世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.2643
世界経済評論IMPACT No.2643

宮崎「Hinata」ブランド,『農企業クラスター・パーク』戦略を目指して:「地域食農連携プロジェクト」における世界戦略

朽木昭文

(ITI 客員研究員・放送大学 客員教授)

2022.08.22

1.地域食農連携プロジェクト(LFP:ローカルフード・プロジェクト)

 農林水産省は,2021年度にLFPを実施した(注1)。都道府県が,LFP推進事業を活用して,地域の食と農に関する多様な関係者が参画した。この事業は,①「プラットフォーム」を形成し,地域の農林水産物等を活用したローカルフード・ビジネスを創出する取組を支援する。一連の流れは,農林水産物等の再評価・体制構築・マッチング・事業組成・事業戦略検討・マーケティングである。

 LFPの目標は,これまでの②「6次産業化」などの取組の更なる展開である。6次産業化とは,第1次産業,第2次産業,第3次産業を産業連関させ,付加価値を増やすことである。すなわち,地域内外の多様な関係者の協働を通じた産業連携や異業種等の技術や知の集積の融合である。③「イノベーション」の誘発,消費者ニーズや消費行動の変化に対応する,④「バリューチェーン」の再構築に取り組みながら,⑤「地域経済」の発展つながる新たなローカルフード・ビジネスの創出を目指す。

 この事業におけるイノベーションの定義として,LFPで目的とする「社会的課題の解決」に向け,連携しアイデアを駆使することにより,これまでにない「新しい何か」(バリュー:価値)を生み出すこととある。一言でいうと,LFPは,「新しい価値の創造」事業と言い換えることができる。

 以上の①から⑤を要約すると,LFPは地域経済の発展を目指す。6次産業化などでイノベーションを起こし,新しい価値を生み出す。この価値をバリューチェーンの形成により「顧客満足」につなげる。

 そして,この考え方のもとに,農林水産省が事業で採択したのは,北海道から鹿児島県まで21道県である。採択された事業に宮崎県が含まれる。

2.宮崎県のLFP

 そこで,本節では,宮崎県農業法人経営者協会の道休誠一郎氏へのヒアリングを通じ,宮崎県のLFPの現状と課題を明らかにし,更なる方向性を示す(注2)。宮崎県は,日本では難しい完熟グレープフルーツを生産する「日南産グレープフルーツを使用した新商品開発」やツーリストのHISが参加する「オンラインで楽しむ観光農園ツアー」などの7つの事業を選んだ。以下のそれぞれの事業で,第1次産業,第2次産業,第3次産業の産業連関効果を強め,付加価値を高める。

 また,宮崎県は,「たまたま」というブランドのキンカンが有名である。そこで,「健康志向に対応する“きんかんミルク甘酒”企画」が選ばれた。事業主体は,ベジフルミルクあまざけ協議会である。第1次産業は宮崎長友農園㈱である。第2次産業は㈱Milk Lab.であり,甘酒製造を得意とする。宮崎大学が製品化に参加する。第3次産業として,㈱宮交シティが流通に協力し,㈱シエナ・シノが顧客満足に対応する。JA宮崎経済連が販売企画を担当する。6次産業化,そして「農食観光クラスター」形成へ向けての典型的な例となる(注3)。

3.県一丸となって『農企業クラスター・パーク』の形成を

 しかしながら,6次産業化だけでは,地域開発は難しい。

 6次産業化では,「顧客満足」を第1とする対応を強化する必要がある。これは優先順位の第1位であり,すべての農産物で考量されなければならない。この点は,日本の製造業で良い品を作れば売れるという過去に犯した大きな過ちの例がある。

 そこで,観光業などの第3次産業が主導し,そこから産業連関としては,「後方連関効果」を最大化することが望ましい。後方連関とは,第3次産業が主導して顧客のし好を満足すように第2次産業,第1次産業へ連関を強めることである。つまり,第3次産業がリードする形での地域開発が価値創造のために望ましい。

 宮崎県のLFP事業は,6次産業化を通じた世界とも競争力のある地域開発を目指す。ブランド戦略が不可欠であり,宮崎県は,「ひなた」事業として,奨学金制度や飲食店認証事業などを実施している。そこで,「Hinata」(日向:ヒュウガと読む)のブランド世界戦略が考えられる。

 課題は,地域開発の最上位の目標として,世界を目指す地域開発ための『農企業クラスター・パーク』形成を目指すことである(注4)。LPF事業を実施する際に,この目標から国際化に向かって逆算することに日本の将来がある。

[注]
(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article2643.html)

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