世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1314

中国メーカー傘下でプロトンの再生は可能か

石川幸一

(亜細亜大学 教授)

2019.03.18

 マレーシアの国民車メーカーは経営不振から,2017年6月に中国の自動車メーカー浙江吉利控股集団(吉利)の出資を受け入れ,経営再建を進めている(注1)。1983年に当時のマハティール首相の肝いりで設立されたプロトン社は60%を超える市場シェアを誇っていた。しかし,2000年代からシェアは低落し2018年には10.8%にまで低下した。

 長期低落の要因は,第2国民車プロドゥアの参入(1994年)とAFTAによるASEANの貿易自由化である。ダイハツが出資しているプロドゥアの市場シェアは,2006年にプロトンを追い抜き,2018年は40%を超えた。マレーシアは自動車の保護を続けていたが,2004年に自動車をAFTAの関税撤廃対象品目(IL)とし,2006年に自動車関税を5%以下に引下げ,2010年には撤廃した。

 マレーシア政府はプロトン再建に向けて資金供与を行う条件として外国メーカーとの提携を条件とした。プジョーなど数社の候補から選ばれた吉利は販売台数で中国7位の民営自動車メーカーであり,2010年にボルボを買収するなど海外展開に積極的である。吉利はプロトンの株式の49.9%を取得し,李春栄氏をCEOとして派遣した。

 プロトンは吉利主導で経営再建に乗り出した。2018年2月に発表された事業発展10年計画では,生産台数を10年で40万台,国内市場シェアを30%に引き上げ,ASEAN市場でのシェアを10%にする。部品調達コストを3割削減し,輸出比率を25〜30%に高めるなど野心的な目標を掲げている。2018年8月にはプロトン車を中国で生産販売するために吉利とプロトンの合弁企業設立協定を結んだ。

 2018年12月には,プロトンは吉利のSUV「博越」をベースにしたX70の販売を開始した。当初は中国から輸入するが,2019年後半からマレーシアのプロトンの工場で生産する計画である。プロトンによると,9月に予約が開始され,すでに1万を超える注文が入っている。

 プロトン社のプレス・リリースによると,プロトンの1月の登録台数は7,007台で市場シェアは14.5%に上昇したと推測されている(注2)。12月に市場に投入したX70の1月の登録台数は2,777台である。プロトン社の2019年1月の販売台数は前月比33.5%増,前年同月比46.5%と極めて好調だった。

 わずか1か月の実績で速断はできないが,少なくとも吉利によるプロトンの経営再建は順調に滑り出したことは確かである。吉利によるプロトン再建が成功すれば,日本メーカーの牙城であるASEANに中国自動車メーカーが本格的に参入することになり,ASEANにおけるにおける一帯一路構想の成功事例ともなるだろう。

[注]

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