世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.4124
世界経済評論IMPACT No.4124

金融政策緩和提言:公的融資スキーム&モデルの「考え方」改善提案

白藤 香

(SPCコンサルティング株式会社Labo 所長)

2025.12.15

 地方では公立病院の赤字が二桁億円となり,医業と現場の改善だけでは財務再建は困難を極める。公的金融機関にも直接相談を入れてみたが「金融業界として既存の公的融資スキーム&モデルには食指が全く向かない」とのことだった。他方,自治体は公的事業の収益性が悪いまま放置すれば財政赤字を引き起こす。本稿では世界の官民スキームモデルも参考にし,過去数十年間続いてきた「行政向け融資の考え方」に対して改善提案を述べる。

1.既存運用の問題点

 例えば行政の所有地を「直接担保」として融資を受けることはできない。よって「利用権」を設定し「定期借地権」や「貸付」の形態で所有地を活用するが,運用年数が30~50年間と長く,また収益率が低いため融資そのものを断られている。

2.「利用権」という考え方にズレ

 地方における医療機関では医療従事者不足から診療科が削減され,全診療科が揃っているのは公立病院だけというケースが多い。特に先天性難病患者や合併症を引き起こした患者にとって,公立病院は治療機会を平等に受けられる「命の砦の病院」となっている。その「社会資本」の運用者である地方行政の「資産」に対して,定義できるものは果たして「利用権」だけだろうか? 他国の運用を見ると必ずしもそれだけではない。

3.海外運用事例

 行政所有の土地にまつわる開発案件には,直接投資が入り債券運用等がされている。

①米国の事例:移民弁護士が投資家ビザ(E-2ビザ)の申請者に対して,複数事業案件における一口50万ドルのREIT(不動産投資信託)のいずれかを受けてくれたらビザ発行の手続きをするという形がかつて取られていた。(今はない)

②ボツワナの事例:国から開発委託を受けた事業会社から,海外投資家向けとして現地通貨運用のREITの紹介と勧誘を受けたことがある。

4.結論としての政策提言

 冒頭述べたように,赤字公立病院の財務再建は,既存制度における運用では困難である。金融業界に関心を示してもらうためには,行政側で多種多様な収益力の高い運用方法が受け入れられるように,金融政策の柔軟性の確保と投資を含めた運用モデルの最新化,多様なオファーを検討し受入れを可能とする「考え方」の早急な改善が求められている。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article4124.html)

関連記事

白藤 香

最新のコラム

おすすめの本〈 広告 〉