世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1086

MaaS(モビリティサービス)を担う次世代自動車産業の姿とは

福田佳之

((株)東レ経営研究所 シニアエコノミスト)

2018.05.28

移動を「サービス」として事業展開へ

 クルマなどの移動手段をモノ売りするのではなく,移動を「サービス」として事業展開するMaaS(モビリティサービス: Mobility as a Service)が脚光を浴びている。ITなど自動車とは異なる業種の企業が活発に動いており,自動車メーカーも追随せざるを得ない状況だ。

 MaaSには,配車,カーシェア,ライドシェアなどがあり,それぞれウーバーや滴滴出行などベンチャー企業等が手掛けていて自動車メーカーやIT企業が出資している。

 こうした移動のサービスが注目を集めている背景として,ドライバーなどの人手不足や高齢者など交通弱者の増大による移動ニーズの高まりに加えて,スマートフォンのアプリと高速通信を使ってユーザーと自動車のスムーズなマッチングが実現したことが大きい。

日本勢はMaaSに出遅れ

 日本の自動車メーカーのMaaSに対する姿勢を見ると,最近になって注力し始めたとはいえ,お世辞にも前向きとは言い難い。一方,欧米の自動車メーカーは,日本勢よりも積極果敢にMaaSの事業化に取り組んでいる。

 MaaSの普及はクルマの保有台数や販売台数を減らす効果を持つ。欧米の自動車メーカーはその影響を真剣に受け止め,販売減少分を補うべくMaaSの事業化にも打って出ていると言える。一方,日本の自動車メーカーはこれまで高齢化による購買層の拡大等で収益を拡大させることができた分,その影響に気付くのに,また気付いても手を打つのに遅れてしまったのではないか。

今後はモビリティ統合の動き

 今後のMaaSの展開について,さまざまな移動手段であるモビリティが統合され,ユーザーの置かれたT(Time:時刻)P(Place:場所)O(Object:目的)に応じて最適な移動サービスが随時提供されていくようになるだろう。ユーザーは目的や交通環境等に対応してスマートフォン上で電車,バス,ライドシェア車,自転車等のさまざまな移動手段の組み合わせを選択できる。2030年以降は自動運転車がこの組み合わせの中に加わる。これらのサービスはモビリティを統合するプラットフォーマーによって提案・手配される。一方,自動車などのメーカーはユーザーとの接点を失い,プラットフォーマーに移動手段を提供する下請けとなってしまう。現在,欧州,中でもフィンランドでモビリティ統合を志向する動きが出てきており,国内でもJR東日本が企業間連携しながら研究を進めている。

電力調整サービスに電気自動車を活用

 別の展開として,今後,クルマが移動以外のサービスを提供する可能性がある。例えば,クルマ,なかでも電気自動車に搭載した大量の蓄電池を電力の需給調整に活用することが考えられる。今後,世界では太陽光や風力など再生可能エネルギーの普及が見込まれているものの,これらのエネルギーは化石燃料とは異なって安定した電力供給を行うことは難しい。今後は火力や原子力に頼れないため,電力過剰・不足時に吸収・供給する蓄電池が不可欠だ。経済産業省が2015年に発表した2030年度の太陽光と風力の発電量見通し(1,000万KWh超)をカバーするためには蓄電池容量が10〜40KWhの電気自動車が25〜100万台あればよい。もちろん,蓄電池の繰り返し利用による劣化問題の解決や電力網につなげるための規制改革が必要である。

 電気自動車を電力の需給調整サービスの出し手として活用することができれば,MaaSと複合した事業展開も可能となる。地域交通の維持という社会的課題を新しいクルマのサービスで解決できるかもしれない。過疎地など地域においてバスなど交通手段の確保が求められているが,もともとユーザーが少なく,採算に乗りづらい。そこで電力調整サービスとセットすることで地域で自動運転によるMaaSが事業展開できるようになるのではないだろうか。

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