世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)
悪魔の法案の挫折
(Global Issues Institute CEO)
2022.01.31
現地時間1月19日,米国上院で投票権法という法律が採決にかけられた。これは実は1年も前に議会に提出されていた法案だが,どういう法案かというと,2020年にコロナ問題の一時的な対策としていくつかの州で行われた,以下のものを全州に強制するものだった。
- 1.誰でも簡単に郵送投票が出来る
- 2.街角に投票箱を多く置く
- 3.有権者IDを持っていなくても投票が出来る
これだと不正がやり放題になる。実はBuild Back Better法案という別のバイデン政権が力を入れている法案が議会を通らなかった。そこで,民主党のポイントを稼ぐために,一年近く前に提出されていた投票権法を通そうとして,1月18日に下院を過半数で通過させた。
ところが米国上院にはフィリバスターと呼ばれる制度がある。これは建国初期にはある法案の反対派の上院議員が一人で長い時間の演説をすることで採決をさせない。その長時間演説を止めるためには上院議員の3分の2,つまり67人がもう演説中止を決議せねばならない。
しかし1975年にやり方が古いのではないか?―として一人の人が長く話し続ける必要はないが,その代わり米国上院では重要法案に関しては過半数の51票ではなくて,60票がなければ成立しない,と規則が改められた。
現在,米国上院では民主党と共和党が50対50,上院議長でもあるハリスの一票という形なので重要法案は通らない。だが投票権法だけは民主党は通そうとしてNuclearと呼ばれる手続きを取ろうとした。
Nuclearとは,その法案に賛成の人々が上院議長(副大統領)と話し合い,上院議長が許可し,51人の上院議員が賛成すれば,その法案からフィリバスターを外すことが出来る。つまり,過半数51票の賛成でその法案を有効にすることができる。
民主党はNuclearを使おうとしたが,共和党が強い州であるウエスト・バージニア州とアリゾナ州選出のマンチン上院議員とシネマ上院議員が民主党の中から反対し,Nuclearが使えず,フィリバスターを外すことが出来なかったので,投票権法は通らなかったが,最終的には反対51,賛成49という形だった。
どういう内訳だったかというと,マンチンとシネマはNuclearを頻繁に使うことが前例になると,民主党が少数派になった時に困るのではないか?―という手続き論の立場からNuclearに反対したのであって,民主党員として投票権法には賛成した。では民主党から誰が反対したのか,というと民主党上院院内総務のシューマー上院議員だったのである。
米国上院の規則ではフィリバスターがかかっている状況では明瞭に過半数で反対された場合の方がその法案は廃案にはならず継続審議になる。そこで投票権法を継続審議にするためにシューマーは共和党と一緒に反対票を入れた。こうして不正やり放題の,悪魔の法律とも言うべき投票権法は,いったんは挫折したが継続審議になった。
今後どうなるのかについてだが,やはり米国上院の規則で,上院議長の命令で一つの法案に対して一日のうちに一人の上院議員が質問できるのを一回に限ることができる。これもフィリバスターを外すことが出来る。これで投票権法を通せないかと,民主党は考えているという説もある(但し共和党が反対法案を連発すれば審議を止められる)。
つまり民主党はこの投票権法に非常にこだわっている。実際バイデンも投票権法が通らないと今年の中間選挙は正当性のないものになる−という発言もしている。これは例えば,黒人の人は有権者IDの申請をするのは難しいだろうから,黒人が投票できないと選挙の正当性が低下するということが言いたいのかもしれないが,それは黒人は有権者IDを申請する学力もない人が多いのではないか?―と上から目線で黒人を侮辱する考え方である。
こういう発言がバイデンから出ること自体が,郵送投票とか有権者IDがなくても投票できるといった色々な不正で自分は大統領になった,という考えがバイデンの中にもあるからではないか?
実際,最近もジョージア州で草の根ボランティア団体の調査で,何十万票という票にバックログがない。あるいは街角に置いてある投票箱の監視カメラの動画データが削除されていた,というような問題が発見されている。やはり2020年,アメリカ大統領選挙には何らかの不正があった可能性というのが低くない。
それがバイデンという人物の正当性を弱め,彼の指導力を低下させ,アフガンからの撤退の失敗,あるいは今の米国経済の破綻,そういうものの原因になっているのではないか?なんとか,不正のない選挙で,今年の中間選挙で上下両院ともに共和党が多数を回復し,そして2024年にはトランプ氏に帰還してもらう。そうすることでアメリカという国を建て直して強い国に戻ってもらう。アメリカの重要な同盟国である日本の一国民として私は,そのようになることを願わずにはいられないのである。
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