世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.912

「超人口縮小文明国家」ニッポンの衝撃

市川 周

(白馬会議事務局 代表)

2017.09.11

日本文明の特異性

 日本民族の人口爆発は明治維新直後から始まる。1872年の3481万人が2010年に1億2806万人でピークに達した。140年そこそこで1億人近く増加したことになる。これが2011年以降,下降に転じた。そのスピードと規模は尋常ではない。国立社会保障・人口問題研究所の統計予測によれば,140年で増えた1億人が,今度は100年ちょっとで消失,元の3000万人台に戻ってしまうという。こんな人口現象を示す文明国家は世界中探しても日本だけであろう。

 日本の文明国家としての特異性については,『文明の衝突』を世に遺したサミュエル・ハンチントンが既に指摘している。彼は世界の文明を8大文明に分類し,中華・ヒンズー・イスラム・東方正教会・西欧・ラテンアメリカ・アフリカの各文明に加えて,日本文明を入れているが,日本文明だけが一民族,一国家で形成されている極めて特異なものであるとした。つまり日本人がいなくなったら,絶滅する文明であると。

『日本沈没』というデジャブ

 これから100年,日本文明はどうなるか。人口問題以外にも南海トラフや東京直下型という大地震発生のXデイは刻々と迫っている。北朝鮮の核有事という地政学リスクも日増しに深刻化している。1970年代の始めだったか,映画館のスクリーンに大写しされた『日本沈没』の題字がデジャブ(既視感)のように目の前に浮かんで来る。

 議論を日本民族にとっての人口縮小問題に戻せば,140年間で増加した1億人の日本人が,これから100年でほぼ消失してしまうというのはどんな風景なのであろうか。2010年から50年間の予測データを追いかけただけでもぞっとする。2010年から2020年までの減少数300万人が,次の10年では700万人を突破し,2030年以降,2060年に至る30年間は10年毎に日本列島の居住人口が1000万人ずつ消えていく。なんと1年間で100万人のペースだ。まさに天高く駆け上がったジェットコースターが真っ逆さまに急降下していくフリーフォール現象のような状況が眼前に広がっている。

白馬会議で徹底討議

 この人口フリーフォールに我々日本人はどう立ち向かうべきか。今年10年目を迎える白馬会議では,この問題を徹底討議する。

 先ず,第1セッションでは「人口減少経済への挑戦」という切り口から,杉浦哲郎氏(日本経済調査協議会専務理事)が,急速大規模な人口減少に直面して行く日本経済の諸課題を概括したうえで,それでも日本経済には新たな成長フロンティアを目指していける潜在的パワーがあることを,「日本型イノベーション」論を軸に問題提起する。

 第2セッションでは「“国のかたち”の再構築」という問題意識から,佐々木信夫氏(中央大学経済学部教授)は明治維新期の廃藩置県断行がその後の人口急膨張に備えた政治革命であったすれば,未曽有な人口縮小時代に突入する今,新たな政治革命としての「廃県置州」(47都道府県体制の解体?)が問われているとし,その壮大なビジョン実現のための具体的提案に挑む。

 第3セッションでは「人生100年時代のライフデザイン」という視点から,秋山弘子氏(東京大学高齢社会総合研究機構特任教授)が人口縮小と同時進行する超高齢化(65歳以上比率が2050年には現在の28%から40%へ)を取り上げ,アンチエイジングよりもアクティブエイジングを重視,若年層が多数を占めることを前提にした従来の社会制度・インフラや産業を超高齢化社会に合わせて見直す「ジェロントロジー」からの問題提起を行う。

 さらにディナースピーチではシェル石油,コカ・コーラ,フィリップス等の日系法人トップを歴任し「伝説の外資トップ」の異名を持ち,傘寿を超えた現在でも日本を代表するビジネスメンターである新 将命氏が登壇。日本企業の平均寿命は20年足らずだが,一方で創業200年以上の長寿企業が3900社もあるが,なぜ彼らは勝ち残れるのか? 松尾芭蕉の「不易流行」からピーター・ドラッカーの「顧客創造」まで言及しながら,長寿企業の“黄金サイクル”を解き明かす。

関連記事

市川 周

国内

日本

最新のコラム