世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1124

新元号ニッポンを失速させない4つのイノベーション

市川周

(白馬会議運営委員会 事務局代表)

2018.08.06

 新元号のスタートで日本に「新しい時代」が始まるだろうか? どうもその勢いに欠ける気がする。戦後発展の行きづまりなのか,平成の疲れなのか,今,この国には従来の発想や仕組みを突き破る新たなイノベーションが求められている。今秋の白馬会議では,そのクリティカルな舞台として,組織・防衛・財政・技術の4つの分野に注目し,それぞれに立ちはだかる「壁」突破のイノベーションについて4名の基調報告者を招いて白熱討議を展開する。

 先ず組織だ。イノベーションの源泉であり,現場であるべき日本の組織がおかしい。立て続けに発覚する大手企業を中心とした不祥事の渦は霞が関・永田町を巻き込み,スポーツ団体,地方金融等,様々な領域の組織に波及し続けている。戦後発展の原動力になって来た「日本型組織」の病巣をえぐると,“忖度・改竄・隠蔽”の三重和音が聞こえて来る。ではこの宿痾を組織から追い出すにはどうするか? 防衛大学校で試みた旧日本軍における組織不条理の研究に米国型経営理論を重ねる菊澤研宗氏(慶應義塾大学商学部教授)が,組織メンバーの自律的な価値判断を引き出す哲学的マネジメントにこそ,組織疲労の加齢臭を吹き飛ばすイノベーションの突破口があると提起する。

 次は防衛,安全保障だ。観念論や抽象論を廃して,ずばり自衛隊とは何かを問う。それは言うまでもなく,日本国民を軍事的災害(外国軍の侵略)と大規模自然災害から守る存在である。その自衛隊を憲法9条に明記する議論が出ているが,果たして自衛隊の「防衛力」はこの国を守るのに十分なものなのか? イラク日報問題で揺れたシビリアンコントロールはほんとに信頼できるのか? 名実ともに“日本を守れる”自衛隊に今問われるイノベーションついて,矢野義昭氏(東京工業大学客員講師/元第一師団副師団長兼練馬駐屯地司令・陸将補)が普通の民間人のわかる言葉で,自衛隊の実像と国民的課題を語る。

 そして国家財政だ。日本のイノベーションの背骨であることは誰も否定しない。只,それが未曽有な危機状況にあることについてはもう諦めたのか,声高に警告を発する経済学者が少なくなった。小黒一正氏(法政大学経済学部教授・元財務省財務総合政策研究所主任研究官)は別格だ。日本は150年前の明治維新から約80年後に1945年の敗戦を迎えた。そこから80年後の2025年,このままいけば財政破綻という“第二の敗戦”を迎えざるを得ないとする小黒氏は,医療費支出における年金型マクロ経済スライドの導入等,財務省脱藩の経済学者ならではの大胆な提案を提起する。

 四つ目は,イノベーションの推進軸たる日本の技術力。30年前中国の10倍あった日本の研究開発費は2015年実績で17兆円と中国の42兆円に大きく水をあけられ,「3年後に実用化技術を目指す……」という新聞報道の99%が実現されず,安倍政権肝煎りの大型研究開発プロジェクトも迷走する中,現場若手研究者の8割が日本の科学技術競争力は低下したと感じている。このまま日本は“技術劣国化”の坂道を転げ落ちるのか? 信州大学で最先端研究に注力する鶴岡秀志氏(信州大学カーボン科学研究所特任教授)は,工学部の「理学部化」批判,技術立国の宣伝営業力強化,知財のブラックボックス化,「破壊的イノベーション」への挑戦と大胆な奇策を繰り出す。

 「西のダボス,東の白馬」という遠大な志のもと始まった,今年11回目の白馬会議は11月17〜18日開催。企画詳細は白馬会議ホームページご参照。

関連記事

市川 周

国際経済

国際ビジネス

国際政治

国内

科学技術

日本

最新のコラム