世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1725
世界経済評論IMPACT No.1725

アブダビ・日本の関係緊密化とJCCPの役割

橘川武郎

(国際大学大学院国際経営学研究科 教授)

2020.05.04

 JCCP,一般財団法人国際石油・ガス協力機関。石油ダウンストリーム部門における技術交流や人的交流を通じて,産油・産ガス国と日本との友好関係を増進し,わが国の石油・天然ガスの安定供給に貢献することを目的として,1981年に設立された政府系機関である。

 そのJCCPは,アブダビと日本との関係緊密化を図るべく,さまざまな活動に取り組んでいる。アブダビは,アラブ首長国連邦(UAE)を構成する中心的な首長国であり,日本向けに大量の原油を輸出する世界的な産油国でもある。

 JCCPが取り組む諸活動のなかでも注目を集めているのは,「女性のキャリア開発に向けた友好委員会」だ。これは,日本・アブダビ両国の石油関連分野で働く女性の支援・交流に取り組む組織である。このほか,JCCPは,アブダビ国営石油精製会社リサーチセンター(ARRC)とのあいだで,「製油所安定操業・稼働率最大化に向けた共同支援」を進める。また,アブダビ国営石油会社グループとは,「製油所の水環境負荷低減に関する支援化確認事業」や「石油ダウンストリーム設備における太陽光発電導入に向けた共同事業」,「海域環境保全強化に関する共同事業」なども行っている。

 2009年に活動を開始したARRCについては,出光興産が,組織設計と設立,パイロット装置の導入,RFCC(重油流動接触分解装置)触媒評価装置の配備,製油所経営の貢献と,長期にわたって支援を続けてきた。その支援には,19年以降,JCCPも参画するようになった。現在,製油所経営への貢献は,具体的には,RFCCの操業安定化・改善,製油所設備の信頼性向上,最適触媒の選定・開発などの形で進められている。今回,ARRCの研究室を見学させていただいたが,そこには,さまざまな装置が所狭しと配置され,稼働していた。

 18年に実現したINPEX(国際石油開発帝石)のアブダビ沖ザクム油田の権益延長にとっても,アブダビと日本との緊密な関係は決定的な成功要因となったと聞く。ザクム油田はわが国の自主開発原油比率を向上させる切り札的な意味合いをもつ巨大油田であり,権益延長が日本のエネルギーセキュリティ確保にはたした役割は大きい。アブダビとの関係強化に力を入れるJCCPは,これに間接的な形で貢献したわけであり,今後のさらなる活躍が期待される。

 アブダビでは,再生可能エネルギーを活用した未来型大規模スマートシティをめざすマスダールの建設現場も見学した。完成までになお10年を要する壮大なプロジェクトだが,すでに10MWの太陽光発電所は運転を開始していた。敷地内にあるIRENA(国際再生可能エネルギー機関)では,世界各国から集まった研究者たちが,太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス・潮力などの再生可能エネルギーの開発・普及に取り組んでいる姿を,目の当たりにすることができた。アブダビは,産油国だけでなく,再エネ先進国としての姿を整えつつある。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1725.html)

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