世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.2455
世界経済評論IMPACT No.2455

米使節団の30時間来台訪問:どんなシグナルを示すのか

朝元照雄

(九州産業大学 名誉教授)

2022.03.14

 元アメリカ統合参謀本部議長マイケル・グレン(Michael Glenn Mullen)を団長とする米特使使節団一行が搭乗した行政専用ジェット機が,3月1日午後4時頃に台湾松山空港に到着した。台湾の外交部長(外相)吳釗燮などが空港に出迎えた(【3/1直播】拜登特使團抵台北松山機場 閃電訪台30小時)。

 一行は2日午前に蔡英文総統,賴清德副総統,午後に行政院院長(首相)蘇貞昌と国防部長(国防相)邱國正らと会見,米台関係について意見交換をした。外交部長吳釗燮から午餐会と蔡総統から晩餐会の招待を受け,同日夜10時には台湾を離陸した。コロナ禍下のバブル外交方式の訪台であり,およそ30時間の滞在であった。

 バイデン大統領が派遣した特使使節団は,マイケル・グレンのほかに,元アメリカ合衆国国防次官(政策担当)ミッシェル・フロノイ(Michèle A. Flournoy),元ホワイトハウス国家安全保障問題担当副補佐官メーガン・オサリバン(Meghan L. O’Sullivan),戦略国際問題研究所(CSIS)副理事長マイケル・グリーン(Michael Green)および元米国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長エバン・メデイロス(Evan S. Medeiros)などの米軍出身者や国家安全保障関係者からなる錚々たるメンバーだ。

 マイケル・グレンは,海軍作戦副部長,在欧合衆国海軍司令官兼ナポリ連合統合軍司令長官の要職を経て,第28代海軍作戦部長に就任,統合参謀本部メンバーの1人としてイラク戦争などに従軍した。その後,2007年~2011年に第17代アメリカ統合参謀本部議長を歴任,制服組のトップ(大将階級)を勤めた人物である。

 ミッシェル・フロノイ(女性)は前述の国防次官のほか,2014年と2015年に新アメリカ安全保障センター(CNAS)の「次世代国家安全指導者計画」(NextGen)チームを引率し台湾を訪問した。

 メーガン・オサリバン(女性)は2004~2007年のジョージ・ブッシュ政権時に国家安全会議でイラクとアフガニスタンを担当していたほか,現在,ハーバード大学ケネディスクール教授である。

 マイケル・グリーンとエバン・メデイロスはジョージ・ブッシュとオバマ政権時にアジア米国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を歴任,台湾事務を担当し,台湾には数回訪問している。特に,マイケル・グリーンはアメリカ国家安全保障会議(NSC)日本・朝鮮担当部長,NSC上級アジア部長兼東アジア担当大統領特別補佐官,戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問・日本部長を歴任したため,現在はジョージタウン大学外交政策学部教授,上智大学特任教授,戦略国際問題研究所(CSIS)副理事長を務めたため,日本との関係も大変緊密で,日本での知名度も高い。

 台湾外交部(外務省)によると,この特使使節団は民主党と共和党政権時の軍関係と国家安全保障関係から退任した高官によって構成され,アメリカの台湾に対する固い支持と高いコンセンサスが現れているという。バイデン政権は昨年4月にも元アメリカ合衆国上院議員クリストファー・ドッド(Christopher John Dodd)を団長とする特使使節団を派遣した。それから1年足らずで再び使節団を派遣したこととなる。台湾はマイケル・グレン一行の訪問を通じて,アメリカ政府との持続的で緊密な協力を追求し,さらに一歩進んだ台米間の緊密なパートナー関係を強化したい意向だ。特にウクライナ情勢が緊迫した今,バイデン大統領が大物による使節団を派遣したことで,アメリカの台湾重視と固い支持は「堅きこと磐石のごとし」(堅如磐石)関係であることが確認された。

 アメリカ側のスポークスマンは,「アメリカは台湾を継続的に,かつ強く支持していることを現わしている」と述べ,「この使節団メンバーこそが重要なシグナルだ」と伝えている。すなわち,「アメリカと台湾が民主主義を共有し,繋がっていることは「堅きこと磐石のごとし」(堅如磐石=rock-solid)関係である」,「台湾の未来を左右するいかなる非平和的行為は,西太平洋の平和と安全に対する脅威であり,アメリカは武力やその他の脅迫手段を阻止・対抗する能力を維持し,台湾の社会と経済システムが毀損されないようにする」と強い口調で述べた。

 筆者は,この特使使節団の派遣は2018年3月,トランプ前大統領が署名し成立した「台湾旅行法(Taiwan Travel Act)」に基づくものと考えている。これは,アメリカと台湾の高級オフィシャルの相互の訪問を促す法律で,緊迫するウクライナ情勢を,台湾有事に重ね合わせたアメリカ政府の支持の表れと言えよう。

 続いて,3月2日夜~5日に前国務長官マイケル・ポンペオと前国務省国務長官中国政策企画主席顧問余茂春(Miles Maochun Yu)が訪台した。3日午前,ポンペオは総統府で蔡英文総統から「特種大綬景星勲章」の叙勲を受けた。過去において,日本は森喜朗元首相,故石原慎太郎元東京都知事,扇千景参議院前議長が叙勲している。

[参考文献]
(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article2455.html)

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