世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.3219
世界経済評論IMPACT No.3219

2024年米国大統領選挙,正式スタート間近

鷲尾友春

(関西学院大学 フェロー)

2023.12.11

 米国大統領選挙の共和党候補選びがアイオワ州党員大会(2024年1月15日)を“皮切り”に始まろうとしている。

 世論調査で,常に他候補を圧倒しているトランプ前大統領は,去る11月18日に開催された決起集会において,「アイオワで圧勝し,その後のレースに競合相手が立てない状況をいち早く創り,7月の共和党大会を待たずに実質上の共和党候補となることを目指す」とし「その時点から先は,現職のバイデン大統領との戦いに専念し,11月の選挙で大統領に返り咲く」というシナリオを明示した。

 同時にトランプ候補の選挙レトリックにも,大統領時代の己の実績を強調するトーンが益々鮮明になってきた。例えば,民主党が慣例であるアイオワやニューハンプシャーでの予備選を皮切りとせず,バイデン大統領が20年の予備選で勝利する切掛けとなったサウスカロライナに最初の予備選をセットしたのを皮肉って,「私はこれまで通りアイオワ州を最初の党員大会開催州にした。アイオワ州の皆さんは私を共和党の揺るぎない候補の座に据えて欲しい」と語り,併せて,同州経済にとって重要なエタノールを,今後の燃料源として重視する姿勢を鮮明にした。そして,自身が大統領だったとき,同州の農業に280億ドルの連邦予算を注ぎ込んだ実績を強調,その財源が中国に課した輸入関税だったと自身の手腕を協調した。

 共和党の他の候補にとっても,戦いの緒戦となるアイオワ州の重要性が益々高まっている「アイオワ州で,踏ん張らねば先行馬であるトランプに引き離されるだけ」,そんな切迫感が,デサンティスやニッキー・ヘイリー女史の陣営に漂っている。既に,何人かの共和党候補はレースから離脱し,クリスティー元ニュージャージ州知事にもレースからの撤退を迫る圧力が高まっている。共和党内では現状,デサンティスとヘイリーの二人がトランプの対抗馬として,かろうじて残っているのが実態だろう。そして,アイオワ党員大会の結果如何では共和党候補レースの大勢が早々に決まってしまう可能性も大きい。

 デサンティス陣営では選挙対策委員長である大口献金主が,対策本部内の意見対立で辞任し,この期に及んで体制建て直しを迫られるなど混乱が続いている。その彼にとってのグッド・ニュースは,キム・レイノルズアイオワ州知事が,中立姿勢を捨て,デサンティス支持を公言してくれたことだ。

 一方のヘイリー候補は,減税・歳出削減主張に賛同する米国の財界大物(JP Morgan Chase の会長やHome-Depotの創業者など)がトランプへの嫌悪感からか,彼女への資金提供を次々と申し出ているという。これについてNYT紙(11月24日付)は,「ある種の絶望からのもので,財界の面々もヘイリーは今のままではトランプに勝てないと考えている。だが財界がヘイリー女史をViableな代替候補と見做しているとの印象が,共和党支持者に広まれば,トランプに勝てるかもしれない。一縷の望みをかけて…」と解説している。

 アイオワ州での2位争いは,「自分とトランプの二人ゲームだ」と主張し続けていたデサンティスを窮地に追い込んでいる。アイオワ後の1月22日に予備選を控えるニューハンプシャー州では,直近の州内世論調査でデサンティスは5位に甘んじており(ヘイリー候補は2位),デサンティス支持の勢いは失速状態だ。

 デサンティス陣営は,ニューハンプシャーでの劣位をリカバーするため,次のネバダ州党員大会(2月8日)に続くヘイリー女史のお膝元・サウスカロライナ州予備選開催(2月24日)で,大枚の選挙資金を注ぎ込んで,ヘイリー追い落としの選挙キャンペーンを張らざるをえなくなった。共和党内での2位争いは断トツの首位トランプ陣営を傷つけるどころか,むしろ利する構図となっている。トランプ陣営の幹部は「最初の敗者を決める戦いだ」とデサンティス,ヘイリーの争いを揶揄して見せた(NYT紙11月27日)。

