世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.4192
世界経済評論IMPACT No.4192

現在の国際情勢のもとでの日本の援助ついて考える

飯野光浩

(静岡県立大学国際関係学部 講師)

2026.02.02

 2025年10月に誕生した高市早苗政権は,2026年1月に衆議院を解散した。高市政権は現在の物価高の影響を受けて,経済対策に注力することを度々表明していた。そのため,この解散には大義がないなどと野党が批判し,この選挙を受けて立憲民主党と公明党が合流するなどと,日本は現在総選挙モード一色の様相である。

 しかし,世界を見渡すと,第2次トランプ(以下,トランプ2.0)の下で世界秩序は急激に変化している。特に,アメリカは自国第一主義を第1次トランプ政権のときよりも先鋭化させている。それは,対外援助の世界にも及んでいる。このことは,トランプ2.0の開始直後,アメリカ国際開発庁(USAID)を解体したことに象徴されている。さらに,これに呼応するかのように,イギリス,ドイツをはじめとするヨーロッパ諸国も対外援助を削減している。

 このような対外援助の潮流を受けて,日本はどうかというと,比較的厳しい財政状況の中,減らすのではなくわずかながら増やしている状況である。しかしながら,その水準はODA世界第1位の最盛期の半額程度まで減少していることを思えば素直には喜べない。また,日本がODAを減少させている間に,経済的台頭が著しい中国が援助額を急激に増加させて,存在感を高めている。さらに,現在の対外援助の現状を踏まえて,欧米が空けた穴を埋めるかのように,一帯一路を通じて中国が援助額を増やしている。つまり,影響力の拡大を図っている。

 以上のようなトランプ2.0の現状と,勢いづき存在感を高める中国の間に位置する日本の援助の今後について,「どのような援助をすべきなのか」,思いつくまま以下に述べていきたい。

 最初に,日本と中国の対外援助には共通点が多い。その一つは,経済インフラに重点を置いていることである。経済規模で中国は日本の数倍程度ある現状の下で,同じ分野で日本は中国と競合しても,援助額ではかなわない。したがって,日本が対外援助で存在感を維持するには,中国に比べて日本が比較優位をもつ分野に重点的に支援すべきである。その分野は教育,健康や法制度整備支援などのソフトインフラである。この分野での支援では日本に定評がある。この分野の支援は経済インフラに比べると目に見えにくいが,持続的な経済発展には欠かせないものである。日本の援助は概して総花的であるが,ソフトインフラに援助を特化させていくべきである。

 さらに,日本には長年の援助で蓄積した知見がある。その知見を活かして,他の国々と協力した援助,つまり三角協力を積極的に拡大するべきである。対外援助は政府が実施するため,政治的なものであり,外交手段の側面も有する。三角協力は日本単独の援助よりも日本の経費を削減できる。さらに,他の新興途上国とも協力する三角協力はある途上国が別の途上国を支援する「南南協力」を推進することにより,新興途上国を巻き込むことで,日本の外交の強化にも資することになる。

 現在の安全保障環境の厳しさを強調して,高市政権は防衛力の強化にまい進しているが,最悪の事態を避けるには,外交の強化も必要不可欠である。この強化の一環としても,日本の対外援助を有効に活用すべく見直す必要がある。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article4192.html)

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