世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.3117
世界経済評論IMPACT No.3117

2025年開催第9回TICAD横浜会議への期待:最後のフロンティア開発へ日印協力の推進を

山崎恭平

(東北文化学園大学 名誉教授・国際貿易投資研究所 客員研究員)

2023.09.18

 日本のアフリカ開発協力を議論する国際会議TICAD(Tokyo International Conference on African Development)の次回第9回会議は,2025年に横浜市で開催されることが決まった。この国際会議は30年前の1993年に東京で始まり,第8回TICAD会議はロシアのウクライナ侵攻が始まった昨年の8月27日,28日にチュニジアの首都チュニスで開催された。世界は新型コロナのパンデミック,国際経済の分断,異常気象やロシアのウクライナ侵攻等の複合危機下にあり,こうした中で開催されるTICAD横浜会議の意義と期待に触れる。

「最後のフロンティア」アフリカ開発の意義

 グローバル・サウスの国々から成るアフリカは世界の「最後のフロンティア」であり,今後の開発に期待がかかる。広大な大陸に希少資源も多く,55か国・地域がしのぎを削り,現在約14億人の人口は2050年には25億人へと世界人口の4分の1を占めるようになると予測される。また,「人間の安全保障」やSDGsの観点から国際協力が求められる中で,今後開発が進めば大きな市場が形成される展望から,旧宗主国だけでなく多くの国が関心を示している。

 アフリカへの国際協力や貿易・投資等経済関係の主役は,旧宗主国や米国に加えて覇権的な海外進出を進める中国で,日本の存在感は小さい。しかし,日本はTICADを90年代初めに開始するなど早くからアフリカ開発協力に力を入れてきた。同様なアフリカ支援会議を開催する中国やEUは2000年,韓国は2006年,インドとトルコは2008年,米国2014年,ロシアは2019年以降の開催となっている。そして,中国は巨大経済圏構想の一帯一路政策(BRI)もあり支援額が大きく,またロシアは最近軍事支援が目立つ。

 日本のアフリカ支援は金額の大きさよりも,90年代にいち早くTICADを立ち上げた上に,支援や協力の進め方と内容に特色がある。TICADは世銀,国連,UNCTAD,そしてAU(アフリカ連合)の国際機関と共催し,アフリカに寄り添った協力や「質」を重視している。例えば,医療協力や人材育成,コメの生産協力等で実績を示し,現地では高い評価を得ている。互恵やWIN・WIN効果をうたう中国支援の実態は,なかなかその通りにならず,透明性を欠き,債務問題等でしばしば現地の反発が伝えられる。

日印両国のアフリカ開発協力推進に可能性

 日本がアフリカ開発協力を進める上で,躍進するインドとの協力協業の可能性が高まっている。特別な戦略的グローバルパートナーシップ関係に高まっている両国は,民主主義や法の支配等同じ価値観を有し,自由で開放的なインド太平洋構想(FOIP)を共有する。間もなく世界第3の大国に躍進すると見られるインドにとって,アフリカは帆船時代から交流の歴史があり,現在250万人と目される在外インド人が居住する印僑経済圏で,中国の覇権主義に抗し外交や経済関係の拡大で関係強化を図っている。インドの開発協力では近隣の南アジアに次ぐ供与相手で,企業の直接投資では日本以上の実績を誇る(注1)。

 ここに,アフリカ開発協力を進める日本との協力や三角協力を今後進める可能性が大きいと見られる。既に,政府ベースでは開発協力推進の方針が合意され(注2),民間ベースではJETROとインド工業連盟(CII)がアフリカとの貿易や投資の協業に向けた取り組みを始めている。インド企業ではタタやマヒンドラ等財閥系企業や政府企業のONGC(石油天然ガス公社)の他にITやデジタル関係企業のアフリカ進出が進み,また日本企業ではインド進出企業にアフリカへの輸出や現地進出の動きが出ている(注3)。これらを踏まえると,今後は日印企業がアフリカビジネスを協業する可能性が大きいといえよう。

 この可能性をより高めて確実な成果に結び付ける上で,第9回TICAD横浜会議では,日印両サイドとアフリカ代表とのマッチング機会を設けて欲しいと思う。前回第7回横浜会議でも話題になったが,現状はより機が熟していると見られるので具体的な議論が行われるように望みたい。また,FOIP構想を共有する米国や豪州,また同構想を支持しアフリカに関心を示す韓国等も参加できるなら有意義と思われる。そして,日本から遠いアフリカ開発の国際会議を過去3回開催し,アフリカに一番近く,かつグローバルMICE都市を目指す横浜市には,市民への教宣や子供達に学習の便宜を設けて欲しいと希望する。

[注]
  • (1)インドの国際開発協力は1964年開始のITEC(International Technical and Economic Cooperation)と古く,2004年からは現在のIDEAS(International Development Economic Assistance)に引き継がれている。また,企業のアフリカ向け直接投資残高では,2020年末でインドが150憶ドルに対し日本は100億ドルに満たない(UNCTAD等)。
  • (2)最近では今年7月「日印産業共創イニシアティブ」が合意され,鉄鋼や繊維等既存産業の進化と半導体やデジタル等未来産業の創出に加えて,アフリカ等新市場への展開が図られ,新たに日印産業協力機関が設置される。
  • (3)インドはSTEM(科学・技術・工学・数学)分野の人材が豊富で世界的に活躍しており,アフリカでも増加しているスタートアップにインドのIT企業が参加している。モノ造りの製造業に比較優位がある日本は,インドで活躍するスズキやトヨタがアフリカへの進出を図かり,豊田通商や大手商社等もアフリカビジネスの拡大を模索している。
(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article3117.html)

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