 追い詰められ観のあるデサンティス陣営だが,死中に活を求める変則的戦術に出た。それは,Red Stateであるフロリダの州知事として,Blue Stateのカリフォルニアのニューサム州知事とTV討論するというもので11月30日に実施された。

 両州の政治風土は,移民や人工中絶への姿勢,コロナ対策,規制緩和姿勢など,いずれも際だった違いを見せており,それ故,TV討論を企画したFox Newsは,政策の違いを,現状の米国社会の分断に照らし合わせて,両州知事に討論させようとしたもの。

 ニューサム知事は,民主党リベラル派として28年の大統領選挙に出馬すると観られているが,全国的に名を売る目的からか,保守マスコミの牙城であるFox Newsにこれまでも何度か登場した実績がある。それ故,Fox News が仕掛けたフロリダ VS カリフォルニアの州知事討論に,デサンティスの相手役として登壇することに同意したもの。

 一方のデサンティスは,これまで共和党内の討論でトランプと直接対峙する機会がないまま今に至っている。そんな彼にとって,自らの若さ(デサンティス45歳,ニューサム56歳)を,バイデン大統領(81歳)とトランプ前大統領(77歳)と対比させる良い機会とばかりに,Fox News の企画に飛びついたのだろう。

 NYT紙は,Fox Newsの裏の思惑を,「デサンティス知事がバイデン大統領を擁護するニューサム知事を討論で論破すれば,自ずとバイデン政権の実績が如何にまやかしものであるかを,共和党保守派有権者の前で明らかに出来る」と踏んでいた,と解説する(同紙12月1日付け)。

 だが,Fox Newsの思惑はニューサム知事の奮戦で期待どおりにはならなかった。ニューサム知事は,トランプ支持者の間では悪いと思われている米国経済が,実は失業率の点からも,経済成長率の点からも,そして所得上昇率の点からも,むしろ良いのだと,バイデノミクスの成果を共和党内保守派有権者に直接吹き込んだからだ。そもそも,共和党の今なおトランプの圧倒的な優勢,という状況に,バイデンの選挙参謀たちはどう対応していたのか,或は今後,どう対応しようとするのか…。

 内実を知る立場にない外野席の筆者は,探偵小説の作者にでもなったつもりで,米国のマスコミやアメリカ人専門家の解説に,自分なりの憶測を加え大まかな戦略シナリオらしきものを描き出して見たいと思うのだ。

 これまでバイデン陣営は,共和党の候補者同士のやり取りに対し「他党内の争いである」と静観を決め込んでいた。

 従い,トランプの数多くの裁判案件にもノー・コメントを決め込み,トランプがそれら訴訟を,「自分を対象にした,バイデン政権の魔女狩りだ」と批判しても,柳に風と聞き流していた。下手に反論などしようものなら,反ってトランプを利すると判断したからだ。

 つまり,トランプが何か言えば,それが直ぐにマスコミに流れる,そんな風潮を断ち切りたかったのだ。言い換えると,バイデン陣営のその姿勢は,「トランプは既に過去の人物だ」と切り捨てるもので,マスコミにも「意味のない人物のフォローに時間を割くな」と苦情すら申し入れたほどだ。

 だが,トランプが共和党内での候補選びの範疇を超えて,バイデン・トランプの直接対峙のフレームで語られ始め,しかもトランプ優勢という状況(例えば,最近のNYTとSienna College共同世論調査では,アリゾナ,ジョージア,ミシガン,ネバダ,ペンシルバニアといった,本番選挙で重要な州で,バイデン大統領はトランプ候補の後塵を拝する結果となった)が出始めると,もはやトランプを無視し続けることも出来なくなってしまう。

 勿論,バイデン陣営内には,トランプとの対峙が不可避となれば,民主党系の有権者は,積極・消極の差こそあれ本番選挙ではトランプよりはバイデンを選ぶはず,とみる向きもある。

