世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.3233
世界経済評論IMPACT No.3233

IMF融資からみたバングラデシュの現状と今後の課題

川島 哲

(金沢星稜大学経済学部 教授)

2023.12.25

 IMFによれば,2023年12月12日IMF理事会はバングラデシュに対して42か月の延長信用制度(Extended Credit Facility:ECF)及び延長基金制度(EFF)協定に基づく最初の審査を完了した。このIMF理事会に先立ち2023年10月19日のIMF延長信用制度,延長基金制度,強靱性・持続可能性制度に基づく最初の見直しに関してIMF事務レベルの合意に達していた。IMFとバングラデシュとの2023年第4条協議を終了した。2023年1月末に承認され,即時払い込みとして約4億6,830万ドルの融資が行われたこのプログラムで,初回レビューの完了は2回目の払い込み(約6億8,980万ドル)の承認を意味し,これによって累計約11億5,810億ドル(総融資額の約25%)の払い込みが実行される(注1)。短期的なマクロ経済の安定を回復するには,中立的な財政政策に支えられたさらなる金融引き締めと為替レートの柔軟性の向上が必要であると指摘している。さらにIMFプログラムは,経済改革を加速し,気候変動問題を達成しながら,マクロ経済の安定を維持し,弱者を保護する当局の取り組みを引き続き支援していくものであるとしている。第4条政策協議は,社会及び開発支出のための追加の財政余地を創出するための改革に焦点を当てた(注2)。

 それでは以下にバングラデシュの現状とその課題について記述する。

 寺島(2023)によれば,主要産業の縫製業の輸出は世界的な競争力を有しているものの,輸出を上回る輸入拡大により,慢性的な貿易赤字が起きている。それを国外就労者からの郷里送金で補填しているという構造となっているのが現状である。同国の市場規模や豊富な人口,低廉な人件費などが評価される一方で,為替変動や,原材料の現地調達の難しさ,電力不足・停電などのリスクも多い(注3)。それに加え,ジェトロ(2023)によれば,外貨需要に対応する目的で本年9月までに外貨準備から31億7,000万ドルを切り崩しドル売り介入を継続している。前年同期の市場介入(35億6,000万ドル)との比較においては減少しているものの,依然として通貨タカ安を抑制する為替制度に大きな変更はみられず,外貨準備の減少に直結している(注4)。これらの不安要因は持続可能かつ政局の安定が脅かされる要因となる危険性がある。第12次総選挙が2024年1月7日に予定されており,これら諸問題にいかに対処していくかが現政権の喫緊の課題となっている。さらに,前回の本コラムでも触れたが,現時点(2023年12月19日現在)で3回会合が行われた2026年を見据えた日本とのEPA交渉(「あり得べき日・バングラデシュ経済連携協定(EPA)に関する共同研究」)や今後望まれるRCEPなどへの参加といった経済連携強化に向けた通商政策の構築も課題である。それに加え,現在バングラデシュの経済成長は主にダッカ管区とチョットグラム管区に集中しており,他地区は成長促進に不可欠な物理的及び社会的インフラの不足によって遅れていると指摘されている。ADB(アジア開発銀行)が2023年6月提案した「バングラデシュ経済回廊開発ハイライト(Bangladesh Economic Corridor Development Highlights)」(BEC)構想(注5)は,バングラデシュ北東部と南西部の経済的潜在力を評価し,包括的かつ持続可能な開発を達成するため,同地域の総合的開発を提案することを目的に,産業,交通,社会インフラに取り組み,バランスの取れた分散型開発を目指すものであり,この具体化についても注視していきたい。

[注]
(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article3233.html)

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