世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.2657
世界経済評論IMPACT No.2657

米中対立下のCPTPPとRCEPの今後

川島 哲

(金沢星稜大学経済学部 教授)

2022.08.29

 WTO(世界貿易機関)によればRTA(地域貿易協定)の数は,WTOへの通報要綱に基づきカウントされている。2022年8月21日時点での発効済みの地域連携数は354件となる。外務省によれば日本の地域連携はTPP12とCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)を1つとカウントすると20を数える。21世紀に入ってからアジア地域の地域連携は約60を数える。ここでは,メガFTAとしてのCPTPPとRCEP(地域的な包括的経済連携)を取り上げ今後について考察してみたい。

 2018年にはCPTPP,2022年にはRCEPと相次いで巨大地域自由貿易圏が誕生した。こうした地域貿易協定は,WTO主導での自由化推進が思うように前進しないという点を契機として開始されたのは周知の事実である。RCEPは本年(2022年)10か国で発効し,2月に韓国,3月にマレーシアが批准手続きを終え,発効済みの国は現時点(2022年8月21日現在)で12か国となった。残りはミャンマー,インドネシア,フィリピンが発効を待つ状況となっている。この3か国についてタイ商務省によれば,5月17~19日のASEAN経済担当相の特別会合の報告が7月12日の閣議で行われ,RCEPの批准についてインドネシアとフィリピンは2022年第3四半期には批准できるとの見通しを示した。ビジネス短信(7月28日)によれば,ミャンマーでのRCEP発効について,同国は既に批准は済んでいるものの,一部のRCEP加盟国はミャンマーに関し同国がASEANの5項目の合意(注1)を満たしていないため,ミャンマーの批准書をASEAN事務局は加盟国に配布していない現状である。

 ではメガFTAである両者が今後いかなる針路をとっていくことが考えられるか。論者によっては,両者が統合され,グローバルな自由市場の形成へと近づくという考え方がある一方,両者が経済ブロック化してしまうという考え方もある。両者の関係は,前者の考え方より後者の対立方向へと進むという考え方が現時点では可能性がより高いように感じられる。ペロシ下院議長の台湾訪問をはじめ,米中の対立はさらに先鋭化していく状況下にある。米国の国内事情を鑑みればCPTPPに米国が参加する可能性は大変低い状況にあることは否めない。ASEANも中国への配慮から一枚岩になることは容易ではない。2016年のアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)に関するリマ宣言では「FTAAPの最終的な実現に向け,包括的で体系的な方法によりプロセスを進展させることへのコミットメントを再確認する」としている。また,本年5月のAPEC貿易担当大臣議長声明によれば,「次世代の貿易・投資問題を含むFTAAPアジェンダの進展を視野に入れて,対話と能力構築プログラムを継続するための複数年の作業計画を策定し,11月のAPEC閣僚会合までに報告する」よう実務者に指示している。日本の存在感を示すときが来ている。今後の日本の積極的な関与に期待したい。

[注]
  • (1)5項目とは,①ミャンマーにおける暴力行為を即時停止し,全ての関係者が最大限の自制を行う。②ミャンマー国民の利益の観点から,平和的解決策を模索するための関係者間での建設的な対話を開始する。③ASEAN議長の特使が,対話プロセスの仲介を行い,ASEAN事務総長がそれを補佐する。④ASEANはASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)を通じ,人道的支援を行う。⑤特使と代表団はミャンマーを訪問し,全ての関係者と面談を行う。
[参考文献]
(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article2657.html)

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