 一方,トランプの方も現状,共和党候補の座を得ることに専念しており,多くの裁判を抱えている事情もあって,バイデン相手の本格的な選挙戦を展開するには至っていない。だが,今後両者が本格的に対立する局面になれば,トランプのバイデン攻撃は今の比でなくなることは自明だ。

 こうした中,最近,バイデン選挙対策陣営が従来と違った戦略を取り始めたように見える。それは,来るべき大統領選挙を,バイデンへの信任投票というより,「トランプを大統領に帰り咲かせるべきか否か」の信任投票にしようとするものだ。バイデン陣営では,大手マスコミに,もっとトランプの言動を報じるよう要請し始めたという。トランプの言動を知れば知るほど,彼がいかに民主主義にとって有害かわかり,中立層有権者の嫌トランプ感情が盛り上がる,との見立てからである。

 尤も,この戦略の弱点は,既にトランプを見限っている層には,何のアピール力もないことだ。他方,一度はトランプを見限ったものの,バイデン政権へ不満を高める有権者層にとってもトランプの過激な言動は「彼は言っているだけ。実際には実行には移さないだろう」と見做しがち(NYT紙11月21日)だからである。

 こうした状況下,トランプ支持の熱量は確実に下がっているとの指摘も散見され始めている。グーグル・サーチによれば,4年前,トランプが現職として再選を狙っていた頃と比べ,現状,有権者の彼への関心は相当下がっているという。また,CNNの視聴者調査でも,トランプのタウン・ミーティングの視聴率はなお高いものの,現職時の前回選挙時の同様なイベントと比べると,視聴者の関心の低下は明らかだという(それこそが現職とそうでない立場の違いで,これをもって視聴者の関心の低下と断じてしまうべきではないとの指摘もある)。

 少し脇道にそれた議論を持ち込んでみたい。それは,共和党のジョンソン下院議長が,これまで民主党のペロシ議長が拒否し,後任の共和党マッケンジー議長が下院建物内での対面閲覧しか認めなかった2021年1月6日の連邦議会乱入時のカメラ映像を一定期間オンラインで全面公開することに踏み切った件についてである。

 民主党は,トランプ側による歴史改ざんを許すことになるとの立場から公開に反対し,共和党穏健派は,議事堂内部の詳細情報拡散に対するセキュリティー上の懸念から公開を反対していた。

 ジョンソン議長が,反対を押し切り映像の公開に敢えて踏み切ったのは,大凡次のような理由だという。債務上限枠の壁による連邦政府閉鎖を回避するため,同議長が,下院民主党の支持を背景に,自らも属していた党内のFreedom Focusの反対を押し切り債務上限枠拡大立法を成立させた。一方,同議長は,議長選出馬に臨んで,この画像公開をFreedom Focusの仲間たちに,己への支持と引き換えに約束していたとされ,債務上限枠拡大に反発するFocus議員ら宥める目的もあり,映像を公開したとされる。

 しかし,これもバイデン選対が選挙戦略を変更し,トランプ絡みの詳細情報をもっと社会に流布させるため,敢えてジョンソン議長による債務上限枠拡大法成立を支持したのではないかと筆者は見ている。ジョンソン議長もバイデン選対の方針変更を嗅ぎ取って,民主党側の反対はないと踏んだのだろう。そして己の決断に対する共和党内身からの反発を和らげるため,映像を公開し身内の不満を解消する措置をとったではないか。バイデン政権が,映像をさらなりトランプ批判に使おうと,或は逆に,共和党保守派がトランプ擁護のために使おうと勝手。下院議長の立場からは,議事運営のスムーズさこそが最優先,というわけだ。ジョンソン議長については,これまでのイメージ(ドグマに凝り固まった右派)と違って,同議長が今やプラグマティックな議会指導者に変貌しつつあるように思われる。尤も,その変貌の途は,Freedom Focus所属の議員たちの態度硬化で結構険しそうではあるが…。

