世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1333

急激な中露接近の日米中への衝撃

坂本正弘

(日本国際フォーラム 上席研究員)

2019.04.08

米国での中露関係枢軸化への警戒

 米中経済・安全保障検討委員会(US-China Economic & Security Review Commission)は,米中関係への重要な情報を提供する議会所属の委員会だが,最近の注目は,3月21日の中露関係に関する公聴会である。公聴会は「中国とロシアの台頭する枢軸——戦略的競争時代での米国への意味」のタイトルだが,サッター・ジョージワシントン大教授,ワイツ・ハドソン研究所,ブランク・露米外交研究所の諸氏は,中露関係は急激な接近を遂げ,同盟的状況になっており,米国には深刻な状況だとした。米国は,その国家安全保障戦略と国家軍事戦略を,2017年末と18年初に公表し,中国とロシアを米国の戦略的競争相手と定義したが,両国が合体して,米国に対峙するとは予想していない。しかし,核・軍事大国のロシアが,経済大国の中国と同盟的連携をするとなると,米国にとっても容易ならぬ事態である。

中露接近の理由

 サッター教授たちの分析によると,中露は冷戦後連携を強め,2001年の中露善隣友好条約は,軍事協力まで謳ったが,その後の関係は必ずしも密接でなかった。ロシアの武器輸出においても,中国への武器供与は,その先端性において,インドに劣る状態であった。しかし,2008年の金融危機後の先進国の経済不況,2013年のオバマ政権の世界警察官からの引退宣言をへて,米国は衰退の過程にあるとの認識があった。2014年のロシアのクリミヤ併合・ウクライナ関与は,ロシアの国際的孤立を強め,中国への接近を結果したが,中国の南シナ海での人工島作成後の西側との対立の中で,急速な露中接近が,特に軍事協力の面で起こったとする。第1にロシアが,中国に最先端兵器の,超長距離ミサイルS-400と第5世代戦闘機SU-35を売却した。第2に,2018年9月シベリアで,ロシアは「Vostok-18」という30万人参加の大軍事演習を行ったが,中国が3200人の兵士を参加させた。第3に,中露海軍は,近年南シナ海,日本海,地中海などでの合同演習をしている。第4に,プーチン・習主席は20回以上の首脳会談を行っているが,軍関係者の頻繁な会談・交流は,両国の安全保障上の協力関係を裏書きする。

 サッター教授は,中露接近の原因として,①中露が持つ世界の多極化という共通の目的,②独裁政権モデルの共通の価値,③米国に対する共通の脆弱性,④米国および同盟国の衰退という機会を利用する,を上げるが,特に,オバマ時代に作られた米国の衰退の認識が大きいとする。中露関係については,これまで,表面上は接近でも,ロシアの中国への恐怖,両国の歴史的,文化的関係から,やがては背反するとのの観測が強かったが,今や新しい同盟の形だとする。それは,ロシアが米国に対抗するため,中国の台頭を受け入れたこと,中国に最新兵器を与えても2030年までは脅威でないと認識したからだという。経済面でみれば,ロシアにとって,中国は圧倒的に重要だが,中国にとってはロシアはさほど重要でないという現実がある(貿易では,中国はロシアの第1位,中国にはロシアは10位以下)。

新しい同盟的関係

 中露関係は米国に対抗するための,自由な,弾力的な新しい同盟の関係だとする。従来の同盟は,NATOが典型だが,一国でも侵されれば,他の国が合同で戦うという,安全保障上の厳格な規定を持つのに対し,中露両国は友好条約を持つが,安全保障上の義務はなく,弾力的な同盟である。米国への脅威,米国中心の国際秩序を崩すという点では,共通の目的を持つが,中国とロシアは,地域によって分業している。中国はアジア,ロシアは欧州,中東が核心的関心地域で,両者はその核心性を尊重しながら,米国に対抗する。中央アジアは,両者の関心が重複するが,ロシアは政治を,中国は経済の分業がある。ロシアは中国の一帯一路を尊重するが,ロシアの主導する欧州経済同盟への参与を認める。中国とロシアが異なる地域で同時に米国への挑戦を行えば,米国は2正面作戦に陥ることになる。国連安保理では,両国が,互いの利益をかばい,北朝鮮や中東・アフリカなどの友好国を保護する有効な場である。

中露枢軸の日米中への意味

 中露枢軸の出現は,世界のパワーバランスに大きな影響を与える。中露枢軸が固いとなると,ロシアと結んで,中国を牽制するというカードはなくなる。核・軍事大国のロシアと米国を凌ぐばかりの経済大国・中国という枢軸に対抗するには,超大国・アメリカも同盟国が改めて必要になろうが,米第一主義のトランプ政権と西欧諸国の関係はかなりこじれている。米中委員会の公聴会では,日本が求めている中国への対抗としての,ロシアとの友好政策は,壁に突き当たるだろうとの観測があった。

 本年6月のG20は,日本が議長国だが,安倍首相は,国際関係激動の中,中露関係の新展開を踏まえた上での,厳しい議長ぶりを迫られることとなる。

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