世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.808

トランプ政権の神髄:守りでなく攻め,保護主義でなく帝国主義

武者陵司

(武者リサーチ 代表)

2017.03.06

 そろそろ「弱体化する米国経済の下で不満が高まりポピュリスト政権が誕生した」というステレオタイプ化した考え方を改めるべきではないか。トランプ政権の神髄は「弱いアメリカ➡守り・保護主義」ではなく,覇権国アメリカを強化するという攻撃性にある。彼が横暴に見えるのはその攻撃性があからさまだからであろう。「オバマ政権の8年間に,世界はより危険になり,米国の経済軍事的プレゼンスは大きく低下した。そのしわ寄せが米国国内雇用にも及んでいるとすれば,その枠組みを力づくで変えなければならない」という強い経済と強い武力に対する信奉,トランプ政権の目指すところは,アメリカ帝国の再構築という表現がふさわしいのではないか。

 米国経済のファンダメンタルズは健全性で,失業率+インフレ率で示される悲惨指数は過去最低である。プアホワイトに対するしわ寄せはあるものの米国全体ではほぼ完全雇用,加えて過去必ずリセッションの引き金となってきたインフレが抑制されている。ということは,景気拡大が当分途切れないということである。また経済活力の源泉である,企業における価値創造はインターネット革命によって過去最高水準にあり,競争力も絶大である。加えて貯蓄は潤沢,財政も健全であり,様々な政策的選択肢を可能にしている。

 その条件の下でトランプ氏は米国第一を掲げて攻めに出ている。政策は粗雑だが米国の政治経済・軍事・文化面での優越性に対する自信をあからさまにして「国民国家」米国が,軍事力増強,米国優先の通商基盤の構築など,国際秩序の再構築を狙っている。

 これぞアメリカ帝国の再構築ではないか。現代の帝国は植民地支配ではなく,国境の外に強い影響力を確保することで国益を追求する明示的な国家戦略であり,帝国の中枢地域が価値観・経済力・軍事力で劣位にある辺境・周辺に対して一方的影響力を持つことが正当であるという論理である。トランプ氏は明確に米国の優越性を認識し,強化しようとしている。それはオバマ政権による世界の警察官から降りた米国像と対極にある。

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