 ここで問題にしたいのは,映像公開に関数議長決定が,共和党右派の思惑と異なって,トランプ陣営に不利に働くとの,米国のリスク情報会社ユーラシア・グループの見方がある点だ。事実,NYT紙(11月23日)では,この画像が公表されるや,共和党右派議員の何人かが,「画像に連邦政府の人間が映り込んでおり,彼らが平和裏のデモを扇動し議会乱入に導いた」と主張していたが,画像解析の結果,それら連邦政府側と黙された人物は暴徒の一人にすぎなかったことや,或いは,日ごろから警察に情報を提供している犯罪組織が情報源であったことが判明したで,トランプ支持派が主張するような,「陰で連邦政府が糸を引いていた」とは言い難い実態が明白になってきている。

 バイデンの選挙陣営は,トランプ無視から,彼の言動を注視・問題視するする方向へと,明らかに軌道を変えたと思われるが,同時に「トランプ返り咲きは,民主主義社会にとっては危険」のメッセージが,バイデン陣営から一気に表に流れ始めている。

 各種世論調査によると,有権者の4割が「トランプは民主主義にとって悪」だとの認識に至っている(NYT紙11月21日)そうだが,バイデン陣営は,愈々本格的にその点を堀下げようとしているのだ。バイデン大統領は12月4日,ボストンの資金集めの集会で,「トランプは米国の民主主義社会の存続すら危うくする存在であり,その脅威に立ち向かうために私は再選に立候補するのだ」と主張,併せて,「もしトランプが出馬しないのなら,私も出馬するかはわからない」とまで公言した(NYT紙12月5日)。己の年齢を気にしているバイデンの本音なのか,或は,選挙戦略に則って,トランプの民主社会にとっての危険性を強調するレトリックなのか,筆者としては大いに関心がある処だ。

 視点を変えると,米国の有権者は,大きくは性格を異にする2つの課題に相矛盾する態度を示しがちと言えよう。その2つとは,①民主主義や中絶の是非といった価値観に関する質問と,②経済や賃金,物価といった生活の身の回りの諸問題だ。この2つを別々に突きつけられると,多くの有権者は民主主義を大事と思い,同時に経済も大事と考える。だが,2つを同時に突きつけられると,多くは後者を選びがちだ。そこで思い出すのは,筆者がニューヨークに駐在していたときの,1992年の大統領選挙である。あの時,第一次湾岸戦争でサダム・フセインのクエート侵攻を阻止したブッシュ(父親)大統領は,米国が安全保障という,民主主義の基礎を護った,と本心から思ったはず。

 そんな状況で迎えたブッシュ再選の大統領選挙では,ブッシュ陣営は,有権者は当然,民主主義にとっての安全保障上の懸念を払拭し,大勝利を収めた大統領のイラク対策を成功実績として,投票判断の軸にするだろうと期待していた。ところが,実際の選挙の場では,有権者は身近な経済不安の方により大きな関心を寄せ,ブッシュ再選はならなかった。対立陣営だった民主党のアーカンソー州のクリントン知事の陣営が,It’s economy stupid(所詮は経済なんだよ)のスローガンの下,有権者の経済不安感を煽った戦術が成功したわけだ。当時,経済は既に回復の途を歩み始めていたのだが,有権者には未だ,その実感を得られず,亦,少しばかりの経済回復は高所得層のみを富ませ,貧者には恩恵が回ってこないと感じ,それが選挙による現職大統領敗退の結果をもたらしたのだった。そして今回も,バイデノミクスによって,米国経済は回復したものの,其れ故インフレも発生して,有権者の懐を傷めている,そんなムードが米国内に蔓延している。

 色々と表面上の議論はあるだろうが,実態は真に,上記の①ウクライナやガザでの民主主義の問題よりも,②人々の懐具合の方に有権者の関心が向いてわけで,あるいは1992年選挙時の再現ではないかと筆者には思えてしまうのだ。

