世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
日本のODAのあり方を考える
(静岡県立大学国際関係学部 講師)
2024.08.05
日本の政府開発援助(ODA)が開始されて,今年2024年で70年を迎える。1954年にコロンボ・プランに加盟して,技術協力を開始した年であり,資金援助の始まりとなるミャンマーへの戦後賠償と経済協力に関する協定が結ばれた年でもある。2024年は日本のODAの節目の年に当たるので,ODAについて中国との関連で述べていきたい。
最初に,日本のODAの現状について簡単に触れる。2023年版開発協力白書によると,ODAは二国間援助と多国間援助(国際機関への拠出・出資)の2つがあり,日本のODAは二国間援助が全体の88%を占める。二国間援助は大きく分けて,贈与と政府貸付の借款からなり,日本の二国間援助は円借款の比率が高く,二国間援助に占める割合は約71%である。さらに,日本の二国間ODAのうち,経済インフラ(輸送,通信,電力など)が占める割合は約44.4%と高い。支援地域はアジアが全体の56%と最も高い。
これらの日本のODAの特徴は,中国の対外援助の特徴でもある。つまり,日本と中国は開発援助の世界でも,似たもの同士としてアジアの主導権争いでしのぎを削っているのである。しかし,日本がこの争いのなかで,中国に対抗するような姿勢で挑むのには違和感を禁じ得ない。例えば,日本は中国の後追いをするかのように,かつてはアンタイドであったODAが本邦技術活用条件(STEP)という名でタイド化に逆戻りしている。安全保障と経済が密接関連している今,中国を意識して対抗するがあまり,過去に回帰するのはあまりに無策であり,創造的ではない。
経済学的側面からみれば,開発協力の分野が中国などの新興国の台頭により競争的になった。この変化の中で,日本の存在感を発揮するには差別化が必要である。中国の真似や後追いでは埋没するばかりである。差別化のときに,重要なことは日本の得意分野,特に中国と比較して得意な分野に援助の重点を移すことである。つまり,中国と棲み分けをすることである。
その際に,考えられる具体策は,NPOやNGOなどの活用と教育分野への支援強化である。中国においては,国内でNPOやNGOの活動は非常に制限されているため,中国のNPOやNGOは開発協力の分野で存在感が薄い。さらに,貧困層へのインパクトが大きいのが教育である。教育の重要性は論を待たないが,教育への支援は目立たないので,一般的には注目されていない。中国の援助は「一帯一路」に代表されるように,経済インフラ中心である。しかも,中国よりも長い日本のこれまでの蓄積された経験・知識の活用した地道な支援の継続により,支援国の教育水準が向上すれば,それは,途上国の生活水準の向上に直結する。支援分野や金額で競うのではなく,貧困削減や経済発展のインパクトで差別化すべきである。
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