世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1914
世界経済評論IMPACT No.1914

強面に転じた「中国共産党」

三輪晴治

(エアノス・ジャパン 代表取締役)

2020.10.19

 孫文は,イギリスの植民地になっていた中国を,自分の手で独立国家にしようと動き出していたが,ユダヤ系国際金融資本家グループが毛沢東を起用し,資金を与えて中国共産党を作らせた。毛沢東は農村から革命運動をスタートした。農業地主や,反抗する5000万人のものを殺害して,1949年共産党の全体主義の独裁国家・「中華人民共和国」を造った。毛沢東の革命はマルクスの共産主義イデオロギーに基づくものではなかった。毛沢東は「マルクス主義」ではなく「韓非子」の教えを実行した。中国の土地を取り上げ,共産党の所有にした。国を乗っ取ってつくった全体主義の一党独裁政治には,それを維持するためには言論統制により人民を弾圧支配する必要がある。反抗者を抑えつけ,虐殺しなければ全体主義の共産主義社会は維持できない。

 マルクスが生きていれば,ソ連や中国共産主義国は,自分の言った「マルクス主義による共産主義国」ではない,「マルクス」という名前を使ってくれるなと言うであろう。

 1972年2月アメリカのニクソンとキッシンジャーが電撃的に中国を訪問し,毛沢東,周恩来と会って国交を樹立した。ニクソンは,中国の経済発展のために資本と技術を提供すると言い,その代わりアメリカに中国の市場を開放することを約束させた。周恩来は,日本が邪魔なので,日米安保条約を破棄するようにキッシンジャーに頼んだが,キッシンジャーは,「日米安保条約は日本が強い国にならないように「瓶」の中に閉じ込めるものであり,憲法第九条がその瓶の蓋である」と言った。

 1978年,鄧小平が「改革開放政策」で「ウインブルドン広場」を作り,そこにアメリカ,日本,ドイツがそれぞれ資本と技術を持ってきて生産する「世界の工場」を造った。この「世界の工場」でアメリカ,ドイツ,日本などが中国の安い労働者を使ってモノを造り,輸出する仕組みを作った。これにより中国は膨大なドル外貨を稼ぐことができ,そして資本と技術をただで手にした。鄧小平は共産党支配という「鎧」を隠して,「韜光養晦」という「袈裟」を着て経済の発展を進めた。アメリカも日本も,中国が経済的に発展していけば,共産党支配を捨て,自由で民主的な国になるであろうと期待して,中国にどんどん資本を入れてきた。こうしてアメリカは「中国とのエンゲージメント」を始めたのであった。

中国のサイレント・インベーション戦略

 鄧小平の「改革開放」と「世界の工場」で中国の経済は急速に拡大していった。2010年には中国は日本のGDPを追い越し,アメリカに次ぐ二番目の大国になった。軍事力を拡大していき,南シナ海に軍事基地を建設し始めた。中国は「大中華帝国の再興」という夢を持ち,帝国主義思想による世界制覇戦略を進め,他国を侵略し始めた。しかし現在の核兵器の世界では,中国はアメリカにかなわないので,2000年ぐらいから,中国の外国への侵略戦略を変えてきた。つまり軍事以外のあらゆる手段で侵略する「超限戦」(サイレント・インベーション)である。

 情報戦,カネによる買収,サイバーアタック,工作員の潜入,技術の盗用,千人計画などによる科学者,技術者のリクルート,企業・不動産の乗っ取り,資源・食料・人材の乗っ取り,国家ぐるみのスパイ活動,スパイ活動の基地として孔子学院,領事館を外国につくる。中国の「僑務工作」は,外国で中国系の人々の組織を動員し,中国系の議員を当選させたり,息のかかった中国系の人材を政府高官に送りこむ仕掛けをつくることである。これらは共産党の統一戦線工作部の指令により動く。中国は2017年に制定した「中国国家情報法」で,人民・組織に国の情報活動に強制的に協力させている。これにより外国の技術の盗用,企業の乗っ取り,資源の乗っ取り,中国の商品を押し込み,プロパガンダ活動をして,侵略し,国を乗っ取る。これらの侵略を相手国の人に気付かせないような形で行う。

 中国は国際機関の乗っ取りもしている。15ある国連の専門機関の国際電気通信連合,国際民間航空機関,国際連合工業開発機関,国際連合食料農業機関などの4つポストを中国が握っている。これにより中国の思うように世界戦略を進める。

 「一帯一路政策」で中国の領土を拡張し,そこで中国人を送り込んで,港湾を占拠したり,ビジネスをして儲ける。南シナ海に軍事基地を作り,最近は「戦狼外交」でインドを攻撃し,尖閣諸島にも侵入している。

中国に侵略されたオーストラリア

 中国の「サイレント・インベーション」の犠牲者の一つはオーストラリアである。中国のオーストラリアの「属国化戦略」である。

 中国は多くの工作員を使い,オースラリア企業,不動産の乗っ取り,土地を買収し,資源,食料,人材の乗っ取り,人的浸透により大学,研究所,シンクタンクに研究員,研修者,留学生として中国人を潜入さて技術を盗用し,土地を買収,資源を手に入れている。更に情報抜き取りのサイバー攻撃を仕掛けている。中国人のオーストラリアの農地の所有はこの数年で10倍になっているという。2015年ダーウイン港の99年の租借権が中国企業に売却され,ウィリアムタウンの空軍基地に近いニューキャッスル港を中国企業が買い,オーストラリアを一帯一路計画になかに入れようとしている。こうしたことを中国はオーストラリア人に気付かれないように巧妙にやってきた。中国の「オーストラリア属国化戦略」の一つの狙いは米豪同盟の解体である。このような中国の侵略は『目に見えぬ侵略:中国のオーストラリア支配計画』(クライブ・ハミルトン著)に詳しく報告されている。

 スコット・モリソン首相は,財務長官時代の2016年8月に中国の国営企業がニューサウスウェールズ州の配電会社オースグリッド社を買収しようとしたときその土壇場でこれを阻止した。電力は産業活動,社会活動の血液であり,血管である。これを中国に支配されればオーストラリアの経済,政治はおかしくなる。こうして中国がオーストリアを乗っ取ろうとしていることに気付き,モリソン首相は毅然として中国を拒否し,「外国干渉防止法」等の法案を作り,中国の工作員を追い出している。

 これに対して中国はオーストラリアに報復の経済制裁をしている。オーストリアのペイン外相が2020年4月武漢ウイルスの発生と経緯について「独立した調査を行うべきだ」と語った時,中国共産党は直ちにオーストラリア産大麦に高関税をかけ,食肉を一部禁輸にする報復に踏み切った。

(URL:http://www.world-economic-review.jp/impact/article1914.html)

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