 来年になると,米国経済に減速感がはっきり出てくるのではないか…。今年のクリスマス商戦の成り行きも案じられる。最近の消費動向調査でも,例えば回答者の17%が学生ローンの支払い再開に悩まされていると答えている。賃金上昇率も鈍化し始めている。失業率もやや上昇気味である等など…。しかし現実には,経済実態は未だ悲観的レベルにまで落ち込んではいない。だが選挙に際しての真の決定要因は,1992年選挙が示すように,実態ではなく有権者のムードなのだ。バイデン陣営の最も懸念すべき点と言えよう。逆にトランプ候補が己の大統領時代の米国経済がバラ色だった話を常に誇張気味に持ち出すのも,バイデノミクスの不成功を強調したい,或いはバイデノミクスの成果を否定することで有権者にグルーミーな気持ちを持たせたい,そうした戦術願望の裏返しなのだ。言い換えると,トランプには今こそが“It’s economy stupid”のスローガンを打ち出し有権者の関心を,あくまでも経済や物価に釘付けにしておきたいのだ。

 バイデン陣営がトランプを民主主義にとって悪と決めつけることへの対抗論として,「むしろバイデンこそが米国民主主義を破壊させる元凶,彼の政治は汚染にまみれ,米国社会を戦争に引きずり込む」と批判し返すのだ(NYT紙12月2日)。つまり,有権者が抱くトランプへの脅威観を同種の脅威観をバイデンに対し創り上げることで,相殺仕切れぬまでも、幾分かは減殺出来ることトランプは考えているのだろう。

 加えて,トランプのレトリックには,常に脅しの要素が混入されている。例えば,アイオワ州内での最近の演説では「2024年の選挙が終わったら,次の3都市(黒人居住者の多いデトロイト,フィラデルフィア,アトランタ)での選挙結果を見ればよい」と述べ,「これら都市を見れば,吾々はまるで第三世界に住んでいるかと見間違えるだろう」と…。アイオワの自然豊かな農村に住む,それ程豊かではない白人有権者に,そんな米国の,人種の混在した将来像を語れば,どんな気持ちになるだろうか…,そして大都市の混沌をもたらしたのは,民主党のバイデンだと聞かされれば…。

 この演説の場でトランプ候補はデサンティス候補への支持を明言した共和党のアイオワ州キム・レイノルズ知事を槍玉に挙げた。曰く「貴方たちの選んだ知事こそが,今や問題の種なのだ。彼女への人気は,私が大統領になれば凋落するだろう」と。

 これまでの多くの世論調査は,

  • ①有権者の4割がトランプ候補を嫌っている。彼の思考を民主主義にとって悪いものだと認識している。
  • ②バイデン大統領が高齢故に有権者からは敬遠されている。若者の支持が弱いこと,マイノリティーからの支持も強固ではないことなど,様々な問題点を抱えていることも判明している。
  • ③さらに,最近の連邦最高裁判決(中絶,学生ローン免除などへの)が,有権者,とりわけ女性有権者の間で如何に不評であるかも明らかになっている。
  • ④今のところ米国経済は,トランプ支持者が頭に描いているほど落ち込んではいない,むしろ相対尺度で見れば,経済の実態は良いこと。

 だから,有権者の間に見られる,上述の①~④の諸難点を,己の有利な方にイメージ変換出来れば,バイデン候補はトランプ候補を凌駕することが可能になるはずだ。

 バイデンの選挙対策陣営は,今,こうした課題に全速力で取り組み始めている。前述のような,「トランプは民衆の敵イメージの構築」,「若者やマイノリティー支持の強化に向けた対策」,「人工中絶問題を争点に仕上げる努力」,「米国経済の実態を周知させるための教宣」等など。そして,これらの取り組みに対し,28年の大統領選挙に出馬を狙うカリフォルニア州のニューサム知事や,或はミシガン州ウイットマー知事,或はイリノイ州ブリッカー知事など,民主党系知事を使う手も残されている。

 最後に一点,民主党が今一番警戒の眼で注視しているのが,バイデン選出に異議を申し立て,第3党を結成して大統領選挙に出馬するロバート・ケネディーやジョー・マンチン上院議員などだ。先の1992年大統領選挙でも,テキサスの大富豪ロス・ペローが第三党から出馬,ブッシュ大統領から共和党票の多くを奪い,其れがブッシュ惜敗の原因になったからだ。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article3219.html)

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