世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1656
世界経済評論IMPACT No.1656

サンダース失速の原因—世界的少子化問題

吉川圭一

(Global Issues Institute 代表取締役CEO)

2020.03.16

 今年の大統領選挙で民主党の候補者が勝つのは難しそうだった。アイオワやネバダの党員集会の投票参加者は,4年前と同じくらいでしかなかった。ニューハンプシャーは増えたものの,それは州全体の人口増加プラスαくらいだった。

 そのプラスαには仕掛けがある。ニューハンプシャーの予備選では,共和党支持者が民主党の予備選で投票しても構わない規則になっている。そこで自分が勝ち易そうな相手に民主党予備選で投票して欲しいと,トランプ氏が共和党支持者に呼び掛けていたのである。同じ作戦がサウスカロライナでも行われたという。

 つまり今年の民主党には勢いがないのである。これでは本戦で勝つのは,何れにしても難しいのではないか?

 ところがサウスカロライナから投票参加者が明らかに4年前より絶対的に増えている。スーパーチューズデーが行われた14州では,平均して1.5倍くらいになっている。

 バイデンの「奇跡の復活」の原因は,そこにある。単なる黒人の支持だけではない。

 なぜ投票参加者が増えたのか? 色々なことが考えられるだろう。

 極左のサンダースではトランプ氏に勝てない。やはり穏健派のバイデンでないとトランプ氏を倒せない。そう考えた人が多かったという説が有力である。

 もちろんサウスカロライナの予備選挙の前後に,民主党の有力者が次々とバイデン支持を打ち出したこともあるだろう。ブティジェッジやクロブシャーが思ったより票が取れず,撤退してバイデン支持を表明したのも小さくないだろう。

 バイデンは負けると思われていたためか政治献金が不足していて,サウスカロライナで勝った後も,スーパーチューズデーが行われた州の殆どでテレビ広告をしていなかったし,事務所さえない州もあった。5億ドルを使ったと言われるブルームバーグとは大きな違いだが,それでも大勝している。

 それには次のような背景もあった。スーパーチューズデーで投票した人々は,中高年の人(45歳以上)が大部分であり,サンダースを支持するような若者は平均して2割未満だった。これではサンダースに不利に決まっている。

 バイデンの選挙集会では短時間でも最初に国家への忠義や宗教に関する話をする。サンダースの集会では,アメリカの歴史や経済や社会の問題点を指摘し,アメリカを悪く評価するようなことが多いという。いわば反米米国人の集まりである。他に多様性重視のため同性愛者やナチス的反ユダヤ思想を持ったイスラム系移民も多いという。ここまで来ると多様性ではなく異常性である。

 実はサンダースが2月末に発表した税制等の改革案は,アメリカ中心の格差社会を解消できる可能性を秘めた優れたものだが,8年くらいの時間を掛けて少しずつ進めないと,ショックで米国中心に世界の金融と経済が破滅する可能性も高い。既に心臓発作で死にかけたことがある80歳近い高齢者が,8年がかりの計画でものを考えるだろうか? 2,3年で進められたら前述のように世界が破滅する。

 以上のようなことを考えると,やはり大統領に適切な人とは思えない。

 だからと言ってバイデンが大統領になったとしたら,アメリカ中心の格差社会を肯定して来た,既存のワシントン既成勢力の政治に戻るだけである。

 そのため若者がサンダースを支持して来た訳であるが,どうもサンダース支持者は,若者の中でも少数派だったようだ。それはスーパーチューズデーの投票結果を見れば分かるだろう。

 逆にアイオワやネバダは大きな州ではなく,党員集会というのは学級会のような形式で行われるので,少数の若者でも動員できれば,彼らの熱気に他の参加者が影響されるので有利にはなる。

 なぜサンダース支持者の若者が少数なのか? それが世界的少子化問題に繋がっている。

 経済が成熟しグローバル化や人工知能が発達し高学歴の人しか生き残れない世の中になれば,自然に人は子供を産まなくなり社会は少子化する。日本だけではない。欧米諸国も日本より先に白人は少子化していた。

 そこで移民を増やした訳であるが,それが社会的混乱を招いた。移民は,その地とは違った価値観を持つ。前述したナチス的反ユダヤ主義のイスラム系移民のようなものである。

 また米国では(黒人を含む)移民系の方が,宗教熱心で同性愛等には否定的である。それが多様性を重視するサンダースのネックになっている。移民のお陰で若者人口が多いように見えても,サンダース支持者になる人は多いとは言えない。

 サンダースの支持者は高学歴の白人エリートが多い。それと白人と同じような生活ができるようになったヒスパニックの一部と。

 サンダースの政策は学費無償化等,既にエリートである人や一家が,その地位から滑り落ちないようにする側面が強い。真に貧しく勉強がしたくともできなかった職人のような人々からは反感を買っている。それが彼が黒人の支持を得られない理由の一つではないかと思う。

 このように少子化したからといって移民を増やすのは社会の混乱の原因になる。日本も人工知能の開発等に力を入れ,移民労働に頼らない社会を目指すべきだと思う。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1656.html)

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