世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.4025
世界経済評論IMPACT No.4025

高市総裁実現に見る自民党の強靭性

坂本正弘

(日本国際フォーラム 上席研究員)

2025.10.06

 自民党は,10月4日の総裁選で,事前の予想に反して,高市早苗氏が小泉進次郎氏を破った。初めての女性総裁が選出された。

 総裁選には,5人が立候補し,国会議員票295票,一般党員票295票を争った。第一回投票では,高市183,小泉164,林134,小林59,茂木49であった。高市氏の優位は一般党員票119票で(小泉84,林62),国会議員票では64票と小泉80票,林72票に及ばなかった。

 この状況は,昨年の総裁選の経過に類似する。第一回投票では高市氏が第一位,第二位石破氏だったが,その主因は,高市氏の一般党員票での優位であった。しかし,決選投票では石破氏が,国会議員票をかき集めて,優位となり,総裁の席を獲得した。この状況を踏まえ,今回の総裁選挙でも,高市氏が第一位となるものの,国会議員票の多い小泉氏が,決選投票では,他の候補者の支持票をも獲得し,新総裁に選出されるというのが,多くの専門家の予測であった。なお,決選投票は国会議員票295に対し,一般党員票に当たる都道府県票が47に低下するのも,小泉氏優位の論拠であった。

 しかし,今回の決選投票では,高市氏185に対し,小泉氏156の結果となった。高市氏が,国会議員票でも149と小泉氏の145を上回り,都道府県票での36対11の優位で勝利した。問題はいかにして高市氏は国会議員票でも小泉氏を上回れたかである。一回目投票での国会議員票は,高市氏64票だったので,決選投票での149に達するには85票の獲得が必要である。小泉氏の145票は一回目投票の80票に65票が加わったことを示す。これは,林,小林,茂木氏の第一回投票の72,44,34の計150票が,高市氏に85票,小泉氏に65票流れた結果と推察できるが,この事態は,多くの識者予想の,小泉優位を大きく覆えすものであった。

 このような状況に関し,麻生副総裁が,陰に高市氏支持を打ち出したとか,保守・小林氏の票の流れの影響の指摘があるが,それ以上である。最大の原因は,この一年,衆議院,都議選,参院選と3つの選挙を失った危機感が,特に地方に強いという。この危機への対応で,「若さ」か,保守か,の選択だったとの意見もあるが,ぶれず,改革を述べた高市氏の勝利となった。

 以上の中で,筆者が,改めて感じるのは,自民党の危機意識と再生への強い意志である。

 危機に臨んだ時の,自民党の強靭性が女性総裁の選出となった。今後の政局は,困難と変動が予想されるが,この強靭性は今後も自民党を支えよう。

 筆者が,高市総裁に,特に,期待したいのは憲法9条改正による国軍創設である。憲法は国家の最高法規であるが,通常の日本語では自衛隊は憲法違反である。かかる状況を是正し,日本の生存に必須の国防戦略を自由に策定する必要があることを改めて強調したい。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article4025.html)

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