世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1196

「計画生育」の今後

岡本信広

(大東文化大学 教授)

2018.11.05

 中国ではすでに一人っ子政策は廃止されており,2016年より全面的に二人っ子を認めるようになっている。少子化と高齢化の進展が激しい北京では2013年に一人っ子政策が制限付きで緩和され,2015年条件なしに全面的に二人を認める方向に進んできた。

 日経新聞(2018年1月8日)が報道するように,その成果はあまり芳しくない。毎年の出生数は2003年から2013年まで1600万人程度で推移してきており,一部の地域で計画生育の緩和が進み,1700万台に回復してきていた。2016年1月からの大規模な政策変更によって,2015年の1786万人から2016年の1846万人,すなわち11.5%の上昇となり,2000年以来の高い数値となった(SMPC2017年1月23日の数値)。しかし,この数値回復も国家衛生健康委員会の予想2000万人には遠く及ばなかった。そして2017年は1758万人と減少している。

 原因として中国国内で指摘されるのは,出産適齢期の女性人口が減っているということ,そして彼女たちの結婚や出産意欲は小さいという点である。中国の伝統観念ではより多くの子どもをもつことが奨励されているが,経済発展に伴い,他の先進国と同じように出生率は減少をたどる一方である。実際,製薬会社による「出産すべき1001の理由」という全面広告が湖南省長沙市の地下鉄で展開されたが,SNS上では女性たちから大きな反発を受けた。中には,皮肉を込めて「子どもを持ちたくない1001以上の理由がある」という書き込みもあったほどだ。

 また政府の方も出産奨励策を考えようとしている。40歳以下の子どものいない人々に税金を徴収し,出産基金なるものを設定し,子どもを持つ家庭を金銭的に支援するというアイデアだ。このアイデアも多くの人々から反発を受け,「一人っ子政策」と同じ人権侵害という声もあがっている。

 遼寧省は,すでに人口減少が始まっており,中国31省の中で初めて,長期的な人口計画を策定した。計画によると2017年末の4370万人から2030年までに4500万人にすることを目指すという。しかしながら,労働者の省外移出や優秀な人材の獲得において多少の方策はあっても,子どもを増やす方策に具体性はない。

 2020年から施行される民法から「計画生育」関連の言葉がなくなる予定である。報道によると,中国の衛生管理当局はすでに人口増加に関する政策の研究を始めている。しかし,多くの先進国が少子化に悩んでいることを考えると,出産奨励は簡単なことではない。

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