世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1608
世界経済評論IMPACT No.1608

“過信”習近平の自信と蹉跌

三輪晴治

(エアノス・ジャパン 代表取締役)

2020.01.27

中国の全体主義による監視社会化

 中国共産党は,この4G,5G通信技術をベースにして顔認識技術を入れた監視カメラで,人民をコントロールし始めている。中国は,多民族国家であり,長い歴史の中で中国の人民は国家,為政者を信じていない。今日の中国でも人民は国家の上にある共産党政府を基本的には信じていない。中国の人民は「胃の腑で動く」といわれているように,政治が悪く,人民が食えなくなると暴動を起こして,為政者を倒してきた。従って為政者は人民の反抗が怖い。習近平は「人民の声」に怯えている。そのため人民を監視し,言論弾圧をして,政府にたてつくものを抹殺してきている。2017年には,「国家情報法」を制定して,中国籍の個人や企業に情報活動の協力を義務付けた。

 現在中国には2億台以上の監視カメラが設置されているが,2020年末には6.2億台になるという。これで中国人民を24時間監視している。中国は外国にも5Gと監視カメラを輸出し,世界の情報を収集しようとし,「一帯一路」計画もその中心の戦略は中国製の5G,監視カメラで,世界の情報を集めることであるという。問題は,中国はこの機器を既にアメリカにも日本にもヨーロッパにも輸出して,取り付けていることで,中国は,これにより世界の情報を集め,外国を情報操作しようとしていることだ。これにトランプが待ったをかけているのである。日本は,中国の監視カメラ問題に対して反応を示していない。

中国のデジタル人民元戦略

 中国の人民元はまだ国際通貨になっていない。中国の弱いところは金融力であり,人民元は国際決済に占める割合は僅か2%で,米ドルは40%を越えている。石油も殆どドルで取引されている。アメリカは「基軸通貨ドル」をもって「経済制裁」をすることがある。この「ドルのくびき」に中国は悩まされている。だがこれは中国だけの問題ではない。

 アメリカのドルも,ニクソンショックで金と離れ,石油をバックにした「ペトロダラー」になったが,石油エネルギーの支配構造も変わり,アメリカ経済の衰退により,ドルは世界通貨としてとしての地位が揺らいでいる。

 中国政府は,「デジタル人民元」を発行しようとしている。これは「ドルのくびき」から解放され,一帯一路の様なプロジェクトに自由に投資できる通貨を狙っている。ビットコインとは違いデジタル人民元は国家が発行するものであり安定している。これで中国は「ドルのくびき」から逃れて,アメリカの「ドル基軸体制」に挑戦しようとしている。

 普通の通貨とは違って,「デジタル通貨」はそれを使うものの情報がついて動くので,世界中のそれを使う者の行動と情報を取集することができる。中国のデジタル人民元はこの点が重要なものとして考えられているのである。

 中国は,5Gをベースにした「監視システム」と「デジタル人民元」で,世界の情報を集め,コントロールしようとしてる。つまりこれからのデジタル社会は,情報・データの支配をめぐり争いが起り,「情報戦争」が繰り広げられることになる。これをアメリカがやろうとしてきたが,中国の方が先を行っているということで,アメリカが中国を叩いているのである。日本はこの「情報戦争」という認識が乏しい。

 トランプは,先端技術などに対して,中国のファーウエーの5G通信技術,AI,次世代コンピュータ,ロボット,測位テクノロジーなどを「国防権現法」によりアメリカより締め出そうとしているし,同盟国にもこれを締め出すことを要請している。

トランプ虎の尾を踏んだ習近平

 習近平はこの「中国製造2025」を宣言して,アメリカの「虎の尾」を踏んでしまった。鄧小平は,「川底の石を探りながら川を渡る」ことを徹底し,わが方の能力を隠し,控えめな姿勢を取るようにせよと教えてきたが,習近平はそれを忘れて,アメリカに「中華大帝国を再生させる」という世界の覇権を取ることを宣言したものだから,アメリカが怒った。鄧小平が生きていたら,習近平にこんなことはさせなかったであろう。

 米中は「トゥキディデスの罠」に陥った。アメリカは,理屈ではなく,中国をどこまでも叩く。アメリカが中国を叩くことに大儀などない。アメリカは,中国が共産党を辞め,自由と民主主義の国になっても,中国がアメリカの覇権の座を取ろうとする限り,アメリカは中国を叩き続ける。米中覇権戦争はどちらかが降参するまで続き,この米中覇権争いは長く続くことになろう。

 現在中国は,膨大な過剰生産設備を抱え,借金経済,過剰債務で藻掻いている。リーマンショック後に景気対策として習近平が無理をして4兆元を投入したことの後遺症がまだ残っている。今や銀行の破綻,社債の不履行,債券の不履行が出始め,2019年に2兆5千億円の債務不履行が起こった。2022年までに満期を迎える社債は175兆円に上るという。

 中国は,大衆の貧困化が進んでいるが,5Gを含む通信技術の開発,先端技術の量子コンピュータ,サイバー攻撃技術,宇宙開発技術の開発などの先端技術開発に力を入れている。北朝鮮が,人民は飢餓状態なのに,核ミサイル開発の力を入れているのに似てきた。国民をそっちのけにして先端技術を開発している。国民が豊かにならなければ国は強くならないし,発展しない。

 最近のトランプの中国叩きの本気度に習近平はたじろいているようだ。このことで「反習近平グループ」が習近平を突き上げているという。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1608.html)

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