世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1621
世界経済評論IMPACT No.1621

『悪霊』ヒラリー復活!!!

吉川圭一

(Global Issues Institute CEO)

2020.02.10

 2月3日に行われた民主党大統領選出予備選挙は,投票および集計用のアプリの不具合のため2月7日現在,完全な結果報告が出来ていない。だが米国で最も権威ある世論調査機関FiveTirtyEightが現地時間2月5日に報じたところでは,以下のようにまとめても良いだろう。

 アイオワ党員集会では最初の投票で15%取れなかった候補者に入れた人は二回目投票で別の人に投票できる。代議員票もある。その調整の結果は以下のようである(分かり易さの為に3位のウォーレン上院議員は割愛した)。

  • ブティジェッジ 21%→25%→27%
  • サンダース   24%→26%→25%
  • バイデン    15%→13%→15%

 これを見ても代議員票等で,サンダースが不利にされていて,バイデンや彼を浮上させるためなのかブティジェッジが,有利にされているのが分かる。ヒラリーは自分を扱ったドキュメンタリー映画の上映会で,慎重に言葉を選びながらも,大統領選挙への意欲を滲ませた。また1月末に,ヒラリーは民主党の大統領候補になった人を支援すると行ったが,それがサンダースではないことを望むとも言った。

 今回のアイオワ民主党党員集会の混乱は,初戦の小州をスキップして,スーパーチューズデーに賭けるブルームバーグに非常な追い風になっている。彼は800人だった選挙スタッフを2000人に増やした。だがブルームバーグの税制改革は,経済全体を沈滞させ,個人営業の中小自営業を圧迫し,民営年金基金の運用に対しても増税になる。

 だが2月の民主党の候補者討論会参加資格が,まとまった寄付金を集めていることと世論調査で支持率10%以上から後者のみになったため,今まで自己資金で闘っていたブルームバーグも出られた。民主党全国委員会はヒラリー派の幹部中心に夏の党大会の最初に特別代議員が投票するように規則変更することを考えていて,これはブルームバーグが討論会に参加し易くした規則改正と相まって,サンダース潰しではないかとの不信感を募らせている。

 アイオワの党員集会の結果による今後の勢いでは,バイデンに不利でサンダースに有利になる筈だった。しかし今回の混乱のお陰で,そのような勢いが変わる可能性がある。今年の民主党予備選挙の開催される州の人口統計を精密に見て見ると,本来の民主党支持者や今の米国の人種や産業の分布を正確に反映している州ほど後半に予備選を行う傾向がある。誰が民主党大統領候補になるかは最後まで分からない。

 そしてアイオワの混乱の原因となったアプリの製作会社は全ての関係者が一括して投票結果を見られるシステムを構築しようとしているが,この会社も何とヒラリーの関連会社なのである!

 アイオワでの投票アプリの故障はハッキングが原因ではないと同州の民主党支部は言っている。1月末から地元の役人がアプリの問題に気づいていたが,当局者はアプリの使用方法に関する訓練を受けず,ダウンロードやログインに失敗した時ホットラインを呼んでも2時間も保留にされた。投票用アプリの結果をバックアップするための紙の投票用紙もあったのだが,こんな混乱が起これば,それさえも信用されなくなってしまう。ネバダ州の州民主党は,今月後半に党員集会を開催するが,アイオワ州で機能不全に陥ったアプリを使用しないと発表した。

 だがアイオワの党員集会を混乱させた投票アプリを開発したシャドー社の代表者は元ヒラリーの参謀。同社の親会社的な存在であるNPOアクロニウムの代表者はブティジェッジの参謀と結婚している。この二つの法人はワシントンDCの同じ住所にある。更にアクロニウムはトランプ大統領落選キャンペーンのために7500万ドルを使う予定で既に40%ほど寄付等が集まっている。

 シャドー社はアクロニウムが間に入って夏の民主党大会用に別の投票アプリを売り込んでいる。悪意で解釈すると何らかの意味でヒラリーに有利な投票操作が行われる可能性があるのではないかと私見では思われる。

 サンダース派は7月の党大会の役員にヒラリー派が多過ぎることに不信感を抱いている。ヒラリーは今のところ大統領選に出ないと言っているが,スパーチューズデーから参加しても十分な票が取れそうどころか,このまま大混戦で誰も14%以上の代議員を取れなかったら予備選で戦わなくとも夏の党大会で特別代議員によって大統領候補に選ばれる可能性がある。

 少なくとも彼女は自分の傀儡のバイデンを大統領にしたいように思われる。だがサウスカロライナにおけるバイデンの支持率が30%から25%に下がっており,しかも同州有権者の6割以上を占めバイデンの岩盤支持層だった黒人の間での支持率が50%から30%に落ちている。

 そして2008年にアイオワ民主党党員集会の初参加者は57%。2016年は44%。今年は33%。2016年には参加者の20%が「大統領選で勝てそうな人であることが政策より大事」と答えたが,今年は60%。如何に今の米国民主党の草の根での勢いが落ちて後ろ向きになっている証拠のように思う。いま若者の支持はサンダースが32%で最も高い。彼ならトランプと戦えば若者票の6割近くは取れる。だがヒラリーも同じ条件でトランプに最終的には負けている。

 こうして見るとヒラリーという「悪霊」の復活は簡単ではなさそうだ。そうであることを私としては心底から望むものである。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1621.html)

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