世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1245

EVはクルマからエネルギーハブへ

川野祐司

(東洋大学経済学部 教授)

2019.01.07

EV化は予測を超えて進む

 以前,ノルウェーがEV(電気自動車)の最大の輸入国であることを取り上げたが(「オスロのEV普及策」No.1190),法人向けEVへの優遇措置があるオランダなどでもEVの普及が進みつつある。ドイツや日本のような自動車産業が盛んな地域では,自動車産業の意向を受けたEVに対するネガティブな見方が広がっているが,自動車のEV化は着実に進んでいる。EVが自動車の大半を占めるようになるまではまだ時間がかかると見られているが,技術革新のスピードは人々の想像を超えるのが通例であることから,EV化は急速に進むと見るべきだろう。なお,日本で普及しているハイブリッド車は化石燃料を使うため,国際的にはエコカーとはみなされていない。

ワイヤレス充電の普及

 EV普及の最大の壁は充電問題だといえる。現在は充電器とEVをケーブルでつなぐ必要があり,充電にも時間がかかる。設置コストや場所を考慮すると充電器を大量に設置するのは現実的ではない。そこで,2つの解決策が考えられる。第1はEVへの太陽電池の搭載である。現在は薄膜太陽電池も開発されており,色を付けることもできることから車の外観を大きく損なうことはない。自動車の上面は太陽光をただ受けているだけで,何のエネルギーも生み出していない。

 第2はワイヤレス充電である。電子マネーのカードは読み取り機からワイヤレスで電気を受け取って機能している。EVも同じようにワイヤレスで充電できるようにすれば,道路や駐車場で充電することができる。現時点では超えるべき技術的な壁があるが,将来はワイヤレス充電が標準になるだろう。

EVはデータセンターに

 EVがワイヤレスで電力を受け取ることができれば,その技術を応用して電子データを送受信することもできるようになる。EVには多数のセンサーが搭載されるため,センサーが集めたデータの活用が望まれる。例えば,道路・橋・トンネルなどの状況をリアルタイムで監視し,修理の必要性を判断できるようになる。また,より細かい区分での気象データが手に入り,メッシュ天気予報が実現する。EVのカメラデータを使えば犯罪者の追跡も可能になる。さらに,リアルタイムの渋滞情報は物流ルートの最適化に役立つ。EVは多くのデータを生み出す存在となり,EV同士でデータをやり取りすることもできるようになる。EVはデータセンターとしての役割を果たせるようになる。

EVは電力ハブに

 EVがワイヤレスで電力を受け取るようになれば,ワイヤレスで電力を送信できるようにもなり,EV同士で電力をやり取りできるようになる。信号待ちや渋滞時などEV同士が接近しているときに,電力の余剰があるEVから電力不足のEVに電力を送信できる。複数のEVを経由すればより遠くの地域に電力を送ることもできるようになる。災害時には,EV上面の太陽電池で発電した電力を複数台のEVを経由して離れた地域の病院に送信することができるようになる。

 これまで電力は大規模発電所で集中的に発電してユーザーに配布していたが,今後はEVや家庭の太陽光パネルなどで分散的に発電を行い,EVも含めたスマートグリッドで配布できるようになる。送電線の負荷が減少することで,再生可能エネルギーの利用可能性もさらに高まるだろう。

EVは価値を生み出す

 データや電力を提供したEVには何らかの報酬が与えられるべきであるが,EV同士でトークン(仮想通貨)を受け渡すことで解決できる。データや電力を送信したEVはトークンを受け取り,受信したEVはトークンを支払う。データはEVを経由してインフラ管理者などが最終的な受取者となるが,EVが生産するビッグデータは大きな価値を持ち,かつ,自前でデータを集めるよりもはるかに安価に手に入る。EVが手に入れたトークンは,駐車場の料金,充電料金,EV関連税の支払いなどにも充てることができる。

 EVはドローン化も可能であり,将来は道路を走る2次元の移動手段から空中も移動できる3次元での移動手段になる。そうすればますます多くのデータを生産することができるようになるだろう。現在はEVは単なる移動手段にすぎないが,将来はEVは走ることで,また,駐車しているときでも価値を生み出すようになる。EV自体が社会的インフラとなる日が来るだろう。

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