世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.2204
世界経済評論IMPACT No.2204

サウジアラビアにおけるコロナ対策

川合麻由美

(在サウジアラビア Phoenix LLC 社 上級コンサルタント)

2021.06.21

 サウジアラビアでは,1年以上にわたり,特別な場合をのぞきサウジ国民に対して閉鎖されていた国境が5月17日に開き,ワクチン接種者を主とし,海外への渡航が解禁となった。

 感染者数が現在再度増加しており,1000人超の日もあるが,2021年2月までは感染者数が300人前後という時期もあった。しかし,国内のコロナ対策は常に迅速な対応がとられ,経済的ダメージを抑えつつ,行政のデジタル化・e-governmentを推進し,感染者の抑え込みに成功した国だと考えらえる。

 パンデミック初期には24時間の外出規制といった厳しい外出禁止措置を敢行したり,大規模PCRスクリーニングを無料で行う一方,国内企業への多岐にわたる財政支援も迅速に行ってきた。その中には,給与支払いに対する支援,融資返還の猶予期間延長といった数多くの多額な財政支援を打ち出してきたが,特筆すべきはこのような支援申請がオンライン上で迅速に申請・承認される点である。また,国境封鎖によりビザの期限が切れてしまった滞在者への期限延長等もスムーズに行えるようにしたり,不法滞在者でもコロナの疑いがあるものに対しては無料でPCR検査が受けられるようするなど,アンダーグラウンドでコロナが蔓延しないための措置も取られた。医療的側面のみならず,社会経済福祉を充実させた迅速な対応に,知人のサウジ人の多くが,今回のパンデミックにおける政府対応に満足していると述べている。

 筆者もコロナ禍で,日本,サウジアラビア,エジプトと3カ国に滞在しているが,一番安全・安心感を覚えたのはサウジアラビアであった。理由はマスク着用が義務付けられていることや,コロナ対策のための規則を遵守しない店舗の摘発などが常に行われていたこと,PCR検査が容易に受けられること,また罹患したときに病院が受け入れてくれるという安心感もあった。

 サウジでは海外からの渡航者は,Tetaman(隔離アプリ),Tawakkalnaのアプリをダウンロードすることが必須となっている。Tetamanは,自主隔離(現在は施設にての隔離)の際に登録した場所から動くと,アラートが鳴る。このアプリは,PCR,ワクチン接種の予約アプリと連動している。到着後7日目のPCR検査もSehhaty アプリ上から,ボーダー番号といわれる入国の際にイミグレでパスポートに記載される番号を使用して予約できる。ドライブスルーでの検査には予定より40分以上早く着いたが,待ち時間もなく,ボーダー番号とではなくビザ番号を入れるという入力ミスがあったにも関わらず,到着から検査終了までは10分足らずだった。また,通知は24時間以内に登録してある携帯番号にSMSで通知されるが,筆者の場合12時間程度で通知が届いた。結果はTetamam隔離アプリと連動されており,陰性結果と同時に隔離アプリも移動可と自動的に変更になる。この時点ではこの入国後のPCR検査も無料であった。(現在は指定施設における隔離となっているため,入国前にパッケージとして,7日間のホテル滞在,空港送迎,2回のPCR検査がすでにパッケージに含まれる形となっている。)

 関係者に聞けば日本も色々と事情はあると想定されるが,成田空港入国の際に経験したコロナの水際対策はサウジと比較すると拍子抜けするほどアプリがシンプルで,「これで大丈夫か」と思えた位だった。

 Tawakkalnaアプリは外出禁止令期間中に必要な移動許可の発行をアプリ上で行うことで容易にするために開発されたものである。サウジ国内でのcovid -19の状況管理において,Tawakkalnaは非常に大きな役割を果たしており,サウジ国民の日常生活ではなくてはならないものになっている。Tawakkalnaアプリはかなり頻繁に更新を行っており,バグの修正のみならず,機能追加が常に行われている。現在Tawakkalnaは第一フェーズとして日本を含む75カ国からのアクセスが可能となっている。

 徐々に日常生活に戻る中,数多くの機能が追加され,ユーザーの健康状態などを示すアプリとして機能しており,もし違反者がいた場合保健省に通知するなどの機能も提供している。現在はモールなどの大型商業施設のみではなく,スーパー,薬局といった小規模小売店でも入店時にTwakkalnaの提示し,自分のワクチン接種状況,非感染者だという状況(感染者に直近で接触した,感染中,保健省指定国からの入国で隔離期間中など7色にカテゴリー分けされている)を示すことやり取りが必須となっている。また,イベントや商業施設などでは,Tawakkalnaアプリを使うことで,施設内に一定数以上の人が入らないよう,規定人数を超えるとアラートが出るようになっている。

 サウジアラビアではファイザー,アストラゼネカの2種が承認されていたが,モデルナとジョンソン・エンド・ジョンソンが追加承認された。接種予約も前述のSehhaty アプリからスムーズに予約でき,5月末時点でサウジ国内でのワクチン接種者は1300万人を超えており,少なくとも人口の40%が第一回目の接種を終えている。すでにワークスペースにおけるワクチン接種は義務づけられている。さらに,8月1日からは非接種者は商業施設に入ることができなくなるとしており,非接種の場合の行動が著しく制限されることになる。着実に進むワクチン接種率を背景に,現在は就労ビザ,居住権所有者,ビジネスビザ所有者のみがサウジに渡航できることになっているが,今後近いうちに観光ビザも再度発給する方向で検討しているようである。パンデミック禍にe-goverment の推進を圧倒的に進め,またコロナ後の観光客誘致も施策にいれながら,社会経済的発展に弾みをつける新たなサウジアラビアはコロナ後の世界で大きく飛躍すると考える。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article2204.html)

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