世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.895

「アマゾン」宅配問題と日系4世受け入れ政策

小原篤次

(長崎県立大学国際社会学部 准教授)

2017.08.14

 量的緩和の金融政策を採用しながら,デフレと格闘している日本で,量的な拡大を達成している業界がある。それは宅配業である。

 国土交通省によると,2016年度,宅配便取扱個数が40億個を超えている。一年間で,国民一人あたり32個,一世帯あたり75個の宅配便が運ばれている。宅配便の取扱個数は,米ネット通販のアマゾンが日本に進出した2000年前後に急増し,過去10年間で10億個余りも増加している。通信販売市場の売上高は2015年度,6兆5000億円で,百貨店を上回った(日本通信販売協会,日本百貨店協会)。10年間で倍増である。通販の成長がとどまらなければ,2020年度にも,今度はコンビニエンス・ストアの売上高を上回る可能性があると予想する。

 宅配便取扱個数シェアでは,アマゾンを扱うヤマト運輸(46.9%)がトップ,次いで佐川急便(30.6%),ゆうパック(15.9%)と,上位3業者が9割を占めている。

 右肩上がりに警鐘を鳴らしたのが,宅配ドライバーの過重労働問題だ。業界最大手のヤマト運輸が,2016年12月に労働基準監督署から,労使協定を超える時間外労働があったとして労働基準法違反で是正勧告を受けていたことが2017年3月になって報道される。

 宅配という全国各地で身近な労働問題は,働き方改革の世論や人手不足の経済・雇用実態とリンクして,外国人受け入れ政策に火をつけた。雇用情勢はひっ迫している。厚生労働省が発表した6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.51倍となり,1974年2月以来の高水準だ。新規求人を業種別で見ると,運輸・郵便業で前年同月比11.5%増加している。また深夜を中心に都市部のコンビニエンス・ストアや外食チェーンを支えているのはすでに外国人である。こうした業界では,外国人抜きに成立しなくなっている。

 日本経済団体連合会の榊原定征会長は4月の記者会見で,外国人労働者の活用の一例として「日系人に日本で働いてもらう」ことに言及している。

日系4世に拘らない多様な受け入れ検討が急務

 自民党は5月,外食チェーン出身の穴見陽一・代議士を座長とする「誰もが活躍する社会をつくるPT」が提言を受けて,「日系人の活躍」として日系4世の受け入れが盛り込まれた。野党では,沖縄県出身で運輸業や建設業の経験がある日本維新の会の下地幹郎・代議士が「日系4世」受け入れに積極的だ。7月,日系人が多いブラジルを訪問し,新たな受け入れ政策を説明している。

 受け入れ案は,⽇系4世の対象年齢を18〜30歳とし,就労可能な「特定活動」の在留資格を与える。来⽇時に⽇本語検定4級(N4)程度,在留資格更新時には3級(N3)程度の能⼒を有することを要件とし,滞在期間は最⻑3年(『読売新聞』朝刊2017年7月31日)。

 国連統計によると,米国の移民受け入れ数が世界一で4,662万人で,近年,増加が鈍化しているものの,人口比では14.5%占める。アラブ首長国,シンガポールなど人口が小さな国で米国以上の比率はあるものの,人口5,000万人以上の「人口大国」に限れば,14.9%のドイツとともに米国は世界を代表する移民受け入れ国だ。アジアで韓国2.6%,日本1.6%と,米国やドイツに比べて桁違いに少ない。

 日本で外国人の受け入れる余地があると言える。年間の受け入れ数や滞在年数を定めて段階的に,受け入れていけば,良い。

 自民党PTの提言は,「日系人は我が国を祖国とする同胞であるとともに,我が国のよき理解者であり,日系4世についても敬愛をもって接する必要がある」としている。

 「同胞」の日系人とは言え,非漢字文化圏の場合,日本語習得は相当な時間を有する。そのことは日系3世までの受け入れた各地で教訓となっている。

 特定の民族の受け入れはダイバーシティ(人材の多様性)とは言えない。日本政府は,日系人以外の民族を差別するとみなされる。ブラジルで日系人の受け入れだけを認めると,日系人以外のブラジルの対日観や日系人への親近感は改善するのだろうか。「同胞」に拘らない慎重な議論が必要である。新たな政策は,日系人に限定するのではなく,むしろ日系人が多い国・地域を対象にして,日本語学習熱を高めて,日本語などを受け入れの条件にすれば,国際交流,ビジネス交流にも寄与していく。

 また,国を限定せず,外国人を受け入れると,中国やフィリピンなど近隣諸国の外国人が急増することを懸念するのであれば,国別に受け入れ人数の目安を決めておけば,解決する。

 最後に,外国人労働者受け入れが増加すると,大都市部,工業地帯,農村・漁村などで,居住が集中する可能性が高い。全国平均の外国人比率が数%でも,地域によっては,米国やドイツ並みの二桁の地域が増えていくだろう。すでに日系人受け入れなどで高い比率にある群馬県・大泉町や岐阜県・美濃加茂市なども参考に各自治体の受け入れ態勢の整備も重要だ。

 すでに,日本は人口減少社会に突入している以上,外国人比率の上昇は避けられない。よって,移民や外国人労働者の受け入れを本格的に考えるときである。欧米が受け入れに慎重なだけに,送り出し国からも歓迎されるだろう。

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