世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1480

これからのポスト・グローバル化社会の枠組みと秩序

三輪晴治

(エアノス・ジャパン 代表取締役)

2019.09.16

 来年あたりに起こるであろうと言われている恐慌の後,更なる経済停滞が続くであろうが,その後ポスト・グローバル化社会として世界の経済活動は再び活性化してくる。つまり恐慌から大不況のトンネルを抜けて,イノベーションにより再び経済活動が活発になり,発展することになる。その発展の期間をできるだけ長く安定的なものにするうえでのポスト・グローバル社会の枠組みはどんなものになる必要があるのだろうか。

ブレトンウッズ体制の精神

 これからの経済社会でも,ブレトンウッズ体制の精神のように,国家主権と民主主義を堅持するためにグローバル化を少し制限するという枠組みと規制を創る必要がある。言うまでもなく保護主義ではなく,各国の経済発展のために,資本の移動の制限,人の移動の制限を適切なものにしなければならないということである。各国は,国内の社会・政治的取引を脅かさない程度に市場を開放し,製品に関する輸入割当や関税などの国境での障壁を引き下げることで貿易を自由化する。GATTのルールは,各国に世界経済に参加する条件を柔軟に選ぶ自由を与えていた。

 グローバル化の行き過ぎは常に勝者と敗者を作り出すが,これからは一部ではなく多くの人々に経済活動の恩恵がいきわたるようにルールを創っていかなければならない。貿易障壁を引き上げる場合,敗者を助ける策を施す必要がある。

資本主義活動の制御装置

 資本主義経済活動では必ず詐欺的行為が起こるものである。国の経済の発展のために,経済活動の中での詐欺的行為を監視し,排除する制御装置を作り直す必要がある。アメリカはかつて持っていたその制御装置が破壊されたが,これを修復するような動きが出てきている。日本はその制御装置が無いに近い。その制御装置を構築しなければならない。これは日本の国民国家の「経済的な国防力」という意味でも極めて重要なものである。

資本移動の規制

 国民国家の発展のために資本移動の適切な規制をする必要がある。資本自体はグローバル化に走るという内在的本性を持っている。資本の移動の自由化はマクロ経済の不安定化と,長期的には経済成長を停滞させることが分かってきた。ある国で,経済が過熱気味のときは資本流入を規制し,経済停滞期の資金流出をコントロールし経済を安定化させる必要がある。アメリカも外国資本の流入でこれ以上ドル高になるのを防ぐために,資本規制を今検討している。

 日本では,「何でも民営化」の旗のもので,外国人や外国企業が,日本の土地を買い,日本企業や日本の公共事業を買収している。しかし日本の国防上からそれを管理し,チェックする必要がある。

比較優位生産に基づく国際分業

 国際分業による社会は,それぞれ違った商品を造りそれを他人に買ってもらい,自分は他人が創っているものを買って消費するものである。人とは違ったモノを創ることである。金子みすずの「みんなちがって,みんないい」の世界である。技術はこれからもイノベーションでどんどん変わる。新しい技術,商品がどんどん出てくる。比較的に得意な商品を各国で生産し,それを輸出し合う,国際分業をこれから進めなければならない。リカードが言ったように,葡萄酒を造る国と衣料を造る国とがあって,国際分業する。

 1990年代以降よりも,国際分業を主体としたブレトンウッズ体制期の35年間の方が対グローバル生産比でみた世界の貿易はより拡大している。

少種大量生産から多種少量生産へ

 グローバル化へ追い込む理由の一つが「マスプロダクション」,「少種大量生産」である。マスプロダクションでは,グローバス化による価格切り下げ競争の弊害が起こり,また画一商品では市場で売れなくなってきて,誰も儲からなくなる。世界貿易もグローバル化の行き過ぎで2015年ころから停滞してきている。

 最近の生産技術の進化,AI,デジタル技術,ロボット,通信技術,3Dプリンターなどによる「多品種少量生産技術」の進化で,市場に近いところで生産し,その地域の文化に合ったような商品を開発して供給できるようになった。日本はこの方向でその力を発揮しなければならない。

 今日の商品はある国の企業が一社ではできないものになっている。通信機器,自動車も多くの国の企業の部品,技術を組み合わせたものになり,技術,部品,商品の国際分業の形で出来ている。スマートホン完成品は,アメリカ,中国,韓国,日本が造っているが,その技術,部品はいろいろの国の企業が供給している。技術,部品にはOS,ディスプレー,半導体,半導体の素材,GPS,CPU,GMSなどがある。中国自身も,アメリカも韓国も自分ですべてのものを造ってはいない。こうした中で新しい「グローバル・バリューチェーン」ができて,貿易赤字問題も様相が変わっている。現在の中国自身の付加価値はあまり大きくはないが,関税戦争をやりすぎると中国は自分で素材も開発せざるをえなくなり,国際貿易としての国際分業が破壊されることになる。

 いずれにしてもアメリカもイノベーションで自分の得意とする新しい産業を開発して国際分業を進めなければならない。アメリカの貿易赤字は,アメリカがグローバル化をやりすぎたために,借金して外国の商品を買い,消費する体質にしたためである。中国のせいではない。アメリカが1980年代までに真面目にイノベーションで産業を開発したように,これからもそれをやる必要がある。

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