世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1446

第4次産業革命の到来は日本に本格的な設備投資ブームをもたらすのか

福田佳之

((株)東レ経営研究所 産業経済調査部長 兼 チーフエコノミスト)

2019.08.12

超スマート社会の実現へ

 先進国などではIoT,ビッグデータ,AI,ロボット技術等を軸とする第4次産業革命が進展している。「超スマート社会」の実現に向けて個々にカスタマイズされた生産・サービスが社会に提供される。具体的には,ウェアラブル端末による健康管理,配車や民泊などのシェアリングサービス,AIを使った資産運用,フィンテックなどがそれにある。

 関連需要も莫大である。経済産業省は,世界的なIoTの普及に限定しても,普及に伴って生ずる経済価値は2013年から22年までで累計15.7兆ドルと試算している。その内訳を見ると,その4分の3はサービス産業が占めており,製造業についても即時対応のオーダーメイド生産などサービス化が進展するとみられる。

非製造業を中心に弱い投資意欲

 日本の民間設備投資は2010年代に入って増加基調で推移しており,17年度は86兆円超を記録,18年度は89兆円を突破する見込みである。設備の老朽化に伴う更新需要に加えて内外でのIT関連需要等の高まりによるところが大きい。しかし,企業収益は史上最高を記録し,過剰債務や過剰設備の問題も解消したことを考慮すると,日本企業の設備投資の伸びは緩慢に見える。

 設備投資が緩慢なのは何も日本企業に限った話ではなく,先進国企業に共通する現象ともいわれている。経営環境の不確実性の増大等が影響しているためとされているが,本当に日本固有の要因はないのだろうか。

 2010年代の日米独企業のキャッシュ・フローに占める設備投資の割合を計算すると,製造業においては日米独3カ国について5割から6割と大差はない。一方,非製造業において日本は6割弱にすぎないのに対し,米国とドイツは100%を超える状況にある。米独では非製造業を中心に設備投資意欲の強さをうかがうことができる反面,日本では非製造業においても設備投資に前向きになっていない。

「三つの思い込み」からの脱却

 第4次産業革命の到来でサービス分野に投資機会が生じているにもかかわらず,日本企業が非製造業を中心に投資意欲が強くないのは問題である。とりわけ,日本企業や政府関係者が設備投資に関して「三つの思い込み」にとらわれているのが気がかりだ。

 まず「製造業はものづくり」という思い込みである。第4次産業革命の時代には日本企業は多様な顧客の満足度を上げるためにビッグデータに基づき様々なソリューションを提供していくことが重要である。その際,ハードを提供するのか,ソフトを提供するのかはソリューションの具体例に過ぎない。製造業だからハードを提供しなければならないとかサービス業だからソフトしか提供できないとかいった固定観念は今後の事業機会を逸するものとして捨て去る必要がある。

 二番目に「設備投資=有形固定資産」との思い込みだ。OECD(経済協力開発機構)は高い経済成長と生産性を達成するには有形資産よりもソフトウェアや研究開発やデザインなど無形の知識資産の方が不可欠であることを指摘している。第4次産業革命においては無形資産である様々なデータが事業遂行において不可欠な資産となるため,日本企業は無形資産への投資を加速させねばならない。

 最後に「設備投資は日本企業が行う」との思い込みだ。モビリティサービス(MaaS)など日本企業にとって不得意な事業分野があることは確かだ。その場合,日本企業はゼロから組み立てるのではなく,これらの事業分野を得意とする外国企業と連携する方が望ましい。また政府や地方自治体等は日本企業が外国企業と連携しやすくするために彼らを国内誘致するといった視点も必要ではないだろうか。

関連記事

福田佳之

国際ビジネス

日本

最新のコラム