世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1476

G20とTICAD7:アフリカとのビジネスを考える

久米五郎太

(城西国際大学大学院 特任教授)

2019.09.09

 この夏はG20とTICAD7が日本で開かれた。TICADはアフリカ開発に関する日本主催の会議だが,G20の場でもアフリカがテーマの一つであった。TICADの横浜での開催は2008年,13年に続き今回が三度目,この10年強に日本企業がどのようなビジネスを具体化したのだろうか? 今回は主に企業のブースを回り,説明を聞き,資料を読んだ。

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 パシフィコの企業展示スペースでは,豊田通商のブースが救急車にカストマイズしたランドクルーザーとルワンダなどで医療品を輸送するドローン,そしてCFAO(買収したフランスの商社)を含めたアフリカ全域に広がる活動拠点の地図を展示し,存在感を示していた。他に目立ったのは,トタン屋根のパパママ・ストアを模した丸紅のブースである。屋根に載せた太陽光パネルから充電するLED電灯(ランタン)と,ソーラーホーム・システムとしてパネルと合わせ販売する電気製品(電球,ラジオやTV)を展示。アンゴラでの三つの繊維工場のリノベーションは完成し,現地産のシャツが置かれていた。

 今回のTICADは,民間主導でのビジネス展開が強調され,上述の例のごとく,スタートアップ企業や第三国企業との連携に焦点が当てられている。ソーラーホーム・システムは三菱商事もフランス電力と組み西アフリカで始めており,他の商社も同種の事業に参加している。

 多くのアフリカ諸国で発電能力が不足するなかで,JICAの円借款を用いた新規発電プラントの納入例はあるが,民間電力事業(IPPs)への日本企業の参加実績はまだ少ない。アジアや中近東ではこれまで日本の商社や電力会社が数多くのIPPsに参加してきたが,アフリカでは長期売電先の国営電力会社や政府の信用度が低いためといえる。今後は太陽光・風力に期待がかけられ,分散型電源で必要となる大型蓄電設備や安全・監視対策関連のICTシステムも有望のようだ。下水処理による中水化や飲料水供給,コンパクトな医療機器などについても説明を聞いた。

 製造業分野では,「ナイジェリアで40年」の歴史を持つ本田が,二輪車と四輪車を現地で組み立ている。ナイジェリア,コートジボワ−ル,エジプトで調味料を小袋に包装し,現地独特の調味料を作る味の素は,コメの増産計画に有機肥料を供給せんとしている。住友化学はマラリア蚊を防ぐための蚊張をタンザニアで生産しているが,防虫力がより強いオリセット・プラスを開発した。

 アフリカには約250の日本企業が800近い現地拠点(現地法人,駐在員事務所など)を有す。先行してビジネスを展開する例は,今年2月の経済同友会レポート「アフリカ進出のすすめ—進出企業30社の声」にも紹介されている。資源開発分野ではモザンビークでガス・LNG開発や港湾・鉄道の建設という大型事業が進み,これらには日本企業が関与し,JBICや邦銀からのファイナンスも見込まれている。南アのプラチナ開発にはJOGMECとともに日本企業が参加している。

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 アフリカ・ビジネスを日本とアフリカとの関係のなかで考えてみたい。日本とアフリカの輸出入額は2008年と12年がピーク(ともに約340億ドル)だったが,最近は資源価格低迷の影響もあり半分に縮小している。アフリカのシェアは日本の貿易全体の2%前後,直接投資残高では全体の1%にも満たない。一方,アフリカが世界経済に占める割合はGDP,輸入額,直接投資フローのいずれでも世界の3%前後はある。

 アフリカ市場の相対的な規模やその伸びに見合うように日本の貿易や特に直接投資が増えると考えれば,小さい市場ではあるが伸びる余地はかなりあるといえる。ただ,貿易は一般に近隣国の間で行われ,拡大はサプライ・チェーンの構築に影響される。サービス貿易や直接投資では,制度や文化の親近性も無視できない要素である。距離が遠く,歴史的にも人的にもつながりが薄い日本の企業はやはり不利である。ビジネス拡大には適切な戦略と強い意志に加えて,リスクテイクやフィナンスさらには外交や経済協力面での公的な支援が望まれる。

 G20やG7でもアフリカ開発や民間部門の活動促進が議論されている。G20大阪サミットの首脳宣言は,「質の高いインフラ」の必要性の原則を採択し,債務の透明性向上や持続可能性の確保にも言及した。アフリカには限らないが世界中でアグレッシブなファイナンスを武器にインフラ分野への関与を深める中国企業への警戒が高まっている。G20ではアフリカとのコンパクト(CwA)として,国際金融機関の協力のもとで,12の対象国に対して経済改革・事業環境の改善を促し,海外投資受入増大を支援している。ビアリッツではG7とアフリカとのパートナーシップ強化が合意された。

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 アフリカとのビジネスを広げ,深めるために「人づくり」の強化が欠かせない。アフリカからの留学生の受け入れ拡大と同時に,アフリカを深く理解し,欧米とも交流する日本の企業人,特に若手の養成が必要であろう。

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