世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
トランプの逆襲
(Global Issues Institute CEO)
2021.12.06
トランプの大逆襲が始まった。11月25日のラスムセンレポートの調査では,有権者がバイデンを打ち負かすためにトランプを選んだとしている。仮に今日選挙が行われた場合の得票率はトランプ45%に対しバイデンが32%で,無党派の間ではこの差はさらに大きく47%対20%となった(Washington Examiner 11月24日付 “2024 blowout brewing: Trump 45%-Biden 32%”)。
また11月中旬にトランプ氏の「影の選対」が行った世論調査によると,(いま選挙を行えば)前大統領はバイデンを,アリゾナ州で8ポイント,ジョージア州で3ポイント,ミシガン州で12ポイント,ペンシルベニア州で6ポイント,ウィスコンシン州で10ポイントリードしたという。
この5つの州は,2020年の選挙においてバイデンに合計73の選挙人票を投じ,決定的な選挙人団の勝利をもたらした。これを受けたトランプは,4つの集会を開催し,数十人の候補者を擁立,5州で自身の支持者を州政府のトップオフィスに就けることで,2024年の選挙に勝利する準備を整えた(POLITICO誌11月23日付 “Trump poll tests his 2024 comeback map”)。
さらに共和党系世論調査会社マクラフリン&アソシエイツによれば,11月の世論調査では,“15人の候補者がいる架空の2024年の共和党予備選挙”において,ドナルド・トランプが55%の票を獲得し,次いでロン・デサンティスの15%,マイク・ペンスが7%。他の候補者は3%以下となった。
また同世論調査では,大統領選挙が今日行われた場合には,すべての有権者において,トランプの支持が49%と44%のバイデン大統領を上回った。 バイデンは2020年選挙において得た投票の83%しか獲得できないが,トランプは96%を獲得できるともしている。
また無党派の間でもトランプの46%に対しバイデンが40%。民主党からも10%を獲得するとしている。このことからトランプ支持の民主党員は2020年時点から拡大する可能性があるとしている。
さらにトランプは,2020年選挙から黒人支持率を14%,ヒスパニック支持率を43%改善させた。そして55歳未満の有権者の間での得票率はトランプの51%に対しバイデン42%。郊外の有権者でも50%対42%でバイデンを上回った。
一方,有権者に対し,バイデンと他の16人の民主党議員による架空の民主党予備選挙について尋ねたところ,バイデンは得票は24%であったのに対し,ミシェル・オバマが16%,カマラ・ハリスが13%であった。カマラ・ハリス副大統領については支持率が40%と史上最低に落ち込んだのに対し不支持が55%と,彼女に対する嫌悪感が高まっている(News Max 11月19日付 “McLaughlin Poll: Voters Really Can’t Stand Joe Biden, But They Dislike Kamala Harris Even More”)。
このようなハリスの不人気のため,11月中旬には「ハリス解任説」がワシントンで流れた程だ。ハリスのスタッフの何人かは,ハリスが今年初めに不法移民問題を含む中央アメリカの一部と外交関係を処理するために派遣されたときなど,「解決に目途が立たない難題を任務として押し付けれた」とCNNに語った。去る11月18日にはハリス副大統領のコミュニケーションディレクターが辞任したことで,バイデン大統領とハリス副大統領の少なくともスタッフ間にある不仲説に拍車が掛かった。そしてバイデンがハリスを最高裁判所の欠員枠に指名し彼女を置き換えようとするかもしれない,という噂さえ流れた。
このような政権内の不一致も,バイデンの不人気の理由の一つだろう。しかし他にも幾つかの理由がある。例えば,マリストカレッジ世論研究所の調査では,調査対象の39%がインフレを最も重要な経済的懸念として挙げており,賃金(17%),労働力不足(11%),失業(10%)などの他の懸念をはるかに上回った。この結果バイデンへの承認率は42%に低下。いみじくも彼の経済対策に対する承認率(42%)と一致したと伝えられている(Marist Poll 11月24日付 “NPR/Marist National Poll: Economy & Biden Approval, November 2021”)。
インフレ率は今年10月に6.2%と,過去30年超で最高レベルに達した。ガス価格から食料品の価格までが急上昇し,バイデンの評価に大きな影響を及ぼしている。11月21日に発表されたCBSNews / YouGovの世論調査では,アメリカ人の67%がバイデンのインフレ処理に不満を表し,82%は,彼らが日用品の価格上昇を訴えていると報告している。
また国境での不法移民と国境警備隊員との接触は,7月には213,000人以上と,過去21年間で最高レベルに達した。以降,不法移民の流入はわずかに減少したが9月には,反転しおよそ192,000人に上っている。民主党内の進歩主義者は,約700万人の不法移民に対し,5年間米国に住み,働く権利を与えるバイデンのビルドバックベター計画内の立法措置を維持することを熱望している。またこれら進歩主義者は,ラテン系の有権者は,民主党員が不法移民の法的地位を獲得するのを助けるのに十分措置をとらなければ,民主党に対し大きく失望するだろうと主張している。
しかし10月の初めに発表されたAP通信/NORCの世論調査では,民主党員の60%,全人口のわずか35%が,バイデンの不法移民問題への取組を承認するに留まっている。
しかし,リベラル派エコノミスト誌の世論調査では,人口の47%がトランプに対して「非常に不利な」見方をしており,「非常に好意的」である23%の2倍以上となった。。その一方では,11月のバージニアの州知事選挙で,共和党のヨンキン候補をトランプ氏と結びつけることで足を引っ張る戦略を取ったが,ほとんど効果が民主党はヨンキン候補にバージニア州を制されてしまった(The Hill 11月28日付 “Five issues that will define the months until the midterms”)。
どうやらリベラル派メディアのトランプ氏に対する世論調査等が当てにならないことは今まで通りのようだ。「民主党がしたのは,トランプ,トランプ,トランプと連呼するだけだった。そして民主党候補は負けました!(中略)私はヨンキンのために集会に行く必要さえありませんでした」とトランプ氏は語る(News Max 11月2日付 “Trump’s Victory Lap: McAuliffe’s ‘Trump’ Fixation Helped Youngkin”)。
こうした一連の結果を見ると保守系の世論調査会社の調査結果の方が正鵠を射ており,トランプ氏の支持は依然として強固であると考えて良いだろう。経済や移民問題で正しい政策を主張するトランプ氏の帰還に期待したい。
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