世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.940

財政再建はどうなったか

津守 滋

(東洋英和女学院大学 名誉教授)

2017.10.30

 安倍政権は,衆院議員選挙の公示に際し,財政再建の当面の目標時期を,数年程度遅らせる方針を表明した。これまで20年度を基礎的財政収支(プライマリーバランス)を均衡させることを目標としてきたが,今回この目標をあっさりと放棄した。日銀の黒田総裁も,「財政規律を保つのは当然」としながらも,「達成すべき目標は,政府がその時点で適切に決める」として,特別の注文は付けていない。

 これまで2度の消費増税の延期に加え,さらに当面の目標達成時期を先延ばしすることにより,財政再建への道筋が不透明になってきている。

 日銀は,2013年から「異次元緩和」により,大量の国債を買って通貨量を増やし物価上昇を目指してきた。しかし目標2%の達成のめどは全く立っていない。

 政府は,消費税の増税分の使途の変更で,長い目で見れば経済成長が図れるとして,結局は財政再建にも資することになるとするが,果たしてその目論見は達成されるであろうか。いずれにしろ,カネの使い方はいくらでもある。

 介護,老齢者対策,子育て,教育,必要だからと言ってこうした目的にいちいち対応しようとすれば,いくら金があっても足らない。

 1000兆円を超える借金のつけは結局次世代,次々世代の肩にかかってくる。ドイツのショイブレ財務相は,このほど開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議の締めくくりの総括で,「経済が力強いうちに構造改革と債務削減に取り組むべきだ」とし,今月発表したIMFの報告書の中でも,各国に「現在の回復基調は,財政余力を再構築する機会だ」と訴えている。

 財政再建が国際公約かどうかは別にして,いずれも日本政府に対し向けられた厳しい指摘と受け取るべきであろう。

 かりそめにも一時的な選挙対策のために財政規律を緩めるようなことになれば,将来にわたり禍根を残すことになろう。

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