世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1736
世界経済評論IMPACT No.1736

世界的ショックにおける日中韓経済連携

韓葵花(千葉大学 特別研究員)

石戸光(千葉大学 教授)

2020.05.11

 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的影響で日中韓を含む世界の国々は社会的・政治的・経済的にショックに陥った。日本は緊急事態宣言の最中であり,例年の大型連休は「Stay Home週間」とされているが,収束の目途は立っていない。

 国際通貨基金(IMF)は今年(2020年)4月発表の「IMF世界経済見通し」で,2020年の経済成長率を世界GDPが3.0%減少,日本のGDPが5.2%減少,韓国のGDPが1.2%減少,米国GDPが5.9%減少,中国のGDPが1.2%増加と予測した。中国などの一部の国以外はマイナス成長になると予測したことになる。またIMFは世界貿易額を11.0%減少すると予測した。世界経済においても世界貿易においても同様に経済規模の縮小が懸念される。

 日本の第1四半期におけるGDP速報は5月になるが,中国と韓国のGDP速報は既に発表されている。中国国家統計局の4月18日付の報道資料によると中国の第1四半期のGDPは前年同期比で6.8%の減少となった。中国の第1四半期貿易額は前年同期比で6.4%の減少となり,輸出は11.4%減少,輸入が0.7%減少となった。そのうち日本への輸出は14.1%減少した(中国商務部の報道資料)。韓国銀行の4月23日付の報道資料によると,韓国の第1四半期のGDPは前年同期比で1.4%の減少となった。韓国の第1四半期貿易は輸出が2.0%減少し,輸入が4.1%減少した。上述の「IMF世界経済見通し」で経済成長率が増加すると予測された中国でさえ,第1四半期においてはマイナス成長になり,日中韓における経済規模の縮小は同様に大きな課題になっている。

 そのような中,2020年4月14日にASEAN+3(日中韓)特別首脳テレビ会議が開催され,COVID-19に関する対策や各国の経済状況について議論が行われた。また4月17日には中国商務部長の鐘山と韓国産業通商資源部長の成允模による中韓通商部長電話会議が開催された。中国商務部の報道資料によると,鐘部長はCOVID-19が世界経済と国際貿易に大きな衝撃を引き起こしている現在,両国は協力して貿易の円滑を維持し,産業のサプライチェーンの安定を維持し,RCEPの年内の署名と日中韓FTA交渉を加速するとした。成部長はサプライチェーンの協力の中でのトラブルを解決し,積極的に進展するべきとした。この会議について韓国の産業通商資源部の報道資料では,企業家の円滑的な移動と交易・投資拡大などCOVID-19に対応した両国の協力方針を議論したという。この会議は,先の4月14日に開催されたASEAN+3(日中韓)特別首脳テレビ会議で参加国が合意した,協力について引き続き模索するものである。コロナ発症初期から韓中両国の中央政府と地方政府,企業間で緊密に協力し産業のサプライチェーンを堅く維持してきたことを強調し,特に至急の出張が必要な中小・中堅企業の中国への入国が保障されるように協力をお願いした。また現在進行中である自由貿易協定の進展のために両国が協力することにした。

 その後2020年4月20日,22日,24日,三回にわたって第29回東アジア地域包括的経済連携(RCEP)首席交渉官会合がテレビ会議で開催され,インドを除いた15カ国の代表が出席し,年内の署名を目指すとした。

 2020年における世界経済,世界貿易は上述したように規模が縮小する可能性が高い。特に世界貿易は1割の減少が予測されている。世界の貿易における日中韓のシェアはそれぞれ3.8%,11.1%,1.9%であり,世界全体での1割減少の影響を今後も大きく受け,また逆に大きな影響を与えるであろう。とりわけ日中韓は相互に主要な貿易相手国であり,工業製品において緊密なサプライチェーンが形成されている。世界の貿易環境が大きく変化している中,やはり一国で供給しきれない部品・最終財について日中韓での緊密かつリスクに対応した協力関係が求められる。たとえば日中韓それぞれの中小企業が水平的な立場で国境を超えて部品の相互発注を行う,いわゆる「越境的な横請け」についてのFTAによるサポート,さらには各企業が技術を適切に持ち寄り,共同で新製品を開発する体制なども,FTAで規律することが有益な分野であろう。上述のRCEPとともに,それを上回る付加価値をもたらすような日中韓FTA交渉を進めることが何より必要な時期である。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1736.html)

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