世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.2083
世界経済評論IMPACT No.2083

RCEP協定を中国政府が急速に承認

韓 葵花(千葉大学 特別研究員)

石戸 光(千葉大学 教授)

2021.03.15

 中国商務部の2021年3月8日付けのHP報道資料によると,中国政府は地域包括的経済連携協定(RCEP)を正式に承認した。当日の第13期全国人民代表大会第四次会議の第2回全体会議後に設けられた「部長通路」で,王文濤・商務部長(2021年1月に就任)が発表したものである。王部長は,中国の企業にRCEPがもたらすチャンスと課題について把握するために,商務部が全国研修コースを開催し,WTO加盟時と同様に,協定の宣伝・紹介・訓練の機会を増やし,より多くの企業がRCEP協定の内容を熟知し,それを巧みに適用して,企業に本当の利益をもたらし,同時に人々にも利益をもたらせると語った(「商務部部長王文濤が2021年全国両会部長通路に参加(商务部部长王文涛出席2021年全国两会“部长通道”)」。

 一方,上記の発表について韓国の聯合ニュースは3月9日付け電子版で「中国,“世界最大のFTA” RCEPを承認,準備作業を加速」というタイトルで報道している。記事では承認を発表した王文濤商務部長の「部長通路」(人民大会堂内の通路で,報道陣による取材がなされる)での写真を掲載し,王部長は「協定の発効が早いほど各国の国民に恩恵を与えることができる」と指摘したと伝えている(韓国聯合ニュース3月9日「중국, ‘세계 최대 FTA’ RCEP 비준…"준비작업속도"」)。

 日経新聞は3月8日付けの電子版で「中国,RCEP国内承認 商務相が表明」というタイトルで,王部長が「『批准が早いほど各国国民も早く恩恵を受けられる』とも語り,早期の発効に向けて他の参加国にも国内手続きの加速を呼びかけた」と報道した(日経新聞電子版3月8日「中国,RCEP国内承認 商務相が表明

 2020年11月15日に15カ国で署名したRCEPの協定文によると,第20章第6条ではRCEPが発効するためには少なくともASEANの構成国の中で6カ国および非ASEANの構成国の中で3カ国が承認書,受託書又は批准書を寄託する必要があり,その60日後に発効すると明記されている。

 今回の急速な承認には中国政府が製造業のアップグレードを強く目指していることが一つの要因となっている。中国商務部の2月5日付けのHP報道資料「李克強,RCEP加入の我が国に対するチャンスと挑戦(課題)を詳細に解説する」によると,李克強首相は2月3日の国務院常務会議で「地域包括的経済連携(RCEP)に加入することは我が国にチャンスであり,挑戦でもあることをよく認識するべきだ」と指摘したという。また李首相は以下のように語った。

 「15カ国で締結したRCEPは参加国が国際環境の不確実性に共同で対応するのが有利であり,参加国の国民の福祉を増進し,我が国の高水準の開放を促進することに同様に重要な意義がある。RCEPの実施を加速することは,我が国が目前の開放を拡大し,更に改革を促進するために重要な突破口である。次のステップは機会をとらえ,挑戦に対応し,改革開放を深化することで産業の高度化を促進することだ。RCEPは参加国間の関税水準を引き下げるだけではなく,もう一つ重要な成果があるが,それは地域の原産地の累積規則が規定されたことだ。それは関税引下げの優遇を受けるだけではなく,域内貿易の協力を最大に促進させ,域内の産業バリューチェーンの安定化と強化ができる。製造業が中級・高級のものへ移行することを促進し,製品の品質を向上させ,市場競争力を高める。

 製造業に加えて,我が国のサービス業も同様により高いレベルへの全面的なアップグレードの挑戦に直面している。サービス業の開放を更に拡大するために,規則を改善するなど適切な準備を終えなければならない。もし企業がさらに激しい国際競争に対応できなければ,製造業大国から製造業強国への移行は語ることができない。我々は開放を拡大する決意を固めているが,これは落後(後進)を保護する可能性が決してないことを意味する。」(中国商務部「李克強RCEP加入が我が国に対するチャンスと挑戦について詳しく解説する」2021年2月5日)。

 世界経済の3割を占めるメガFTAであるRCEPは,締結するまでに8年間を要したが,各国における承認は早くなる可能性がある。上記の日経新聞の記事によると,日本では今の通常国会でRCEPが承認される見込みで,またタイは2月に議会承認を終えたという。COVID-19の影響で,2020年のGDPの成長率は中国以外のRCEP加盟国はマイナスであった。2021年の経済成長率については,IMFの世界経済見通しは1月の発表で中国8.1%,日本3.1%と予測している。RCEPが参加国の各国において速やかに承認され,2021年のGDPの成長率にプラスの影響を与えることが期待される。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article2083.html)

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