世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
中国の貿易におけるRCEP発効の影響
(千葉大学 特別研究員)
2022.10.17
2020年11月15日に15カ国で署名された最大規模のメガFTA,地域包括的経済連携協定(RCEP)はその後の2022年1月1日に日本,中国を含めた10カ国で,また2月1日には韓国で,そして3月18日にはマレーシアで発効した。2022年10月13日現在インドネシア,ミャンマー,フィリピンの3カ国は未発効国である。本稿では12カ国で発効済みとなったRCEPが中国の貿易に及ぼす影響について検討してみたい。なおRCEP協定は世界のGDP,貿易総額,人口のそれぞれ約3割を占めている。
中国海関総署の2022年9月7日付け報道資料によると,中国の1月から8月までの貿易総額は前年同期比9.5%増の4兆1,914億ドルとなり,その内訳は輸出が13.5%増の2兆3,760億ドル,輸入が4.6%増の1兆8,154億ドルで,輸出の増加が目立つ。対RCEP参加国に目を向けると,1月から8月までの貿易総額は前年同期比6.8%増となり,その内訳は輸出が16.4%増,輸入が1.4%減となった。
2022年1月から8月までの貿易総額は前年同期比でASEANを筆頭に韓国,ニュージーランドの順(伸び率ベース)で増加しているが,日本と豪州は減少した。ASEANは前年同期比13.3%増(輸出19.4%増,輸入5.8%増)であり,韓国は7.2%増(輸出16.2%増,輸入1.0%増)であり,ニュージーランドは5.0%増(輸出が15.5%増,輸入が0.1%増)である。日本は前年同期比1.3%減(輸出6.6%増,輸入7.5%減)となり,豪州は3.8%減(輸出23.6%増,輸入13.7%減)となった。とりわけASEANは貿易総額,輸出,輸入ともに上述の中国貿易総額とRCEPの増加率を上回る。
中国の対日貿易は全体で1.3%減,輸出で6.6%増,輸入で7.5%減となったが,日本は中国の上位3の貿易相手国である。中国の2022年1月から8月までの貿易総額における上位3位の国と地域は米国(5,150億ドル),韓国(2,455億ドル),日本(2,390億ドル)であり,輸出においては米国・香港・日本で,輸入においては台湾・韓国・日本となる。
中国の貿易に占めるRCEPの割合は貿易総額,輸入,輸出において同様に3割となった。EUの占める割合13.7%と比較しても規模の差が大きい。RCEPは中国の貿易においても他の国と同様に大きな影響力を発揮することに違いない。そのRCEPにおける参加国の割合は貿易総額で韓国(19.2%),日本(18.7%),ベトナム(11.7%),豪州(11.6%),マレーシア(10.3%),インドネシア(7.5%),タイ(7.1%),シンガポール(5.5%),フィリピン(4.5%),ニュージーランド(1.4%)などとなった。ASEAN全体では49.1%に上る。
海関総署の2022年9月7日付けの別の資料によると,1月から8月まで輸出おいてレアアースが前年同期比76.3%増,未加工のアルミニウムが62.9%増,車(シャシーを含む)が56.2%増となった。輸入においては肥料が83.7%増,石炭と亜炭が53.1%増,原油が48.7%増,天然ガスが44.4%増となった。
COVID‑19,ロシアのウクライナ侵攻等の影響で世界不況が長引き,最近は物価上昇,1ドルが147円台にもなる厳しい環境の中で,中国における貿易を見る限り,堅調に見える。特に中国の貿易が2021年には好調であり,その上での上述の成果は中国のみならず,日本を含めRCEP,世界経済に牽引力になることを願っている。
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