世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1085

5月は世界フェアトレード月間:ボトムアップのまちづくり

長坂寿久

((一財)国際貿易投資研究所 客員研究員)

2018.05.28

 毎年5月は「世界フェアトレード月間」であり,第2土曜日(今年は12日)は「世界フェアトレードデイ」である。世界中で,さまざまな国・都市・街でフェアトレードのイベントが開催されている。私が住む逗子市でも,逗子市がフェアトレードタウンに認定されているため,市庁舎の外壁に「世界とつながる平和都市フェアトレードタウン逗子」の大きな懸垂幕が今年は5月の1カ月間掲揚されている。また,市内のコミュニティセンターや市役所ロビーを1カ月かけて巡回するフェアトレードを紹介する展示を行っている。

 さらに12日(土)には,ITIで平成16年度に関東圏のフェアトレード研究者に集まっていただいた「フェアトレードビジネスモデルの新たな展開」の研究プロジェクトの報告書が明石書店から5月に出版されたため,その出版記念報告会を,フェアトレード商品の販売やフェアトレードのコーヒーで開発した「逗子珈琲」ブランドの無料提供と共に実施した。

フェアトレードタウンの急成長

 まちぐるみでフェアなまちになろうという「フェアトレードタウン」の運動は2000年に英国のガースタングから始まり,以後英国,欧州各国,米・カナダ,豪州へ広がり,そして日本も2011年に熊本市が1000件目のタウンとして認定され,名古屋市(2015年),逗子市(2016年),浜松市(2017年)と認定されてきた。2017年10月に世界で2000件に達し,今年2018年5月中旬現在で,すでに36カ国・地域の2061都市へと急成長してきている。現在では,開発途上国の都市も認定されるようになってきている。

 各国ごとに国際基準をベースとして策定された基準と認定制度があり,日本は6つの基準をクリアする必要がある。まずは,フェアトレードタウン運動を推進するための「市民団体」が存在することが第1基準で,その市民団体が市民に知ってもらうための活動をしっかり行っていることが第2基準,そして実際にまちの企業やお店などでフェアトレード商品が使われていること(第3基準),フェアトレード商品が手の届くところで購入できるようそれを販売する店舗が人口1万人当たり1店以上あることが第5基準。

 さらに,まちの社会的・経済的活性化を促進するために,まちをより良くしようと活動している他の市民団体と協働して活動しているかどうか,あるいはまちの経済的活性化にも取り組んでいるか(第4基準)が問われる。そして,こうして市民のみなさんにフェアトレードを知ってもらうよう努力・活動し,その上で最後は議員のみなさんを説得し,議会で「フェアトレード支持決議」をしてもらい,首長に「フェアトレード都市(タウン)宣言」を発してもらうのである。

ボトムアップのまちづくり——市民自治のまちづくり

 これでお分かりのように,フェアトレードタウン運動は,市民が中心となって活動を展開していき,多くの市民の理解と認知を得るよう努力し,そして議員の支持と決議を経て,首長が宣言するという,きわめてボトムアップのまちづくり運動なのである。

 日本の自治体は依然としてトップダウンの行政が中心である。たとえば姉妹都市ですら,トップダウンで決められている事例がほとんどである。市民が自分たちのまちをどのようなまちにしたいのかを議論し,進めていくボトムアップのまちづくり方式は,日本では実はきわめて珍しく,新しいまちづくり運動となっていることに気づくのである。

 「市民協働」という言葉も定着してきているが,これは日本のこれまでの行政のあり方を根本的に変革していこうとするまったく新しい意味が背後にはある。これまでの地域行政は,自治体が設立する地縁組織を通じて行われてきた。それをこれからの行政は地縁組織と市民組織の両輪で行っていこうという革命的な変革を意味するのである。地縁組織を通してだけの対応では,市民のニーズの構造変化に素早く対応しきれず,市民組織による対応の必要性を認識してきたからである。

 ふるさと納税制度が返礼品のあり方で注目されているが,この制度は市民の納税額の20%までは,その使途を納税者自らが指定できるという,まさに革新的な制度となっている。そのことに気づいている納税者はまだ多くないが,日本のボトムアップのまちづくりへの仕組みや運動つくりはすでにさまざまな形で進展しているのである。

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