世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1634
世界経済評論IMPACT No.1634

効果のなかった中国の「二人っ子」政策

岡本信広

(大東文化大学 教授)

2020.02.24

 2016年は計画生育政策の大きな転換点であった。どの夫婦も無条件で二人の子どもが持てるようになった。その成果はどうであったのだろうか。2016年を基準に前後3年の国家統計局発表データからみてみよう。

  • 2019年 1465万人
  • 2018年 1523万人
  • 2017年 1723万人
  • 2016年 1786万人
  • 2015年 1655万人
  • 2014年 1687万人
  • 2013年 1640万人

 2013年から2015年の3年間平均は1660万人であり,大きな変動があるようには見えない。一人っ子政策が廃止された2016年は,明らかに出生数が増加し,1800万人にせまる勢いであった。2017年もその傾向が続き,1700万人台を維持している。

 しかし政策効果は2年間で尽きたようである。その後出生数をみると,2018年は1523万人,2019年1465万人と大きく減少してきている。2019年の数値は1500万人を割り込んでおり,「South China Morning Post(SCMP)」2020年1月17日の報道によれば,大躍進後の1961年以来の低出生数だという。言い方は悪いが,大躍進による飢餓で多くの人が亡くなった頃の数値にまで下がっているのであり,まさに危機的状況である。

 ところが,実際の数値はもっと悪いとも言われている。同じくSCMPの報道は以下のデータの不突合を指摘している。

 計画生育政策を実施する国家衛生健康委員会は毎年年鑑を出しており,各地方の病院から集められている出生データがある。2018年は1521万人であり,国家統計局の1523万人(これは人口サンプル調査から得られている)とそんなに大差はない。しかし,同年鑑の各省データを足し上げると,1362万人にしかならないという。

 また重慶のケースも取り上げている。重慶は西部の直轄市であり病院から収集した出生データを毎月発表している。昨年の1月から11月まで,重慶は25万5692人の赤ちゃんが生まれたとされ,これは一昨年度の数値とあまり変わっていない。しかし,毎月のデータをみると6月だけで6万6862人の赤ちゃん誕生数を記録しており,1月から5月の合計に近い数字であるという。つまり1月から6月までの半年間の数値が目標数値の半分近くになるように調整されているのではないかと専門家から疑われているのである。

 またウィスコンシン大学マディソン校のYi Fuxian(易富賢)は,2019年の出生数は1000万程度ではないかと推定する(Yi2020)。彼は,国家衛生健康委員会のデータ自体も過大推計されていると指摘しており,例えば,年鑑では2015年は1454万人である一方,ミクロセンサスは1100万人しか生れていないという。他にもセンサスと統計局データの乖離もあるという。2000年のセンサスデータでは1408万人しか生れていないにもかかわらず,国家統計局は1771万人として発表している。2014年には2000年生まれが中学校に進学するが,1426万人しかいないし,2015年のセンサスでは1357万人という数字のため,間違いなく過大推計されていると主張しているのである。

 もちろんセンサス自体のカバー率にも問題があるので,彼の主張を鵜呑みにできない。いずれにせよ,二人っ子政策の効果は短期間で終わったようであり,中国の少子化はかなりのスピードで進んでいることは間違いないのである。

[参考文献]
(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1634.html)

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