアルに表現・象徴する具体的なモチーフにあります。前述のエージープラスなら,「銀イオン」がイメージ・モチーフです。この商品には銀イオンが配合されており,その殺菌効果によって,わきの下のにおいが消えるですが,商品名は銀イオンの化学記号「Ag+」を表しています。パッケージ全体は銀色をしており,デザイン形状は銀イオンの化学モデルとして大小2つの球体を形どったものです。また1960年代にアメリカで大ヒットし全米シェアの40%を獲得したストッキングの「レッグス」は,パッケージが卵形で,商品名は「脚(レッグ)」と「卵(エッグ)」を合体したものです。この商品は「卵」がイメージ・モチーフです。

 なぜイメージ・モチーフを使うとヒットするのか? その答えは私たち消費者の潜在意識の中にあります。私たちは日頃,自分の脳の何パーセントを使って物事を考えているでしょうか。実はたった3~5%しか使っていないのです。残りの95~97%は自分自身も何を考えているのかわからない(脳が勝手に考えている)潜在意識なのです。前述した,ヒットに至るプロセスのほとんどは,この潜在意識によって引き起こされているのです。

適用範囲の広がり

 さらにこのイメージ・モチーフの特性や効果,応用可能範囲などを長年研究した結果,化粧品だけでなく飲料や家電製品など,日用的な最寄り品から高価な耐久財などの買い回り品まで広範な商品カテゴリーに適用可能なことや,日本だけでなく中国や米国など様々な文化圏でも適用できることがわかってきました。したがってこのイメージ・モチーフを様々な日本製品に活用して日本発のヒット商品を生み出し世界中に広めることによって,前述の経済効果24兆円をもたらすことができる,ということです。

実務での活用を促進するために

 これらの研究成果を実際に企業で活用しやすくするために昨年,実務家向け書籍『ゼロ・プロモーション・マーケティング』(同友館刊)を出版しました。確実にヒット商品を生むためには,イメージ・モチーフだけでは不十分です。その要点は次のとおりです。

 「売る」ことが困難な現代に,あえて「売らない」でヒットを狙う。売り込まれると買う気は失せますが,自ら探した“掘り出しモノ”は買いたいものです。売り込みが多い現代にこそプロモーションを一旦止めて“掘り出す価値”がある商品をつくることに集中することが大切なのです。

 商品は人と同じで,初対面では見た目が9割。その後に内面を知り,おつきあいするかどうかを決めますよね? ですから商品の内面と見た目を正しく作ることが重要なのです。

 商品の内面づくりは「インサイト思考」,外見づくりは「アウトサイト思考」が導いてくれます。

 インサイトとは,消費者の潜在意識の中から探り出した「誰も気づかなかった潜在ニーズ」。アウトサイトとは,商品の内面を象徴的に表現し,視覚をとおして一瞬で人々の心をつかみ購買行動をひきおこす「商品の装い」です。

 これらを備える商品が出来上がれば,あとは消費者が勝手に商品を探して興味をいだき,購入して使用し,口コミを広げてくれ,社会現象にさえなり得ます。

 それによる皆さんのメリットは,売上拡大はもちろん,宣伝広告費の大幅な削減,ヒット率の向上による経営効率のアップ,ブランド価値や社員の士気の向上など計り知れません。

 またこの手法は日本の「おもてなし精神」「繊細な職人的技術」「浮世絵やアニメに見る美意識」などとの融合によって日本独自の国際競争力を高めるものでもあります。

 この理論・手法を広く活用いただくことによって,日本のモノづくりに再び自信と輝きを取り戻せるよう,努力していきたいと考えております。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article3041.html)

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