世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.3349
世界経済評論IMPACT No.3349

令和の政治改革にはジェンダーの視点も必須

小原篤次

(長崎県立大学 准教授)

2024.03.25

 3月8日は国際女性デーのため,ジェンダーに関する記事が目立った。3月9日の日本経済新聞によると,外資系コンサルのWTW(ウイリス・タワーズワトソン)の集計によると,日本の男女の賃金格差は33%と世界で最も大きい水準だとした。他方,8日の産経新聞は,近畿の自民党若手議員らが参加した会合で,露出の多い衣装をまとった複数の女性ダンサーを会場に招いていたことが報じられた。「政治とカネ」が注目される中,批判を招いた。

 また,女性客に高額請求して借金を背負わせる「悪質ホストクラブ」問題で,東京・歌舞伎町のホストクラブの経営者らは2024年1月から20歳未満の新規客の来店を禁止する自主ルールを決めたという。ホストクラブの客としては女性の夜職の存在がある。

 男女の賃金格差が存在する中で,日本は夜の職場が豊富である。大学生のアルバイトやOLの副業にもできる。日本では,先進国では珍しく夜の経済が大きくなっている。「悪質ホストクラブ」問題は,成人の18歳になれば,働くことができるということだろう。

 法律の枠組みは基本的に戦後まもなく生まれた風俗営業等取締法のままである。自民党会合でもわかるように,需要サイドとしては,政治家,企業,医師などの接待文化が横たわっている。異次元の金融緩和をはじめとするアベノミクスで資産価格が上昇した近年では,IT起業家,デイトレーダー,不動産投資家など20代,30代の男性が巨額の収入や資産を持つことも珍しくない。東京圏では,前者は銀座を支え,後者は六本木や新宿などを支えている。日本の繁華街は先進国というよりは「途上国の夜の街」に似ている。

 様々な男女差が日本には残されている。ダボス会議で知られる世界経済フォーラム(WEF)が2006年からジェンダー・ギャップ指数を公表している。公表以来,日本は低位にとどまっている。2023年では,調査対象146カ国のうち,日本は125位である。経済,教育,保健,政治の4分野のうち,日本について男女差が大きいのは,経済(123位),政治(138位)である。経済では,労働参加率,賃金,管理職比率などで構成されている。政治分野は,国会議員比率,大臣比率,首相や大統領の性別任期で構成される。

 日本政府は2003年に,「社会のあらゆる分野において,2020年までに,指導的地位に女性が占める割合が,少なくとも30%程度になるよう期待する」という目標を設定していた。しかし2020年7月になって,達成が困難だとして「2020年代の可能な限り早期(2029年まで)」と目標を先延ばしにしている。国際的な遅れが意識されつつあるものの,努力目標に委ねてきた。脱炭素のような守るべき国際公約としては意識されてこなかった。

 女性の社会的進出に期待する中,夫婦選択的別姓がなかなか認められない。また扶養控除という男性が主に家計を支え,女性が家庭を支えるという前提で設けられた税制優遇制度をなかなか廃止できないでいる。

 長田華子・金井郁・古沢希代子(2023)『フェミニスト経済学』有斐閣に睡眠時間の国際比較が紹介されている。欧米,インド,中国,南アフリカ,韓国など33カ国のうち,日本が男女とも睡眠時間が最も短い。女性の方が男性より睡眠時間が長い国が多い中で,日本,インド,ギリシャは女性の方が男性より睡眠時間が短くなっている。睡眠時間を延ばすためには,男性の家事や育児分業,通勤時間の短縮を含めた働き方改革のさらなる促進も必要になる。

 最後に,政治分野は女性の地位向上の象徴となるだろう。国会議員の3割を女性のクォーター制にするほか,そろそろ女性首相が誕生しても良いのだろう。「政治とカネ」問題から久しぶりに政治改革が論議されるが,令和の政治改革にはジェンダーの視点も必須である。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article3349.html)

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